【米国市況】国債利回り急低下、9月利下げ観測強まる-142円台後半

4日の米金融市場では国債利回りが急低下。民間雇用者の伸びが市場予想を大きく下回ったほか、非製造業部門の活動が縮小圏に沈み、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月にも利下げに踏み切るとの見方が強まった。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.88% -10.4 -2.08% 米10年債利回り 4.35% -10.1 -2.26% 米2年債利回り 3.86% -8.7 -2.19%     米東部時間 16時34分

  供給管理協会(ISM)が発表した5月の非製造業総合景況指数に反応し、2年債から10年債の利回りはいずれも、少なくとも5月9日以降で最も低い水準を付けた。同指数は、非製造業活動が1年ぶりに縮小したことを示唆した。ISM指数より先に発表されたADP民間雇用統計では、雇用者数が2年ぶりの低い伸びにとどまった。6日に労働省が発表する雇用統計でも、雇用者数の伸び減速が見込まれている。

  ADPのデータ発表後、トランプ大統領はすぐに反応。ソーシャルメディアへの投稿で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)に対して再び利下げを要求した。金利スワップ市場では、10月と12月にそれぞれ0.25ポイント利下げが実施される確率が高まった。9月の利下げ確率についても、従来の約82%から90%超に上昇した。

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  ウェリントン・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、キャンプ・グッドマン氏は「このデータは、私自身や多くの人が予想していた軟化が実際に始まりつつあることを示唆している」と分析。投資家の関心は「長期的な財政問題に偏り過ぎており、短期的な成長見通しに十分注目していない」と述べた。

  サウジアラビアが原油増産に前向きになっている兆候を受けて原油が下落。これにも反応して米国債利回りはこの日の最低水準を記録した。5年債から30年債の利回りは少なくとも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、10年債利回りは一時4.35%を付けた。

  ブルームバーグが実施したエコノミスト調査によると、6日発表される5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は12万8000人増が見込まれている。4月は17万7000人増だった。失業率は4.2%で横ばいとの予想だ。

  TDセキュリティーズの米金利ストラテジスト、モリー・ブルックス・マクガウン氏はブルームバーグテレビジョンで、「失業率に注目している。より明確なシグナルだからだ」とし、失業率が現在の4.2%から4.5%に上昇すれば「FOMCは懸念を強めるだろう」と指摘。

  そうなれば、「恐らく」大半の投資家がFOMCの措置をより受け入れやすくなると述べた。

米国株

  米国株市場でS&P500種株価指数はほぼ変わらず。ヘルスケアや通信といったディフェンシブ銘柄がアウトパフォームした。大型テクノロジー銘柄ではメタ・プラットフォームズが上げた一方、テスラは売られた。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5970.81 0.44 0.01% ダウ工業株30種平均 42427.74 -91.90 -0.22% ナスダック総合指数 19460.49 61.53 0.32%

  ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏は、ISM非製造業指数とADP統計について、「市場はこれらデータを、実質成長面での失望という観点から捉える可能性が高い」と分析。その上で、「利下げの可能性という意味では米経済にとって良いニュースだが、株価や信用スプレッドに既に織り込まれている改善が、この一連の弱い経済指標によって揺らぐ可能性はある」と続けた。

  FRBが公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、米経済活動はここ数週間にわずかに鈍化し、関税や不確実性の高い状況が経済全体に波及していることが示唆された。

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為替

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が下落。ADP民間雇用者数とISM非製造業指数を受けて米国債利回りが低下したことが手掛かり。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1209.11 -4.85 -0.40% ドル/円 ¥142.80 -¥1.17 -0.81% ユーロ/ドル $1.1420 $0.0048 0.42%     米東部時間 16時35分

  円は対ドルで上昇し、一時0.9%高の1ドル=142円61銭を付けた。

  三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店資金証券室のファーストバイスプレジデント、小野寺孝文氏は、ADPが予想を下回り、ISM非製造業指数が50を割り込んだことなどでドルが売られたと指摘。「ADPに関しては雇用統計との相関性はそう大きくないが、警戒感からドルを買い持ちしていくような積極的な動きにはつながらない」と指摘。6日の雇用統計までは「大体142円から145円くらいのレンジで、若干上値が重い感じで動いていく」とみている。

  小野寺氏はまた、「関税の話や財政の問題がクリアにならないと、ドル売りトレンドからの明確な脱却はないと思う」と述べた。

原油

  原油先物は反落。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスに対し、サウジアラビアが大幅増産の継続を望んでいるとのブルームバーグの報道を受け、供給過剰への懸念が強まった。

  情報に詳しい関係者によると、サウジはOPECプラスに8月だけでなく、場合によっては9月も日量41万1000バレル以上の生産拡大を求めている。同国は失った市場シェアの奪回を重視しているという。

サウジ、OPECプラスに大幅増産の継続要求-市場シェア回復目指す

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は、原油相場が条件反射的に反応しているが、OPECの意図は既に十分に伝わっていたはずだと指摘。その上で「それでも、これはOPECが現在進めている方針が今後も続く可能性が高いことを示している」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比56セント(0.9%)安い1バレル=62.85ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は77セント(1.2%)下落し、64.86ドルで引けた。

  ニューヨーク金相場は反発。米経済指標が予想を下回り、年内利下げ観測が強まったことが材料視された。金利の低下は通常、利子を生まない金の投資妙味を相対的に強める。

  米中間など貿易戦争の激化も安全資産としての金への逃避需要を支えている。 

  金価格は前日、米求人件数の予想外の増加で米経済に対する楽観が広がったことで下落。その後、上海黄金取引所でアジア時間4日の取引が始まると、押し目買いの動きが広がって上昇に転じた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比25.80ドル(0.8%)高の1オンス=3379.23ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は22.10ドル(0.7%)高の3399.20ドルで引けた。

原題:Treasuries Rally as Weak Data Reinforce Fed Wagers: Markets Wrap(抜粋)

Treasury Yields Tumble as Wagers on September Fed Rate Cut Grow

Dollar Falls to Day’s Low After Soft ADP, ISM Data: Inside G-10

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Gold Rallies as Weak US Data Reinforce Bets on Fed Rate Cuts

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