ACL2・現地リポートinリヤド/FINAL
仲間を信じ、つながり合って戦い抜いた90分。 掴み取った10個目の『タイトル』。 AFCチャンピオンズリーグ2 2025/26決勝、アルナスル戦。『ド・アウェイ』の雰囲気が漂うキングサウードユニバーシティ・スタジアムで、ガンバ大阪は2008年以来、18年ぶりに『アジア』の頂点に立った。 「いやぁ、嬉しい! 正直、試合前夜は眠れなかったし、ずっとソワソワしていてプロデビューの時くらい緊張したんですけど、試合が始まってからはずっと、こういう痺れる試合を戦うためにやってきたよな、って思いながらプレーしていました。心から、改めてサッカーって素晴らしいなと思いました。24年の天皇杯でカップを掲げられなかったリベンジというか、今日はみんなで勝つ雰囲気を作れた…いや、勝手にその雰囲気になっていた感じでした。試合前も諒也(山下)たちが『後悔だけは絶対にこのグラウンドに残さないようにしよう』と言っていた通り、みんなが全部を出し切って勝ち切れた。天皇杯の悔しさは今日の日にあったんだと、ようやく受け入れることができました。最高です!(中谷進之介)」 「プロになったばかりの頃はタイトルを考える以上に自分がこの世界でどう生き残っていくのかを考える時間の方が圧倒的に多かったけど、16年にガンバにきてからはより『タイトル』を明確に意識するようになったというか。14年の三冠、15年の天皇杯と、タイトルを獲っていたガンバにきたから、自分の目標も『タイトルを取りたい』にグレードアップされた。以来、ずっとその思いを持ち続けてきてようやく今日、それが形になった。最高だし、嬉しいし、でもなんていうのかな…一番はホッとしたという気持ちが一番大きかったかも。試合が終わった瞬間、スーッと気持ちが軽くなって、そしたら涙が溢れていました(三浦弦太)」 「タイトルがこんなに最高なものだと知ることができて、ほんまに嬉しいです。ここ最近は、先制したところから最後、失点してしまう流れもあったんですけど、今日はほんまにみんなで最後まできっちり耐えられた。90分を通して優勝したいという気持ちは僕らの方が強かったと思うし、それがピッチでも示せたからこその結果。ガンバにタイトルをという思いでここに戻ってきて、ようやく1つ、ガンバに恩返しができた。ほんまに、ほんまに嬉しいです。泣いた!(食野亮太郎)」 ■ 試合前、選手の誰もが決勝で示したいと話していた「自分たちが今シーズン、体現してきたサッカー」。つまり、前線からのハイプレスでボールを奪い、縦に早く攻め切るサッカーは、立ち上がりから形を潜めた。試合当日、イェンス・ヴィッシング監督に伝えられた戦略だったという。 「トレーニングではこれまで通りにハイプレスで準備していたんですけど、当日のミーティングで、イェンス(ヴィッシング監督)からこの暑さもあるし今日はミドルからプレスをかけていこう、という提示があって、そこに気持を揃えて入りました(中谷)」 立ち上がりから、その共通認識を感じられる展開で試合が進んでいく。山下の言葉を聞けば、ミドルゾーンでブロックを敷くというより、いつもよりプレスをかける位置をやや下げ、でも、いつも通りに「前へ」の意識を持って戦っていたというべきか。 「ミドルゾーンで、と言われていたので、そこは役割として徹底しながらリスクをかけすぎないサッカーをしようと思っていました。ただ一方で、前半は特に、ミドルにしすぎないように、というか。しっかり前から出ていって奪えれば得点になるよね、って意識も持ち合わせながらプレーしていました(山下諒也)」 とはいえ、慣れないピッチコンディションもあってだろう。攻撃の組み立ての部分では、いつもなら通るはずのパスが少しずれたり、ややボールが足につかないようなシーンも。そこからアルナスルに攻撃のギアを上げられる時間が続く。開始早々には右サイドをサディオ・マネに攻略され、8分にはアブドゥルラフマン・ガリーブに、13分にはジョアン・フェリックスにミドルレンジからシュートを狙われ、20分過ぎにはクリスティアーノ・ロナウドやマネに立て続けにゴールを脅かされた。 だが、鈴木徳真、美藤倫のダブルボランチ、中谷、三浦のセンターバックコンビも連動し、相手のシュートコースを限定しながら落ち着いて体を張ってゴールを許さない。 「(3分のシーンは)諒也が前に行っちゃったタイミングで抜け目なくサイドバックを使われ、僕がスライドしたところにマネが走ってきたのでヒヤリとしました。思っていたより2倍、速かったです。でも立ち上がりにそれを体感できたことで予測と準備をいつもより早くしなきゃいけないとリマインドできた。というか、そう思って試合には入っていたんですけど、それでも2倍速に感じたので、自分もより意識を強めました。前半の終わり頃からはしっかり修正できたと思っています(岸本武流)」 「10分過ぎくらいにガリーブ(アブドゥルラフマン)選手やフェリックス選手に立て続けにシュートを打たれてしまったんですけど、逆にあそこで『今日は守れる』という確信したというか。実際、以降はプレーしていても『守れる気しかしない』という気持ちがどんどん大きくなっていきました(中谷)」 「攻撃の起点になっていたフェリックス選手が格別に巧かったし、だからこそ、彼にできるだけパスを通させないようしっかり潰そうと思っていました。もっとやれたと思いますけど、極力縦パスを減らすという役割はできたと思っています。今日は、しっかりミドルゾーンから、というスタートで前半はあえて前に出ていく回数を抑えていたため、前に行きたい気持ちとせめぎ合っていた自分もいたんですけど、そこはとにかくチームでの役割を、と心掛けていました。