「ロボットは血を流さない」 ウクライナ軍、歩兵の代わりに無人兵器を投入 戦場で優位に

訓練場で地上ドローンの試験運用を見守るウクライナ兵=10日/Dmytro Smolienko/Ukrinform/NurPhoto/Getty Images

(CNN) 2人の兵士が両手を挙げて投降し、敵が投げる指示に注意深く従っている。はるか昔から変わらない、戦争の一場面だ。

だがこの場面では、敵側に人間の姿が見えない。ロシア兵2人が降伏している相手は、ウクライナ軍の地上ロボットとドローン(無人機)だ。パイロットは前線から何キロも離れた安全な場所で操縦している。

これは戦争の将来像だ。そして今、すでに現実となっている。

作戦を遂行したウクライナ軍第3独立強襲旅団、「NC13」部隊の司令官ミコラ・マカル・ジンケビッチ氏は、CNNとのインタビューで「一発も撃たずに陣地を攻め落とした」と語った。

地上のロボット攻撃システムを担当するジンケビッチ氏によると、昨夏のこの攻撃では史上初めて、地上ロボットとドローンが歩兵の介入なしで敵の拠点を襲撃し、捕虜を取ったという。この主張の真偽を確認するのは難しいが、ウクライナ軍が自分たちの技術に誇りを持っていることはよく分かる。

それ以来、ロボットが兵士の代わりを務める作戦は、同部隊の日常の一部となった。

ウクライナの前線上空には何年も前から多数のドローンが飛び交い、歩兵部隊を脅かしてきた。そこでウクライナ軍は、地上ドローン(遠隔操作で道路や線路を走る車両)や地上ロボットシステムを試し始めた。当初は死傷者の搬送や部隊への補給が中心だったが、次第に戦闘での突撃任務にも使われるようになった。

地上ドローンは大きな軍用車両に比べ、発見して拿捕(だほ)するのが非常に難しい。航空ドローンと比べても、全天候型で積載量がずっと大きいという利点がある。

耐久期間やバッテリー寿命もはるかに長い。第3独立強襲旅団が所属する陸軍第3軍団は昨年末、機関銃を装備した1台の地上ロボットがロシア軍の進撃を45日間にわたって阻止したと述べた。その間に必要な作業は、2日ごとの軽い整備とバッテリー充電だけだったという。

ジンケビッチ氏はロシアの兵力が圧倒的に勝る現状を指摘し、「われわれが兵力を増強できないこと、決して数的優位には立てないことを理解する必要がある」と述べた。「だからわれわれは、技術の力で優位に立たなければならない」

同氏によれば、現時点での目標は今年中に歩兵の3分の1をドローンとロボットに置き換えることだ。

ウクライナのゼレンスキー大統領は先週、軍の技術による成果を取り上げた演説のなかで、ドローンとロボットが遂行した任務はこの3カ月だけで2万2000回を超えたと主張した。

英シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の地上戦専門家ロバート・トラスト氏は、「航空ドローンの監視によって前線での動きがほぼ命取りとなっている今回のような戦争で、地上ドローンは極めて重要な意味を持つ。北大西洋条約機構(NATO)が将来、ウクライナのような戦い方をすることはないかもしれないが、こうしたシステムはほかの軍でもほぼ確実に、さまざまな使い道がある」と述べた。

ドローンで優位に

ウクライナは過去4年あまりの戦争でいや応なく、戦場におけるドローンとロボットシステムの世界的リーダーになった。だがこの領域での優位性獲得を大きく加速させたのは、ミハイロ・フェドロウ氏の国防相就任だ。

フェドロウ氏はそれまでデジタル変革相を務め、同国のドローン戦争プロジェクトを統括していた。1月に国防相となってからの方針として、「ロシアに和平を強いる」ための戦争計画を掲げている。

技術とデータに大きな重点を置く戦略で、数百社の企業が政府主導のドローン開発、製造プロジェクトに参加するという内容だ。

フェドロウ氏は19日、地上ロボットシステムに将来、前線の兵站(へいたん)任務を全面的に任せたいとの意向を示した。

戦争計画は防御と攻撃の両方に重点を置く。目標は、データと技術を駆使して空からの脅威をひとつ残らずリアルタイムで検知し、ミサイルとドローンの95%以上を迎撃すること。そして前線の手前15~20キロの地帯にドローンとロボットが常時稼働して待ち受ける「キルゾーン」を設けることだ。国防省は最近、この新たな統一プログラムの一環として、すでに約1000台のクルーが稼働していると述べた。

アナリストらによれば、ウクライナは戦場でのドローンで明らかに優位に立っている。米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は最近、この優位性が「ロシアの停滞とウクライナによる最近の反撃に寄与している可能性は高い」との見方を示した。

ミサイルと引き換えに技術を提供

ドローンの優位が戦争の勝敗を決めるとはいえないかもしれないが、ウクライナが有利に展開するドローン戦争は欧州以外からも注目され始めている。

その一例が中東だ。通常戦力の増強に多額の予算を投入してきた国々が、イランをめぐる戦闘開始以降、1機5万ドル(約800万円)で製造されたドローンを撃ち落とすのに400万ドル(約6.4億円)のミサイルを使う羽目に陥っている。

一方、ウクライナは限られたリソースのなかで必要に迫られ、より低コストではるかに効率的なドローンとの戦い方を開発してきた。

ゼレンスキー氏は自ら中東を訪れてサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦からさらにトルコとシリアを回り、ウクライナが苦労して得た専門技術を支援と引き換えに共有すると持ちかけた。湾岸諸国には、ウクライナが切望する防空ミサイルなどのリソースがある。

ウクライナにとって、そして世界のどの国の軍にとっても、次の目玉はAI(人工知能)だ。ウクライナは実戦のデータを活用し、無人システム向けAIモデルの開発と訓練を順調に進めている。

ただし、地上ドローンにAIを使うことに対しては依然として慎重な見方が強い。ジンケビッチ氏は、一部のプロセスを自動化できる可能性はあるとする一方、完全自律化の技術が戦場で活用できるかどうかは定かでないと話す。

「最終決定は常に人間が下さなければならない」と、同氏は説明する。「兵器を人工知能に任せようと思うか。味方と敵を見分けられると確信できるか。故障や間違いが起きないと言い切れるだろうか」

とはいえ、かつて歩兵や襲撃部隊の司令官も務めた同氏は、この4年間で目の当たりにした技術の進歩に絶えず驚かされてきたと話す。

「もし2022年の時点で自分がこんなことを言うのを聞いたら、血迷ったやつの話だと思っていただろう。ただのSFにすぎないと」

だが今ではすっかり推進派だ。「人命はかけがえがなく、ロボットが血を流すことはない。したがって私の意見はこうだ。ロボットの地上システムはもっとずっと速く、ずっと大きな規模で開発される必要があり、戦場で使うための世界的なシステムとして実用化されるべきである」と、同氏は力を込めた。

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