「三足のわらじ」の維新・吉村氏襲った都議選ショック 支持率低迷で初の国政選が正念場

参院選候補の応援で街頭演説する日本維新の会の吉村洋文代表=3日午前、大阪市中央区(彦野公太朗撮影)

参院選(20日投開票)で日本維新の会の吉村洋文代表が奔走している。代表就任後初の国政選挙で、大阪府知事と地域政党「大阪維新の会」代表との「三足のわらじ」を履き、公務の合間を縫って党や政策をアピール。ただガバナンス(組織統治)に課題を残し、前哨戦とされる6月の東京都議選で唯一の議席を失った。参院選では社会保険料引き下げを政策の柱に掲げるが、全国政党化への正念場を迎えている。

演説後、万博会場へ

「大阪府知事として高校授業料の完全無償化をしたが、増税せずに改革で財源を生み出した」

吉村氏は公示の3日、大阪選挙区(改選数4)の新人2人の応援演説でこう訴えた後、来年度から支給する「子ども・子育て支援金」の財源確保のため、国が公的医療保険料に上乗せして徴収する方針に触れ「子育ての財源ぐらい改革で生み出せ」と批判した。

演説後は大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)に急行。この日は、大阪・関西万博を開催している日本のナショナルデー(ジャパンデー)で、秋篠宮ご夫妻ご臨席のもと挙行された式典などに知事として出席した。

前日の2日には東京都内で開かれた日本記者クラブ主催の党首討論会で論戦を交わし、4日は参院選候補の応援で兵庫や福岡を巡回。6日も朝からNHK番組で各党党首と参院選の争点を巡り討論した。交流サイト(SNS)の動画にも企業経営者やサラリーマンにふんして出演し、自身が「本質的な課題」と位置付ける社会保険料改革を訴える。

「息抜きする時間はない。短期決戦の選挙を走り抜く」と力を込める吉村氏だが、旧執行部の一人は「三足のわらじを履かされ気の毒だ」とおもんぱかる。「若手は吉村代表に任せておけばうまくいくと無責任に考えている。まつり上げた人間が支えなければならない」と苦言を呈す。

大阪偏重の比例票

維新は昨年の衆院選で大阪府内全19小選挙区の議席を獲得したものの、全国では公示前の43議席から38議席に後退。比例代表票は約510万票で令和3年衆院選から300万票近く減らした。510万票の2割超を大阪が占め、10万票以下の県も少なくない。

昨年12月の代表選を制した吉村氏が党勢立て直しに着手する中、今年に入って兵庫県知事の疑惑告発文書問題に関連し、所属県議3人が情報漏洩(ろうえい)に関与するなどしていたことが発覚。3人は処分を受けて離党した。

参院選大阪選挙区の公認候補を決める党内予備選では、落選した現職の梅村みずほ氏が離党し参政党に合流。各地の地方議会でも離党者が続出している。

苦境を表すように産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が6月14、15両日に実施した合同世論調査では、参院選の比例代表投票先として維新は6位の3・8%にとどまり、政党支持率も低迷。同月22日投開票の東京都議選では候補者6人全員が落選し、改選前の1議席を失った。

「共倒れ避けたい」

維新は参院選で選挙区と比例で擁立した計28人の全員当選と非改選を含む与党過半数割れを目標に掲げる。本拠の大阪選挙区で平成28年以降、2議席を獲得しているが、今回は新人2人の得票を一方に偏らせず振り分けることが死活問題だ。ただ維新以外で17人が立候補し、党内からは「共倒れは避けたい」との不安も漏れる。

吉村氏は選挙期間中、全国を行脚する予定で、大阪維新の関係者は「大阪で吉村代表が候補者の応援に入っているようでは、どこも勝てない。地元のわれわれが頑張って上積みに徹する」と気を引き締めた。(石橋明日佳)

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