後半は正直、足も攣って限界でしたけど最後までチームのために走ろうと、その一心でした(美藤)」 そうした守備での奮闘を得点につなげたのは31分だ。自陣からボールを繋いで押し込んだところから、前線で抜群のキープ力を示していたジェバリが軌道、強度ともに抜群の縦パスを送り込み、ヒュメットが右足を振り抜く。今シーズン、熟成を見せていた『縦』のホットラインでゴールをこじ開けた。 「僕とジェバリとは普段から仲が良く、お互いへの理解力もあるし、プレーもよく分かり合えているので。得点シーンも阿吽の呼吸でスルーパスをもらえたので落ち着いて決めるだけでした。今日のようなゴールシーンは今シーズン何度も見せてきた形。それを決勝の舞台で示せたことはもちろん、チームに勝利を、タイトルをもたらす得点を取れたことが嬉しいです(ヒュメット)」 「イェンスの戦略通り、チームとしてミドルゾーンにボールを集められていたし、あのエリアは自分でも落ち着いてプレーできる場所。得点シーンでもそのエリアでしっかりボールをキープしながらいいボールを差し込めました(イッサム・ジェバリ)」 ■ この先制点が、ガンバをより勇敢に戦わせるものになったことは、1-0で折り返した後半のパフォーマンスからも明らかだ。選手を入れ替えながら攻撃の圧力を強めてきたアルナスルに対し、ガンバもフレッシュな選手を投入しながら集中力の感じられる守備で応戦。自陣ペナルティボックス内では中谷・三浦が圧巻の存在感を光らせる。 「今シーズンも試合を重ねるごとにお互いのやりたいこと、考えていることをわかり合いながら守備ができている手応えがあった中で、それを今日の試合でもそのまま出せたのかな、と。アウェイサポーターの声援で声が通らないシーンも多かったんですけど、言葉なくとも通じ合えたというか、いい意思疎通で動けた。ただ、相手の前線はやっぱり強力でした。マネ選手、クリスティアーノ・ロナウド選手、フェリックス選手らが、試合中ずっと一瞬の隙を狙い続けているのを感じていたし、だからこそ、僕らはその一瞬を作らないというか、何がなんでも集中し続けようと思っていました(三浦)」 最後の砦になった荒木の存在感も忘れてはならない。試合前「フィールドが頑張りきれなかった時には最後、僕が体を張ります」と話していた18歳は、この日も頼もしく、安定したセービングで『鉄壁』を支えた。 「相手が元気な立ち上がりの時間帯に絶対に失点しないように、チームを崩さないように、とにかく無失点で、と思っていました。後半も同じ意識で試合に入ったんですけど前線はほんまに強力で…特にサイドは、マネ選手や(途中から入ってきた)コマン選手(キングスレイ)ら推進力のある選手揃いで、ボールを持たれるとやっぱり迫力があって怖かったです。あとは、フェリックス選手。彼はボールが入った瞬間に必ず何かを仕掛けてきたし、今日の攻撃のほとんどが彼から始まっていたことからも、ほんまにいい選手やなと思いました。ただ、彼らに何度かペナルティエリア内の深いところまで侵入されたシーンもディフェンスラインの4人が自分の目の前でめっちゃ体を張ってくれていたので、やられる気がしなかったです(荒木)」 そうして6分間のアディショナルタイムを含め、最後まで集中を切らさず、アラートに試合を進めたガンバは1-0で試合を締めくくる。試合後、歓喜に湧くチームの輪の中で今大会を通して、また長きにわたってチームを支えてきたベテラン勢、倉田秋、東口順昭、宇佐美貴史が流した涙も印象的だった。 「ここまでの道のりは簡単じゃなかったし、ほんまにみんなで繋いできた時間がタイトルにつながった…って思っていたら自然と涙が出ていました。少しおこがましい言い方ですけど、正直、今大会は自分がもたらすことのできる最後のタイトルになるかもなーと思いながら戦いを進めてきました。あ、引退とかじゃないですよ! こういう舞台はそう何回もたどり着けるものじゃないのを知っているからこそ、そこに自分なりの思い入れを持って戦ってきただけに、本当に良かったな、と。…っていう涙でもありました。琉偉(荒木)のパフォーマンスも完璧。さすがでした!(東口)」 「なんていうか、ガンバの新たな時代の始まりを感じたというか。自分に限らず誰もが、『これからの選手』だった時代があって、いつか『これまでの選手』になると。今日はその瞬間を味わえた感慨深さというのかな。ネガティブな意味では決してなく、秋くん(倉田)やヒガシ(東口)くんの顔を見て、なおさらここまで歴史を紡げたなっていう気持ちが溢れて、はい、大泣きでした(宇佐美)」 試合後には現地に駆けつけた約150名のサポーターと勝利を祝い、ガンバクラップで喜びを分かち合う。5月6日の名古屋グランパス戦での負傷から、仲間も驚くほどの執念を示し続けてピッチに立った安部柊斗も「みんなに感謝したい」と笑顔を見せた。 「この舞台に立つために、タイトルを獲るために全てを注いでやってきたので本当に嬉しいです。ケガをしてからずっと一緒にリハビリに向き合ってくれた亮さん(鍛治亮輔トレーナー)をはじめメディカルスタッフの皆さんに感謝しています。先制点にも勇気づけられ、最後までみんなで死ぬ気で守って優勝するぞと1つになって戦えた。最高です(安部)」 24年のJ1リーグ『4位』から足掛け、2年半。歴史を紡ぎ、想いをつなげ、そして選手、スタッフが、それぞれの持ち場で『タイトル』への執念を燃やし続けて掴み取ったクラブ史上、10個目の栄冠だった。 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa