トヨタ ポルテは革新のパッケージングと「なんでもドア」でプチバン市場を確立!【愛すべき日本の珍車と珍技術】
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これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、
様々な用途に使える最高のユーティリティカー、ポルテを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
【画像ギャラリー】生活シーンに即したモビリティとして多様なニーズに応えてくれるポルテの写真をもっと見る!(8枚)「トヨタ ポルテ」は、「Smart Life Supporter」というコンセプトのもと、日常生活を支えるモビリティとしての役割を最大化することに重点を置いて開発された。
従来のコンパクトカーの枠にとらわれないパッケージングとユニバーサルデザイン思想を融合させ、空間、乗降、燃費、安全、環境、操作性といった複合的要素のバランスが図られた設計は、多様化するライフスタイルに柔軟に応える“使える”コンパクトカーの新たなテンプレートを提示した。
特に助手席側をスライドドアとした大開口設計に象徴される人間を中心に据えた設計は、トヨタが次世代都市型車両に求めるビジョンを端的に表している。登場以来、市場では実用指向の顧客層を中心に高い評価を獲得し、ミニバンとは違う実用系車種を求めるニーズを満たしてくれた。
コンパクトなボディに助手席側の大開口スライドドアを持つハイトワゴン車。初代モデルは2004年にデビューし、2012年まで販売された
全車に採用した助手席側ワイヤレス電動スライドドアは、ポルテの最たる特徴であり、これが後に、「ミニバン的ユーティリティを持つコンパクトカー=プチバン」という新たなジャンルを確立することになる。ミニバンが抱えるボディサイズの大きさや、それに起因する取りまわしの不便さを回避しつつ、実用性と日常性を両立した新提案として注目されたわけだ。
開口幅1020mm、開口高1265mmというミニバンを凌駕する大開口スライドドアは、乗員の乗り降りから荷物の積み下ろしまで、すべてをひとつのドアで完結できるという点で、従来の“ドアごとの用途”という固定観念を打破することになる。
地上高300mmの段差のないフラットフロアも、乗降時のストレスを軽減できるだけでなく、高齢者や小さな子ども、車いす利用者にも配慮された構造として注目された。
さらにミニバン並みの1390mmという室内高を確保することで、車内の移動がスムースに行え、リアシートまで自然に歩いて行ける「ウォークイン・ウォークスルー」を可能にした。身体的負担の少ない乗降性能は、ユニバーサルデザインの実践として高く評価される。
ポルテの機能は、単なるバリアフリーへの対応にとどまらず、すべてのユーザーにとっての「使いやすさ」が追求されていたが、コンパクトミニバン然とした高めの全高とフラットフロア構成によって広い室内空間が確保されているのも見逃せない。
室内の広さは、ドライバーはもちろんパッセンジャーの快適性に加え、荷室スペースの柔軟な活用にも効果をもたらしている。こうした特徴によってコンパクトカークラスに属していながらミニバン的ユーティリティを実現し、ポルテは移動手段を超えて「生活を支えるパートナー」としての役割を担うことになる。