【日本市況】債券下落、英金利急騰で財政拡大による売り意識-円安い

3日の日本市場では超長期債が大幅下落。英国で財政拡大懸念から金利が急騰した流れを引き継いだ。この日実施された30年利付国債入札が弱めの結果となり、午後に売りが膨らんだ。円は対ドルで小幅安、株式は小幅高。

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  2日の英金融市場は、30年国債利回りが一時20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇して5.4%を上回った。ポンド相場は一時1ポンド=1.36ドルを割り込み、英FTSE250指数は一時1.7%下落。与党労働党の議員らは1日、福祉予算を50億ポンド(約9800億円)削減する政府の歳出案を撤回に追い込んだ。社会保障改革により財政赤字を抑制するリーブス財務相の計画に狂いが生じた。

  大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストはリポートで、財政拡張懸念による金利上昇は米格付け会社ムーディーズ・レーティングスによる米国格下げ以降に沈静化していたが、ミニ・トラス・ショックに近い英国債の値動きは「油断を戒めるもの」と分析。日本でも「20日の参院選に向けた各党の財政スタンスについて一定の注視が怠れない」との見方を示した。

  30年債入札は、最低落札価格が99円55銭と市場予想の99円75銭を下回った。一方、投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.58倍と過去1年平均を上回り、2月以来の高水準となった。

国内債券・為替・株式の動き
  • 長期国債先物9月物の終値は前日比15銭安の138円97銭
  • 新発10年債利回りは1.5bp高い1.44%
  • 新発30年債利回りは8bp高い2.965%
  • 新発40年債利回りは8bp高い3.14%
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.2%安の143円90銭-午後3時半時点
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.1%高の2828.99
  • 日経平均株価は0.1%高の3万9785円90銭

債券

  債券は超長期債中心に下落。英国と米国の長期金利が上昇したことを受け売りが優勢だった。30年債入札が弱めの結果となったことも下げにつながった。

  アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、入札について「応札倍率は上昇したが、発行額が減った分が反映されただけ。割り引いて評価した方が良く、実態はもっと弱めだろう」と指摘。超長期債の安定的な消化に安心感を持てるような結果ではないとの見方を示した。

  SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、超長期債が大幅に下落したことについて、30年債入札後に流通市場で需要が乏しかったことが嫌気されたと指摘。「英国で財政拡張懸念から長期金利が大きく上昇した直後というタイミングの悪さや参院選の公示日で日本の財政拡張も意識された」と語った。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   不成立 0.985% 1.440% 2.360% 2.965% 3.140% 前日比 - +1.5bp +1.5bp +3.5bp +8.0bp +8.0bp

為替

  円相場は1ドル=143円台後半で推移。米国で雇用統計の発表を控え労働市場の軟化が警戒され、ドルの上値が抑えられた。

  あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、6月の米雇用統計や供給管理協会(ISM)非製造業指数の発表を控え、ポジション調整などでドルの上値は重いと指摘。ADP民間雇用者数が弱かったため、雇用統計に対する市場の目線は下がっていると言う。

  日本銀行の高田創審議委員は3日の講演で、米関税政策などを巡る不確実性を踏まえ、金融政策運営は足元は様子見とした上で、前向きな企業行動が持続すれば利上げを続けていくとの見解を示した。

  関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、ドル・円は「米雇用統計が市場予想通りに弱いのか、それほど弱くないかで動いている程度だ」と指摘。高田委員の発言は「中立金利は虹みたいなものとの表現が目を引いた」とし、「全体的にいつも通りのややタカ派で、為替市場には特段反応は出ていない」と述べた。

株式

  株式は小幅高。トランプ米大統領がベトナムとの間で貿易に関するディールを取りまとめたと明らかにし、米関税への懸念がやや後退した。ただ、日本と米国との関税交渉への警戒感も根強かった。自動車や鉄鋼株が高い半面、情報・通信や不動産、小売りといった内需関連が安い。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、日米通商協議の合意の遅れは懸念されるとした上で、米国とベトナムが合意した内容はかなりベトナムにとって厳しく見え、合意を急いでもいいことはないかもしれず、しっかりと交渉することが重要だと述べた。

  岡三証券の小川佳紀投資戦略部長は、軒並み上昇した自動車株について「関税交渉の悪材料はこの数週間で相当織り込んだ。急転直下でポジティブな結果になる可能性が意識され、買い戻しの動きが一部出ている」と見ていた。

  朝日インテックなどベトナムに生産施設を保有する銘柄の一角が上昇。シティグループ証券アナリストの山口秀丸氏は、ベトナムに対する関税が現在の想定より低下した場合、朝日インテにとって大規模な生産シフトの必要性が軽減されるので株価にポジティブだとリポートで指摘した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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