「カエルの解剖」がない時代に、動物にやさしい創薬の最前線(アスキー)

3D細胞培養やAI創薬など、動物実験を減らすための新技術が進化中。徳島大学発スタートアップが開発した甜菜由来の3D培養素材「NanoFibGrow」もそのひとつ。製薬の現場に“やさしさ”と“精度”を両立する時代が来ている。 【もっと写真を見る】 カエルの解剖から始まった“生命の興味”

 子どもの頃、理科の授業でカエルの解剖をしたことがある。    気持ち悪いと思いつつも、「へえ、体ってこうなってるのか」と、生命のしくみにワクワクした記憶がある。だが、いまやああした授業はほとんど見かけなくなった。動物愛護の観点もあるし、準備や管理が大変という現実的な事情もあるらしい。「時代は変わるもんだな」と思う。   動物実験は減る方向に──その理由とは?    そしてこの“変化”は、教育現場だけではない。大学や製薬企業など、研究開発の最前線でも、動物実験を減らそうという動きが年々加速している。理由はさまざまだ。動物に対する倫理的な問題、実験にかかる時間とコスト、そして何より、動物の反応が必ずしも人間と同じではないという科学的な壁もある。   動物を使わない薬の開発?「代替法」の進化    じゃあ動物を使わずにどうやって薬の研究をするのか? そこで登場するのが「代替法」と呼ばれる技術だ。例えば、ヒトの細胞を試験管で培養した環境下で実験する「in vitro(イン・ビトロ)」や、コンピューターで薬の作用を予測する「in silico(イン・シリコ)」などがある。    前者の中には、細胞を立体的に育てる「3D細胞培養」というものもある。これによって、従来よりも生体に近い形で薬の効き目や副作用を調べることができるようになってきた。要するに、「ミニチュアの臓器で実験する」ようなイメージだ。   北海道の甜菜から“ミニ臓器”を育てる    こうした研究は、日本でも着々と進んでいる。例えば、徳島大学発のNano T-Sailing合同会社は、北海道産の甜菜(てんさい)という植物を原料に、3D細胞培養のための素材「3D-NanoFibGrow」を開発している。この素材は、環境への負荷軽減だけでなく、地元の農産物を使うことで地域経済の活性化にもつながる。まさに一石二鳥の技術だ。   製薬業界も「脱・動物実験」へシフト    製薬業界全体も、この流れを後押ししている。例えば日本製薬工業協会(JPMA)は「産業ビジョン2035」や「政策提言2025」の中で、動物実験に頼らない研究開発の推進を掲げている。新しい治療法や、AIなどを活用したデータ主導の創薬が今後のカギになっていくという。   動物にも人間にもやさしい創薬の未来へ    あの「カエルの解剖」から始まった生命への興味が、こんな未来へとつながっているのかと思うと感慨深い。動物にも、研究者にも、そして私たちの社会にもやさしい創薬の時代。そんな未来が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。   文● ポリ山

アスキー
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