ベテランゲーム開発者が「ディレクター・プロデューサーとしての心得のコツ」を共有。基本的だけど大事なステップ
あるベテラン開発者が、ディレクターやプロデューサーとしてのさまざまな知見をBlueskyにて共有。開発者間で注目を集めている。
今回自身の経験からさまざまなアドバイスを綴っているのはSteven ter Heide氏。元Guerrilla Gamesで『KILLZONE』シリーズなどにプロデューサーやディレクターとして携わったベテラン開発者だ。現在はWild Sheep Studioにてクリエイティブディレクターを務めている。
そんなSteven氏はBlueskyにて、20枚にわたる画像に自身の経験に基づくさまざまな心得をテーマごとにまとめ、共有している。主に同氏が携わってきた、ディレクションとプロダクションにまつわる知見がまとめられているようだ。本稿ではその一部を紹介していこう。
たとえばSteven氏は、プロジェクト開始前の心得について紹介。不確実性が多すぎるとプロジェクトを進めづらくリスクも増すため、すでにあるものを活用することが効果的だという。コード・アート・アニメーション・デザインなどを再利用あるいは転用できるかどうか、そしてチームが過去に得た知見や学びをどう活かすかといった観点で検討することも重要だという。
そうしてプロジェクトを発足させる際には計画が必要となる。ただSteven氏は、各アドバイスの中で一貫してゲーム開発における計画の不確実性を説いている。ゲーム開発においては、いくら経験があっても各マイルストーンに到達する時期を一貫して正確に予測するのはほぼ不可能だという。
そのためスケジュールを守る必要があるプロジェクトでは、タスクごとに制限時間を決める「タイムボクシング」が有効とのこと。特にゲーム開発では、明確に目標(解決策ではなく課題そのもの)と品質基準を定義し、全体のスケジュールを踏まえた適切な期間を決めて、取り組んでいくのが有効だという。そして期間内の成果をそのまま“受け入れて”、次の工程にできなかったことを持ち越さないようにするのも重要だそうだ。
I made a bunch of one page tips on #gamedev with stuff that I learned over the years. It leans towards the direction + production side.This is stuff that worked for me, maybe it can be of use for you. Here is a thread of tips, starting with keeping your project on track with timeboxing🧵 1/20
— Steven ter Heide (@steventerheide.bsky.social) 2025-05-04T08:04:11.344Z
Steven氏は、タイムボクシングによってチームの集中力を高め、意思決定を促し、創造性を引き出せると説明。またタイムボクシングを用いる際には、計画と報告に注力するプロダクトマネージャーではなく、制限時間内に問題を浮き彫りにして解決策を見つけるプロデューサーとしてのチームへの関わり方が重要になるとしている。
さらにSteven氏は良い計画を立てるためのアドバイスとして、部分的にでもいいので早期にプレイアブルなゲームを作り、チーム全体でプレイすることをおすすめした。チーム全体でプレイアブルなゲームに対して率直な評価を下すことで、早い段階でゲームの状態や足りないものについての認識を揃える狙いがあるそうだ。
そしてプロジェクトが進行するなかでは、明確な進捗をチーム全体に示せるようなマイルストーンもモチベーション維持などの観点から重要になるという。Steven氏は異なるタイムラインで動く各部門にとっての横断的なマイルストーンとして「トレイラー制作」が有効だとしている。というのもトレイラー制作では、すべての部門が協力して統合する作業がおこなわれるため、早期にプロジェクトの課題発見に繋がるという。また各要素に最低限の品質が求められるため、初期段階からブラッシュアップ・バグ修正が進み、品質基準が明確化。おまけに開発の節目を映像として記録できることも、トレイラー制作をマイルストーンにすべき理由だそうだ。
このほかSteven氏はプレイテストの重要性も説いており、中にはプレイヤーからフィードバックを得る際の注意点を説明する項目も。同氏の考えではプレイヤーは自分が望むゲーム像や解決策を寄せがちだそうで、開発者目線では違った観点が必要だという。「プレイヤーが開発者が意図した体験を得ているか」「意図せぬ形でゲームを楽しんでいないか」「楽しさを妨げている要因がどこにあるかを特定できるか」といった見方で、フィードバックを見ることが重要だそうだ。
ほかにもSteven氏はチームリーダーとしての心得や、ゲームにおいてプレイヤーに「役割」「動機」「サポート」を与えることの大切さなど、開発におけるさまざまな観点から心得をまとめている。チームのマネジメントやゲームの開発方針、スケジューリングなど、同氏が携わってきた役職ならではの知見が反映されているようだ。ゲームを遊ぶ際だけでなく、開発中のゲームをチェックする際にも、そうした開発状況に想いを馳せてみるのもいいかもしれない。
ちなみにゲーム開発者自らがノウハウを共有する例といえば、桜井政博氏のYouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」が想起される。同チャンネルでは、ディレクターとしての目線でも同氏のさまざまな知見が紹介されていた。今回のSteven氏の考えと重なる部分もあれば、違った切り口のアドバイスもあるかもしれない。国や所属するスタジオ、また人それぞれで働き方や重視するポイントは異なるとみられ、共通点や違いを探してみるのも面白いだろう。