バイオベンチャーのSpiber、事業譲渡後に特別清算 ~ ユニコーン企業、2025年12月期は438億円の最終赤字 ~

 バイオベンチャーとして注目されたSpiber(株)(TSRコード:363798706、山形県鶴岡市)が約300億円の債務超過を解消できず、新会社に事業を譲渡後、特別清算を申請する方針を固めた。現時点で負債総額は金融債務の300億円が見込まれる。  特別清算は、米国子会社の清算が完了する約2年後に申請するとみられる。  事業を譲り受けるスポンサーは、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏の長女の川名麻耶氏が代表を務めるCRANE(株)(TSRコード: 045140316、山形県鶴岡市)で、譲渡価額は約50億円とされる。  クールジャパン機構も出資したSpiberの事業譲渡の決断までを東京商工リサーチ(TSR)が取材した。

 Spiberは、人工クモ糸や人工タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」などバイオ繊維の研究開発で注目された。大手アパレルや穀物メジャーなどが相次いで出資するスタートアップベンチャーとして脚光を浴び、量産化に向け動き出していた。  だが、2024年12月期の売上高は4億1,400万円、最終利益は295億1,800万円の赤字と業績不振に喘いでいた。2025年12月期も売上高は1億7,700万円と低迷し、438億3,100万円の最終赤字を計上した。純資産はマイナス281億700万円と大幅な債務超過に陥っていた。  深刻な業績不振に加え、米国工場への投資負担がかさみ、原価低減策などでは収益は改善せず、2025年12月28日に期日を迎えた350億円の借入金の返済メドが立たず、準則型私的整理でスポンサー選定を開始していた。

Spiberの本社(TSR撮影)

スポンサー選定

 負担となったのが、負債(2025年12月期363億6,200万円)の大部分を占める借入金355億円だ。このうち350億円は金銭消費貸借契約に基づき、金銭債権の流動化取引による特別目的会社「合同会社Eve」から調達。大手行や機関投資家などがこの融資に関係している。残る5億円は日本政策金融公庫分とみられる。  最終的に2025年12月、川名氏のCRANEをスポンサー候補に選定し、事業譲渡とその対価に基づく事業再生計画案を作成。3月25日開催の株主総会で決議された。  事業譲渡はSpiberの事業と関係会社の株式で、クロージング日は2026年3月31日または当事者間での別途合意の日。

特別清算は2年後か

 川名氏側は今回のスキームで150億円を拠出し、100億円を新会社CRANEの運転資金に充て、残る50億円を譲渡対価として支払うとみられる。  事業譲渡と同時期に、CRANE をSpiberに商号変更。現在のSpiberは、構造タンパク質事業資産管理(株)に変更し、資産の換価手続きなどに入る。その後、米国子会社の清算終了後、特別清算の手続きに入る見通し。関係者によると、申請は2年後。  関係会社は、Spiber Holdings America Inc.(DUNS:138547072、アメリカ)のほか、Spiber (Thailand) Ltd.(DUNS: 661523637、タイ)、Xpiber(株)(TSRコード: 012645265、山形県鶴岡市)、(株)YUIMA NAKAZATO(TSRコード: 013908308、東京都渋谷区)などが確認される。  XpiberはSpiberの本社不動産(建物)を保有している。  川名氏は2025年12月の事業支援締結時に、「これまでSpiber社を築き上げてこられた社員およびステークホルダーの皆様への敬意と、日本発という誇りを胸に、共に進化と改革を進めてまいります」と公表している。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年3月27日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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