鼻呼吸のパターンから96%以上の精度で個人を識別可能という研究結果
指紋は人それぞれ形状が異なり、物や肌に付着した指紋から個人を特定できることが知られています。新たな研究では、人の「鼻呼吸」にも固有のパターンがあり、鼻呼吸のパターンだけを手がかりに96.8%の精度で個人を特定可能だという結果が示されました。
Humans have nasal respiratory fingerprints: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(25)00583-4Humans have unique breathing “fingerprints” that may signal health status | EurekAlert! https://www.eurekalert.org/news-releases/1085739
Your Breathing Pattern Is as Unique as a Fingerprint, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/your-breathing-pattern-is-as-unique-as-a-fingerprint-study-findsイスラエルのワイツマン科学研究所やハイファ大学の研究チームは、息を吸う際に脳が香りを処理する方法について研究する中で、「脳は呼吸と密接に結びついているため、脳が人それぞれ異なるということは呼吸パターンも個々の違いを反映しているのではないか?」という疑問を抱いたとのこと。
「人の呼吸パターンも指紋のように人それぞれ固有の特徴なのではないか」というアイデアは以前からありましたが、これまでは人の鼻呼吸を長期的に測定する便利な方法がありませんでした。そこで研究チームは、起きている時も寝ている時も長期間装着できる軽量のウェアラブルデバイスを開発し、鼻呼吸のパターンを測定することにしました。 以下が、今回開発された鼻呼吸測定デバイスを図示したもの。チューブにつながった記録デバイスは首の後ろに装着されました。前側はこんな感じ。柔らかいチューブを鼻孔の下側に挿入し、鼻孔内の気流を追跡することができます。
ほとんどの呼吸検査は1分~20分程度ですが、今回研究チームが開発したデバイスは被験者が起きている時も寝ている時も、24時間にわたって24時間連続で測定することが可能。実験では100人の健康な若年成人にこのデバイスを装着させて、日常生活を送ってもらいました。収集されたデータは、鼻呼吸の特徴を抽出する「BreathMetrics」というツールを用いて分析されました。 判明した呼吸パターンを用いて個人を識別できるかどうか検証したところ、わずか1時間のデータで43%の識別率を達成。この精度は24時間分のデータになると飛躍的に向上し、最終的に96.8%という非常に高い精度で個人を識別できることがわかりました。この結果は2年間にわたる複数回の再テストでも一貫して維持されたとのことです。
論文の筆頭著者であるワイツマン科学研究所のティムナ・ソロカ氏は、「被験者らは走ったり、勉強したり、休んだりとそれぞれ違うことをしていたため、誰かを特定するのは本当に難しいだろうと思っていました。しかし、実際には彼らの呼吸パターンは驚くほど特徴的だったのです」とコメントしています。 さらに研究チームは、個人の呼吸パターンがボディマス指数(BMI)や睡眠と覚醒のサイクル、抑うつ症状や不安のレベル、行動特性などと相関していることも発見しました。たとえば、不安に関する質問で比較的高いスコアを示した被験者は息を吸う時間が短く、睡眠中に呼吸が停止する時間の変動が大きかったとのことです。 論文の筆頭著者であるティムナ・ソロカ氏は、「私たちは直感的に、うつ病や不安の程度が呼吸の仕方に影響を与えると考えています。しかし、逆の可能性もあるかもしれません。もしかしたら、呼吸の仕方がうつ病や不安を引き起こしているのかもしれません。そうであるならば、呼吸の仕方を変えることで状態を改善できるかもしれません」と述べました。
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