「接客が雑」口コミは名誉侵害? 裁判所が指摘した三つの事実
「私の評価は0」「とにかく接客が雑」
インターネット上のそんな口コミで名誉を傷付けられたとして、大阪・ミナミの飲食店が、書き込んだ客を相手取った訴訟を大阪地裁に起こした。
「うそは一つも書いていない」と主張する客側と、「おとしめる意図があった」と受け止める店側。対立する双方に事情を聴くと、まったく違う景色がみえてきた。
裁判所はどちらの言い分に軍配を上げたのか。
客側「行き届いていない部分あった」
問題となったのは、グーグルマップ上の口コミ。施設情報をクリックすると、食事、サービス、雰囲気の5段階評価やコメントが書き込める。
投稿した大阪市の男性(42)によると、店を訪れたのは2023年9月のことだった。
男性のグループは計6人で、2時間飲み放題付きの5000円のコースを予約していた。
その日は、週末の金曜日の夜だった。当時、店内には十数人の客がいた。
混み合う店内を店主が単独で切り盛りする「ワンオペ」で、男性は「この人数に対して1人なんや」と思ったという。
確かに食事はおいしかった。ただ、店主は忙しそうでドリンクの注文がなかなかできず、「お皿でお皿を動かす」「ものすごい速さで頭の横から提供される」ような提供の仕方も気になった。
入店から1時間後。男性の友人が、ドリンクのグラスの飲み口に店主の手が触れていたとして交換を要求した。友人は不機嫌になり、場の雰囲気も悪くなった。帰り際、店主から「グラスの件すみませんでした」と謝罪の言葉があったという。
男性は「ワンオペの中で、よくやっていたかもしれないが、圧倒的に行き届いていない部分があった」との思いが消えなかった。
グーグルマップの口コミを参考に店を選ぶことが多かった男性。「店選びの参考になれば」と口コミを投稿した。
「0か100に評価の分かれるお店かも。私は0の方」
「明らかにキャパオーバー」
「取り皿を投げ捨てるように置かれた」
「食器を下げるときもガチャガチャと」
「ドリンクの飲み口を持ったまま提供される」
「俺はやれる。みたいなよーわからんプライドがお客さんに迷惑をかけている」――という内容で、「事実」と「感想」を淡々と書いたつもりだったという。
店側「事実ねじ曲げで、寒気」
数日後の定休日。男性店主(49)は、男性の口コミを見つけ、ショックを受けた。
「事実をねじ曲げている。ひどい内容で、寒気がした」。読み進めるうち、当時の状況が鮮明によみがえってきた。店主の認識は、男性の口コミとはまるで違っていた。
実は男性グループのうち、2人は遅れて店にやってきていた。…