【日本市況】金利低下加速、入札低調で超長期債減額期待-円下げ拡大
5日の日本市場は長期金利の低下(債券相場は上昇)が加速した。30年国債入札が弱い結果となり、超長期債発行の減額期待が強まった。金利低下で円は対ドルで下落、株式も値下がりした。
米金利低下を受けて下げていた長期金利は、入札後に低下幅を拡大させた。10年債利回りは前日比4.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.455%、30年債利回りは7.5bp低い2.87%まで低下した。国債入札を受けて円は対ドルで下落幅を広げており、株式も銀行株中心に下げ幅を拡大した。
関連記事:30年債入札、応札倍率は1年半ぶりの低水準-想定範囲で先物上昇
財務省の国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合を20日に控えて、市場にくすぶっていた発行減額への思惑が低調な入札結果で広がった形だ。これに先立ち日本銀行は16、17日の金融政策決定会合で現行の国債買い入れ減額の中間評価と26年4月以降の方針を検討する。
明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは30年債入札について、応札倍率低下とテール拡大という良い結果ではなかったと評価した。同時にPD会合での発行減額期待がある上、落札価格は前日の引けと比べて高い水準でこれまでが弱過ぎたという見方もできると述べた。
5日の日本市場の債券・為替・株式相場の動き―午後3時半時点- 長期国債先物6月物の終値は前日比40銭高の139円35銭
- 新発10年国債利回りは4bp低い1.46%-午後3時時点
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.2%安の143円07銭
- 東証株価指数(TOPIX)終値は前日比1%安の2756.47
- 日経平均株価は0.5%安の3万7554円49銭
債券
債券相場は上昇した。30年債入札が低調な結果で一時売りが膨らんだが、再び買いが優勢になった。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは30年債入札について、良くはなかったが許容範囲内の結果だったと指摘した。国内投資家が積極的に落札したかどうか分からないとしながら、落札額1位がクレディ・アグリコル証券で背後に欧州系の投資家がいた可能性もあると述べている。
関連記事:【国債入札情報】Cアグリコル が11.4%落札、SMBC日興 10.6%―30年債
入札結果は最低落札価格が91円45銭と市場予想92円00銭を下回り、大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は前回から拡大した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.92倍と過去1年平均(3.39倍)を下回り、2023年12月以来の低水準となった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは電話取材で30年債入札について、弱い結果だったと評価した。事前に先回り買いが入った影響もあるかもしれないとして、事前の警戒が強かっただけに想定の範囲との見方か、としている。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.750% 1.005% 1.460% 2.355% 2.880% 3.065% 前日比 -1.0bp -3.50bp -4.0bp -7.0bp -6.5bp -7.5bp為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台前半に下落。この日行われた30年債の入札が低調ながら想定の範囲にとどまったことを受けて、ドル買いが入ったとの声が出ている。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは「30年債入札の結果を受けてドル買いが多少入ったようだ」と話した。入札結果は良くはなかったとしながら「記録的な不調となった前月の20年債入札に比べれば問題ない程度だった」と指摘。ドルを143円台から押し上げるほどの材料ではないが、「ドル売り・円買いの勢いは弱まっており、142円台から下がりにくくなっている」と語る。
三菱UFJ信託銀行資金為替部の酒井基成課長も、30年債入札を受けたドル買いも多少はあったと言うが、米ADP民間雇用者数の悪化を受けたドル売りの揺り戻しという面の方が強いと指摘する。次の注目材料は6日発表される米雇用統計で、「ADPのように大きく悪化したら、サポートになってきた142円を抜けて下方向に走りそうだ」とみている。
株式
東京株式相場は反落。株式相場の前日終値比で為替が円高に振れていることが、自動車を中心に輸出関連株の重しになった。金利低下を受けて銀行も弱かった。
一方、半導体株や電線株は人工知能(AI)投資への楽観的な見方から値上がりが目立ち、東証株価指数(TOPIX)に比べ日経平均株価の下げは限定的だった。
大和証券の小浦みなみシニアストラテジストは、円高が一部の優良株の売りにつながり、自動車メーカーも関税懸念の影響を受けていると述べた。関税を巡る不透明感から6、7月は市場が不安定な状況が続くだろうとしている。