米で中古EV活況、上期販売34%増-富裕層の道楽から「身近な存在に」

米国で中古電気自動車(EV)市場がかつてないほどの活況を呈している。9月末に最大7500ドル(約110万円)の購入補助金が終了するのに伴い、販売が大幅に減速すると予想されている新車EVとは対照的だ。

  調査会社コックス・オートモーティブによると、米国の中古EVは平均で中古ガソリン車とほぼ同水準の価格になっており、販売ペースも加速している。今年上半期の中古EV販売は前年同期比34%増となったのに対し、新車EV市場はわずかな伸びにとどまった。

  フォード・モーターの新型マスタング・マッハE GTは1年前、約5万5000ドルで販売されていた。ところが1カ月前、元不動産業者のジェフ・クレイグ氏は2024年型の中古を3万3000ドルで購入した。走行距離1万3000マイル(約2万1000キロ)、経過12カ月分と引き換えに、22%の値引きを得た形だ。

  クレイグ氏は「EVが本当に欲しかった。でも新車を買うつもりは全くなかった」と話す。「新車はどれも値下がりすることは分かっているが、EVの値下がり幅はガソリン車よりもかなり大きいように感じていた」という。

  データ提供会社リカレントで市場インサイト担当ディレクターを務めるリズ・ナジマン氏は「消費者が中古EVを十分に信頼して購入に踏み切るようになるのは時間の問題だった。それが連鎖効果をもたらすことになる」と述べた。

  中古EV市場を盛り上げている要因は複数ある。まず、2022年に購入された車の3年リースが満了を迎え、ようやく多くの車両が市場に出回るようになったことだ。22年はBMW i4、キャデラック・リリック、フォードF-150ライトニング、トヨタbZ4Xなど、新型バッテリー車が初めて顧客に納車された年に当たる。

  一方、中古EVの価格は下落傾向が続く。背景には高級車ではない一般的なモデルの普及に加え、急激な減価率がある。EVは技術進歩が速いと消費者が考えているため、価値が急速に下がりやすい。

  新車と同様に、中古EVも最大4000ドルの補助金が廃止される。だが、わずかに使用されたEVの価格はすでに他の選択肢と同水準に下がっている。コックス・オートモーティブによると、8月に取引された中古EVの平均価格は3万4700ドルで、中古のガソリン車やトラックの平均価格とほぼ同等だった。しかもEVの平均使用年数はわずか2-3年と、平均6-7年のガソリン車と比べて新しい。

  EVがガソリン車より長期的に信頼性が高い可能性を示す証拠もある。ラジエーターやスパークプラグ、オイルが不要なため、定期的な整備をほとんど必要としない。さらにEV用バッテリーは予想以上に耐久性が高く、米国では一般的に少なくとも8年または10万マイルの保証が付いている。

  リカレントのナジマン氏によると、3年落ちのEVはもはや妥協を強いられるものではない。依然として航続距離は十分に長く、充電も速く、大型タッチスクリーンや効率的な空調機能であるヒートポンプなどの装備を標準で搭載している。「これらは最新の車であり、欲しい装備は一通り揃っている」という。

  シボレー、スバル、トヨタなどの一部ブランドでは、中古EVが同等のガソリン車より安くなっている。

  例えば2年落ちのガソリン車SUV(スポーツタイプ多目的車)のトヨタRAV4は、米国で平均3万1100ドルで取引されている。一方、同年式のバッテリー車トヨタbZ4Xは6600ドル安く購入できると、ディーラーとの交渉を支援するAIプラットフォーム、カーエッジ・ドット・コムは指摘している。

  コックスによると、現在の販売ペースが続けば、中古EVの在庫は36日で市場から消える見通しだ。これに対し、ガソリン車は42日だという。

  ナジマン氏は「比較的安い価格が、EVを選択肢だと気付いていなかった層や、富裕層の道楽にすぎないと考えていた人々にとって、EVを身近な存在にしている」と語った。

原題:US Used EV Sales Jumped by 34% in the First Half of 2025(抜粋)

関連記事: