FRB当局者3人、インフレ目標レンジ導入の利点指摘
米連邦準備制度の3人の当局者は今週、金融当局のインフレ目標について、現在採用している2%という単一の数値ではなく、レンジで示すアイデアに前向きな見解を示した。
連邦準備制度理事会(FRB)のマイラン理事とボウマン副議長(銀行監督担当)、アトランタ連銀のボスティック総裁はそれぞれ別々の機会にこうしたアイデアに言及した。米金融当局は5年に1度の金融政策枠組み見直しの作業を8月に終了したが、そこではインフレ目標の変更は最初から議論の対象から除外されていた。
ホワイトハウス返り咲きを果たしたトランプ大統領は、利下げを求めて金融当局に異例の圧力をかけている。来年5月に任期満了となるパウエルFRB議長の後任候補を指名する機会をトランプ氏が持つことで、新体制の下で連邦準備制度に構造的な変化が生じる可能性があるとの見方が浮上している。
トランプ氏の最側近の1人で今月16日にFRB理事に就任したばかりのマイラン氏は22日、「非常に精緻な」インフレ目標は過度のマイクロマネジメント(細部管理)につながりかねないと述べ、当局は代替案に対してオープンであるべきだと語った。
ニューヨーク経済クラブで講演したマイラン理事は、「インフレを測定するのは極めて難しい」とした上で、明示的な数値目標を設けず「低く安定した物価」を追求していた2012年以前の金融政策運営への回帰は「興味深いやり方の一つだ」と指摘。ただ、いかなる変更を行うにしても、その前にインフレ率を2%に戻す必要があると論じた。
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23日にはボウマン副議長も同様の見解を示した。同副議長はトランプ政権1期目の18年にFRB理事に起用され、政権は現在、パウエル議長の後任候補の1人として検討している。
ボウマン副議長はケンタッキー銀行協会の年次会議で「世界の他の国々は目標レンジを採用している」と述べるとともに、こうした手法はインフレ率の正確な水準を巡って「大騒ぎすることを避けられる」と発言。直ちに変更が行われる可能性は低いとしつつも、「常に議論を続けることが重要だ」と強調した。
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米国のインフレ率はすでに4年半にわたり2%の当局目標を上回って推移している。背景には新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による経済の混乱に加え、直近ではトランプ氏が打ち出した貿易相手国・地域への関税措置の影響もある。
一方で、金融当局が20年以前に直面していた状況は今とは逆で、インフレ率が長期にわたって目標を下回り続け、利上げによって金利を一段と正常な水準に戻すことができなくなるのではないかとの懸念が当局者の間で生じていた。
ボスティック総裁は23日、ポッドキャスト「Macro Musings」に出演し、当局のインフレ目標について一般の人々はその精度を誤解することがあるとコメント。「インフレ目標やターゲットを巡る議論に関しては、レンジを用いることにオープンだ」と述べた。
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どの程度のレンジが望ましいかとの質問に対し、インフレ上昇圧力が高まらないよう十分に狭い幅であるのが望ましいとし、「例えば2.25%から1.75%といったところかもしれない」とボスティック総裁は答えた。
原題:Three Fed Officials See Advantages to Range for Inflation Target(抜粋)