米公共放送を追い詰めるトランプ氏、資金打ち切りで機構は業務終了へ
- 非営利団体の米公共放送機構、業務の段階的な終了に着手
- 全米で地方局の廃止につながる恐れ、支持者の懇願は議会に届かず
米公共放送(PBS)や公共ラジオのNPRに運営費を拠出する非営利団体の米公共放送機構(CPB)は、業務の段階的な終了に着手したことを明らかにした。トランプ米大統領は7月、CPBへの連邦資金提供を終了する法案に署名した。
CPBのパトリシア・ハリソン社長兼最高経営責任者(CEO)は1日、「連邦資金の拠出継続を議員に訴えようと、何百万人もの視聴者や支持者が電話や手紙で請願した。この並外れた努力にもかかわらず、当社は業務を終了せざるを得ないというのが現在の厳しい現実だ」との声明を出した。
従業員の過半数が来年9月末で雇用が終了すると、CPBは従業員に通知したという。同社は2022年の時点で105人を雇用していた。
マスク氏の影響
米連邦議会は7月、すでに承認されていたCPBへの年間支出5億3500万ドル(約790億円、27年末まで)を撤回した。この撤回が盛り込まれた90億ドルの歳出撤回法案は、資産家イーロン・マスク氏が率いた政府効率化省(DOGE)の提唱を反映したもの。
この法律の成立によって、半世紀前から続くPBSとNPRにつながる資金の流れが断たれた。両放送局はスポンサー企業や個人からの寄付で資金を賄っているが、連邦政府からもわずかな資金提供を受けている。CPBの資金カットにより、全米の遠隔地で小規模な放送局が閉鎖を余儀なくされると、支持者は警告している。
NPRとPBSにコメントを求めたが、回答はなかった。
公共放送は30年以上にわたり、文化と予算の両面において保守派の標的となってきた。全国向けの放送内容やニュース報道が、左派に傾斜しているというのが保守派の主張だ。
トランプ米大統領は3月、「このようなお金の無駄遣いは、非常に偏った見解に基づいている」と述べ、「これを終わらせることを光栄に思う」としていた。
原題:Corporation for Public Broadcasting Closing After Trump Cuts (2)(抜粋)