グーグル「Gemini 4 Argon」一般公開 量子計算、核融合研究にも活用
Googleは、AIモデル「Gemini 4 Argon」の提供を世界で順次開始した。コーディングや金融、法務、科学など、複数の工程を伴う複雑な業務への対応を強化しており、Chromeのコード改修から、量子コンピューティング、核融合研究まで、具体的な活用事例も紹介している。開発者・企業向けにはGoogle AI StudioとGemini APIで提供。Google AntigravityではGoogle AI Ultraユーザー、GeminiアプリとGoogle検索のAIモードではUltraおよびProユーザーが利用対象となる。APIの導入価格は100万トークンあたり入力2ドル、出力10ドル。キャッシュ済みの入力は95%引きとなる。12月1日以降は、100万トークンあたり入力4ドル、出力20ドル。Gemini APIでは、入力と出力を合わせて100万トークンまで扱える。■ Chromeの大規模改修を支援Chromeチームでは、約4,000万行のChromiumコードベースで、ブラウザ機能とWebページの中核処理を分離する作業にArgonを活用した。数百ファイルにまたがる変更を連携させ、通常は数カ月かかる改修を数週間で完了させたという。この改修は、表示中のページを再読み込みせずにタブやサイドパネルなどの間で移動できるようにし、クラッシュ原因の解消につながるとしている。科学計算ソフトウェアの改善にも利用した。分子構造の予測や創薬候補の検討に使われる量子化学パッケージ「xTB」では、分子構造予測が最大2.3倍高速化したという。■ 量子誤り訂正を高速化 核融合のシミュレーション検証にも量子コンピューティングでは、計算中に生じる誤りを訂正するための機械学習モデル「AlphaQubit」の社内版を最適化した。処理を単一のハードウェアカーネルにまとめ、推論スループットを約2倍に向上させたという。量子ハードウェアと同期したリアルタイム処理を支え、より大規模なモデルや量子デバイスへの対応につなげる。量子アルゴリズムの設計では、逆正弦関数の計算を改善。Argonが作成し、定理証明支援系Leanで形式検証した実装により、既存方式に比べて計算資源と実行時間を組み合わせた「時空コスト」を100分の1未満に削減したとしている。核融合では、複雑な3次元磁場を用いる装置「ステラレーター」に関する研究を紹介。Googleの研究チームはメリーランド大学のMatt Landreman教授と共同で、磁場の厳密な数学的解に関する「グラッドの予想」に対し、従来より広い種類の反例を発見したという。得られた解は、ステラレーターのシミュレーションコードを検証する基準として利用でき、将来の装置設計を支えるとしている。■ 酵素設計から医療インフラの保護まで酵素設計では、特定の分子のエステル結合を切断する酵素の候補作成に活用した。Argonは数時間でデータ収集やモデル調整、候補の絞り込みを進め、5つの新規設計を提示。その後の実験で、全てに触媒活性を確認したという。セキュリティ分野では、Wizが医療インフラの脆弱性の分析に利用。公開ファイルのダウンロード機能から管理者権限の取得につながる問題の発見・修正を支援し、数十万件の患者記録の保護に貢献したとしている。■ 動画からロボットの動作を生成 実機で7回連続成功ロボティクスでは、人間の動作を撮影した動画から、ロボットの動作を生成する実験を行なった。社内テストでは、穴の開いたボードに豆袋を投げる「コーンホール」の動画をArgonに見せ、環境の空間座標と必要な全身の関節動作を計算させた。さらにシミュレーションコードを自律的に作成し、Apptronikのヒューマノイドロボット「Apollo」に移したところ、実世界で7回連続の成功を記録したという。Googleは、動画からシミュレーションを構築し、実機へ適用する「Video-to-Sim-to-Real」の手法により、手作業で数週間かかるシミュレーションの構築を数時間に短縮できるとしている。日常の動画をロボットの学習に活用し、開発を加速する狙いがある。
Googleは研究利用を広げるため、科学者1万人を対象に、Antigravityの最上位利用枠を6カ月間無料で提供する機会も設ける。資格要件や選考、提供能力などに基づいて順次アクセスを提供する。