ロシアを夏の燃料危機に陥れる ウクライナによる製油所攻撃

モスクワ、ロシア、7月1日 (AP) ー  ロシアのガソリンスタンドでは給油を待つ車の列が伸びており、これに伴いドライバーの不満や不安も高まっている。数カ月に及ぶウクライナによる攻撃で製油所が炎上し、広大な国土のいたるところで自動車向けの燃料供給が滞っているためだ。  多くの地域で燃料の購入制限が導入され、道路脇には何時間も続く車の長い列が蛇のようにうねっている。ソーシャルメディア上の動画には、大行列に衝撃を受けたり、燃料の空っぽな給油ポンプや価格の高騰に怒りの声を上げたりするドライバーの姿が映し出されている。シベリアの都市イルクーツクの市長は、列に並ぶドライバーに対応するために移動式簡易トイレの設置を指示するまでに至った。  世界有数のエネルギー生産国であるロシアにとって前代未聞の燃料危機は、5年目に突入したウクライナ戦争における他のどの出来事よりも、モスクワによるウクライナへの全面侵略の現実をロシアの一般市民に痛感させている。  今回の事態を巡り、プーチン大統領は「我が国の施設への攻撃が問題を引き起こしていることは確かであり、現在ある程度の不足が見られる」と述べ、極めて異例ながら苦境を認めた。しかし、プーチン大統領は不足について「危機的な状況ではない」と強調している。  だが、その言葉もモスクワの一人のドライバーを安心させるには至らなかった。富裕層が多く、通常であれば地方よりも経済的ショックに対して耐性があるはずの首都モスクワでも、状況は深刻だ。  プーチン氏のテレビ演説の翌日である29日、給油の列に並んでいたこのドライバーはAP通信に対し、「状況はあまり良くないと思う」と語った。「テレビではあれこれ言っているが、現実は別だ。どこもかしこも人が並んでいる」と続けた彼は、自身の安全への懸念から匿名を条件に取材に応じた。  AP通信の集計によると、ウクライナによるロシア国内および併合されたクリミア半島にある製油所、貯蔵庫、ターミナル、その他の石油インフラへの攻撃は、4月以降で40件以上に上る。同じ施設が何度も標的になるケースも多く、黒海沿岸の町トゥアプセにある製油所は、わずか2週間強の間に4回も攻撃を受けた。  その結果、ロシアが6月に燃料へと精製した原油の量は、前年同期比25%減の1日あたり395万バレルに落ち込み、ここ20年余りで最低の水準となった。    ガソリン生産量は前年同期の1日あたり103万バレルから17%減少し、1日あたり85万バレルまで下落。国内市場で必要とされる量を大幅に下回っている。なお、ロシアが輸出するガソリンの量は比較的わずかである。  マクロ・アドバイザリーの最高経営責任者であるクリス・ウィーファー氏によると、ロシアの石油精製能力の約3分の1が稼働停止しているという。政府がこうした数値を公表していないため、この試算は独自の聞き込みや石油業界の関係者からの情報に基づいている。  ウィーファー氏は「ロシア経済にとって非常に深刻な時期にこの問題が発生した。農業シーズン、特に収穫期が本格化し始める時期だからだ」と指摘し、この季節は需要が一段と高まると付け加えた。  ウクライナ当局は一連の攻撃について、ロシア軍の兵站や供給網を揺るがし、前線での攻撃能力を弱めることで、モスクワに戦争終結を迫るための作戦であると説明している。特にキーウ側は、2014年にロシアが国際社会の大半に認められない形でウクライナから奪取したクリミア半島の孤立化を狙ってきた。  今年に入ってからの攻撃を受け、モスクワが擁立したクリミアの当局は、5月に半島内での燃料配給制を余儀なくされ、その数週間後には民間人へのガソリン販売を完全に停止した。  6月下旬までに、ロシア全土の半分以上の地域で何らかの形で配給制が報告されている。すべてのガソリンスタンドに対して厳格な制限を設けた自治体もあれば、ガソリンスタンドのチェーンが独自に購入上限を定めたケースもある。  当局はパニック買いを非難し、ドライバーに対して必要な時だけ満タンにするよう促している。また、ガソリンや航空燃料の輸出が制限されているほか、当局はディーゼル燃料の輸出禁止も検討している。  この不足は、ウクライナのドローンによる製油所への被害が出ていない遠方のロシア地域にまで広がっている。  ウィーファー氏は、不足が生じている地域へ供給を再配置する必要があるとし、「ロシアのような大国では、一朝一夕にできることではない。燃料自体は存在し、十分な量があるはずだが、それを今ある場所から必要とされる場所へ移動させるには数週間かかる。まさに巨大な物流作戦だ」と語る。  戦争で損傷した製油所の修復は一筋縄ではいかない。ウクライナの攻撃は、海外から調達されることが多い専門的な設備を破壊したため、制裁を回避しながら代替品や迂回策を探す必要があり、修理には時間と費用がかかる。  モスクワとその周辺地域に40%の燃料を供給していた「モスクワ製油所」の修復には、少なくとも3カ月はかかる見通しだとウィーファー氏は述べた。  モスクワのガソリンスタンドで列に並んでいたあるドライバーは、この状況を「本当に悲しい」と表現した。「石油を生産している国なのに、ガソリンがないなんて。一体どうしてそんなことがあり得るんだ?」と首をかしげた。 (日本語翻訳・編集 アフロ)

AP通信
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