パナソニックが黒字下で1万人リストラ:10月から早期退職募集

経済

パナソニックホールディングス(HD)は黒字にもかかわらず、グループ全体で1万人規模の人員削減を進めている。その中心となるパナソニック本体は10月に早期退職募集を開始する。背景には高年齢者雇用義務化やAIによる業務効率化など構造的要因があり、日本企業の先行指標になる可能性もある。

パナソニック、10月に早期退職を募集 電池子会社などは対象外https://t.co/4avrXU8YIg

— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) September 25, 2025

早期退職募集の概要

  • 募集期間:2025年10月1日〜31日。
  • 対象:勤続5年以上の40〜59歳社員および64歳以下の再雇用者。
  • 退職金上乗せ:55歳前後で基準内賃金の60か月分を加算する例もあり、最大数千万円規模。

グループ全体でのリストラ計画

  • パナソニックHDは2025年度から構造改革に着手し、全体の5%に当たる1万人削減を表明。
  • 収益性の低いテレビ・家電などを縮小し、EV向け電池やAIサービスなど法人向け事業を強化。
  • ただし「パナソニックエナジー」「パナソニックコネクト」は今回の募集を見送り。

早期退職は業績不振だけが理由ではない

  • 上場企業全体で早期退職募集が急増、8月時点で前年1年分を超過。
  • 割増退職金は大きな魅力だが、無計画な退職は老後資金の目減りリスクが大きい。

黒字下リストラへの批判と経営判断

  • 松下幸之助が掲げた「従業員を解雇しない」理念に反すると株主から疑問の声。
  • 楠見社長は「当時と事業環境は大きく異なる」と説明。
  • 総務・人事など間接部門の肥大化が業績停滞の一因との指摘もある。

背景にある構造的要因

  • 70歳までの雇用努力義務化により、人件費圧力が高まった。
  • AI活用による業務プロセス見直しが進み、間接部門は特に置き換えが容易。
  • この動きは他の大企業や文系事務職全般に波及する可能性が高い。

パナソニックHDの早期退職募集は、黒字経営下でも雇用慣行を変えざるを得ない日本企業の現実を示している。正社員の特権だった終身雇用・厚い退職金・企業年金はもはや安泰ではなく、AIや高齢雇用義務化が進む中、労働市場の流動化は不可避だ。金銭解雇ルールの立法化や退職金上積みによる円満退職の仕組みづくりが、今後の労働政策の重要課題となる。

パナソニックHPより

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