ネタニヤフ氏、ガザ市制圧計画を擁護 国連安保理で各国は厳しく批判

画像提供, Reuters

画像説明, 外国メディア向けの記者会見で、ガザ全域占拠計画の正当性を強調するイスラエルのネタニヤフ首相(10日、エルサレム)

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は10日、ガザ市の「掌握」計画について、戦争を終わらせる「最善」の方法だと主張した。国連安全保障理事会では同日、各国大使がイスラエルの計画を厳しく批判した。

ネタニヤフ首相は「虚偽を打ち破る」ことを目的に外国メディア向けの記者会見を開き、予定している攻勢は「比較的速やかに」実施され、「ガザを(イスラム組織)ハマスから解放する」ことになると述べた。

首相はさらに、ハマスがガザで拘束しているイスラエル人の人質について、「意図的に飢えさせられているのは彼らだけだ」と述べ、イスラエルがガザ住民を飢えさせているとの批判を否定した。

記者会見でネタニヤフ氏は、イスラエル国防軍(IDF)に対し、ガザ市とガザ地区中部アル・マワシ周辺に残る「ハマスの拠点2カ所」を解体するよう指示したと述べた。

また、ガザ地区内での支援拡大に向けた3段階の計画を説明。これには、安全な人道支援ルートの指定、イスラエル軍と協力団体による空中投下の増加、そしてアメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」管理下の、援助物資配給拠点の増設を含むとした。

GHFによる援助物資配給の仕組みは、国連や複数の国際人道団体が非難している。

国連は今月初め、GHFが支援拠点を設置した5月下旬以降、食料を求めて死亡したパレスチナ人が1373人に上ると報告している。

ネタニヤフ氏は、ハマスが「物資輸送トラックを暴力的に略奪した」と主張。GHF拠点で死亡したパレスチナ人について質問されると、「多くの発砲はハマスによるものだ」と述べた。

ネタニヤフ氏は、ガザに残るイスラエル人の人質については、「何もしなければ、彼らを救出することはできない」と述べた。

首相はさらに、外国の報道機関がハマスのプロパガンダに乗せられていると批判した。さらに、各国メディアが新聞一面に掲載するなど大きく報じた、栄養不良状態にあるガザの子供たちの一部の写真を「偽物」と断じた。

イスラエルは戦争開始以来、外国のジャーナリストのガザ入りを認めていない。これについてネタニヤフ氏は、外国人記者を受け入れるよう2日前にイスラエル軍に指示したのだと話した。

画像提供, EPA / Shutterstock

画像説明, 国連安全保障理事会の緊急会合に出席したイスラエルのジョナサン・ミラー国連次席大使(10日、ニューヨーク)

国連安保理は同日、緊急会合を開き、イギリス、フランスなどがイスラエルの計画について、「国際人道法に違反する」恐れがあると警告した。デンマーク、ギリシャ、スロヴェニアも同様の見解を示した。各国はイスラエルに、ガザ市制圧は「人質の返還にはつながらず、むしろ今まで以上に命を危険にさらす」と指摘した。

他の安保理理事国も、同様の懸念をイスラエルに示した。中国はガザ住民への「集団的懲罰」は容認できないと述べた。ロシアは「無謀な戦闘激化」に警鐘を鳴らした。

国連のミロスラフ・イェンチャ事務次長は、「この計画が実行されれば、ガザでおそらく新しい大惨事が起き、地域全体に響き渡り、いっそうの強制移住、殺害、破壊を引き起こす可能性が高い」と警告した。

国連人道問題調整事務所のラメシュ・ラジャシンガム調整局長は、ガザの飢餓危機について、もはや差し迫ったという段階を過ぎ、「これは純然たる飢餓だ」と述べた。

他方、アメリカはイスラエルを擁護し、ドロシー・シェイ国連大使はアメリカ政府が人質解放と戦争終結に向けて「疲れ知らずに」取り組んでいると主張。安保理会合は、そうした努力を損なっていると批判した。

シェイ大使はさらに「ハマスが人質を解放すれば、(戦争は)今日にも終わる」とし、他の理事国が緊急会合を利用して「イスラエルがジェノサイド(集団虐殺)を行っていると非難」しているものの、ジェノサイドについての各国のそのような主張は「明確に虚偽だ」と強調した。

画像提供, Reuters

画像説明, 安保理でイスラエルを擁護するアメリカのシェイ国連大使(10日、ニューヨーク)

ネタニヤフ首相の事務所は同日、ガザ占拠のイスラエルの計画についてドナルド・トランプ米大統領と協議したと発表した。

イスラエル国内では、政府の計画が人質の命を危険にさらすとして、数千人規模の抗議デモが発生している。

ハマスが運営するガザの保健省によると、9日以降、ガザでは栄養不良と飢餓により5人が死亡し、死者数は217人に達した。また、2023年以降のイスラエル軍の攻勢により、これまでに6万1000人以上が殺害されたという。

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を奇襲攻撃し、約1200人を殺害。251人を拉致した。イスラエルはこれに対抗し、ガザでの軍事作戦を開始した。

ハマスが運営する保健省の統計は過去の紛争時に採用され、国連や国際機関が信頼できる情報源としてきた。

関連記事: