金正恩死亡説、写真公開でも消えない疑念 専門家が語る情報統制の実態

北朝鮮の平壌で行われた建国78周年の記念行事で演説する金正恩総書記(9月9日)KCNA via REUTERS

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が脳出血で死亡した、あるいは昏睡状態に陥ったとの根拠のない情報がインターネット上で拡散するなか、北朝鮮の国営メディアが金正恩の写真を公開した。

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朝鮮中央通信(KCNA)と朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」が10月20日に公開した写真には、金正恩が19日に平壌で衣料品・履物の展示会を視察したとみられる様子が写っている。写真には、42歳の金正恩が13歳の娘、金主愛(キム・ジュエ)や複数の当局者とともに展示品を見て回る姿が収められている。これに先立ち、アメリカ在住の中国人反体制活動家がSNS上で、金正恩が重度の脳出血を起こして北京の病院に搬送され、その後死亡したと主張していた。この情報は、裏付けとなる証拠がないにもかかわらず、SNS上で拡散し、海外のタブロイド紙などにも取り上げられた。今回の写真は、北朝鮮当局が金正恩は引き続き公務を遂行しているとアピールしようとしていることがうかがえる。ただし、視察が実際に行われたかどうかは、独立した情報源によって確認されていない。米シンクタンク、スティムソン・センターの朝鮮半島プログラムで上級研究員を務めるレイチェル・ミニョン・リーは、本誌にこう語った。「現時点で、死亡の噂は伝聞の域を出ず、裏付けもない。噂の発信源とされる謝万軍(シエ・ワンジュン)は、過去に習近平の死亡説も流したことがある人物だと認識している」

一連の情報の発信源は、中国で非合法とされる政治団体「中国民主党」の主席を名乗る謝万軍とされている。


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「北朝鮮は通常、指導者の健康状態に関する情報を公表しない。金正恩が長期間公の場に姿を見せなくなると、信頼できる証拠がなくても、健康状態をめぐる憶測が広がりやすくなる」今回報じられた金正恩の視察に先立ち、北朝鮮の国営メディアはここ数カ月にわたり、金正恩がさまざまな公務に臨む様子を伝えてきた。韓国統一省は、金正恩の公の活動に関する報道を記録したデータベースを公開している。そこには、政治会議や軍事行事、兵器関連の活動、公式式典などへの出席記録が含まれている。それによれば、金正恩は8月17日、26日、30日などに公の場に姿を現しており、9月上旬と下旬にも活動が記録されている。9月22日には、北朝鮮のミサイル総局と第2経済委員会の関係者らによるサッカーの試合を観戦したとされる。この様子は2日後に国営メディアが報じた。10月19日に衣料品・履物の展示会を視察したとされる今回の活動も、こうした一連の公務に続くものだが、韓国統一省のデータベースではまだ確認されていない。金正恩の健康状態をめぐっては、過去にも死亡説や重病説が繰り返し浮上している。2020年には、金正恩が数週間にわたり公の場に姿を見せず、心血管系の手術を受けた後に重体に陥った、あるいは死亡したとの憶測が世界中に広がった。その後、北朝鮮から脱出した著名な脱北者が、金正恩は死亡したと「99%確信している」と発言した。しかし、金正恩はその後、公の行事に姿を現し、死亡説は覆された。

金正恩の健康状態について信頼できる情報がほとんど公表されていないため、その動向は今も国際社会の注目を集めている。


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指導部に突然の危機が生じれば、北朝鮮の政治体制の不安定化や核兵器の管理、内部での権力闘争の可能性など、さまざまな問題が浮上しかねない。その影響は朝鮮半島にとどまらない。北朝鮮と国境を接する中国では、大規模な危機が発生した場合、国境周辺の不安定化や難民の流入が起きる可能性がある。アメリカは韓国に約2万8500人の兵士を駐留させている。こうした潜在的な影響を考えれば、各国の情報機関が金正恩の動向を注意深く監視し、健康状態に関する未確認情報が広く注目されるのも無理はない。北朝鮮と韓国の間では再び緊張が高まっている。金正恩の妹で、政権内で強い影響力を持つ金与正は10月19日、南側の国境付近の情勢が「非常に不安定」だと警告した。朝鮮中央通信が伝えた声明で、金与正は、前月に韓国軍兵士2人が重傷を負った地雷爆発をめぐる対立について、韓国軍の行動は無謀だと非難した。北朝鮮側は事件への関与を否定しているが、韓国側は北朝鮮が意図的に埋設した地雷が爆発の原因だったとする調査結果を示している。金与正はまた、北朝鮮が国境沿いでの拡声器による放送を再開するかどうか検討していると述べ、両国間の緊張がさらに高まる可能性を示唆した。タリン・ペドラー

スティーブ・モルマン (ニュースエディター)

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