「行ったらあかん」いうても、このままやったらみんな行くよ、おーん!|広尾晃「野球のことを中心に、そのほかの話題も」

さっき、ブログにこんなの書いた。

岡田彰布が、誰でもポスティングでMLBに挑戦する風潮に危惧を表明している。直接的にはサトテルが契約を更新せず、球団に来オフのポスティングでの移籍を認めてほしいと粘っていることを批判しているわけだ。

鎖国は再悪手

岡田はFAとポスティングを明確に切り分けた上で「ルールを作らなあかん。5年は絶対帰ってこられへんとか、いろんな縛りを考えんと」と言っている。そうしないと有望な選手はどんどんMLBに行ってしまうと。それはその通りなのだが、いきなり「鎖国」にするのは、最悪手だろう。有望なアマチュア選手はほとんどが、NPB経由でMLBに行くことを夢見ている。元から超プロスペクトでMLB行きを公言している選手だけでなく、今年は独立リーグ出身、育成上がりの石井大智までもが「MLB挑戦」を口にした。殆どの選手は9年の海外FAではなく、それ以前にポスティングで移籍することを求めている。そのほうが活躍できる期間が長いし、多くは契約金も上がる。そして「譲渡金」が元居た球団に入るので、後ろめたさが軽減されるからだ。しかし、球団にとっては、人気が出たとたんに主力選手がいなくなるのは溜まったものではない。岡田が「おーん」というのもわかるが、この問題は球団やNPB機構が「簡単に移籍するな」「行ったら簡単に帰って来るな」と言って済む問題ではない。

絶望的な「経済格差」

この問題の背景には、日米プロ野球の絶望的な「経済格差」がある。2025年のNPBの最高年俸は、ライデル・マルティネスの12億円、日本人は村上宗隆の6億円だった。支配下選手の平均年俸は4713万円、MLBの最高年俸は、解釈によるが単純計算では、大谷翔平の7000万ドル(105億円)、メジャー選手の平均年俸は3.66億円になる。日米の年俸格差は、ほぼ10倍になっている。MLBでは「並みよりちょっと上」の選手でも、NPBの最高年俸を楽々上回る年俸を手にしている。NPBの選手でもなんとかメジャー契約できれば、一生食うに困らない年俸を手にすることができるのだ。チャンスがあれば、誰でも行きたくなるのは当然の話だろう。岡田彰布だって現役時代はトップクラスの二塁手だった、メジャーに行く道があれば「そらメジャーに行くよ、当たり前やんか、おーん」と言ったのではないか。

ちまちまメディア契約

これを解決するには、5年、10年かけてNPBのビジネスを巨大化するしかない。NPBはMLBと比較すれば、ビジネスモデルが決定的に古すぎる。極端に言えば「面倒だから、なるべく儲けないでおこう」と考えているような印象さえある。その象徴が「放映権」だ。NPBは、今も新聞社系列の放送局と放映権契約を結び、それ以外にDAZNやBS、CS局と契約している。しかし球団が個別に契約しているためちまちました契約だ。DAZNやNetflixなどの世界的なネットメディアは、リーグ全体と包括的な大型契約を結んで丸ごとパッケージを組んで販売したいのだが、NPBはそれをしていない。「昔から付き合いがある新聞系メディアに悪いから」だ。スポンサー契約も、ライセンス契約も、球団が知り合いの業者などと中小企業的な契約をしている。「昔から付き合いがあるから」みたいな理由で。MLBは、全試合のコンテンツを価値を最大化して巨大メディアに売る。巨大なスポンサーを付ける。しかしNPBは、コミッショナー事務局がお飾りで、個別の球団が、別個に商売をしている。パ・リーグは6球団でマーケティングを展開しているが、セはいまだにバラバラだ。スケールメリットが全くないのだ。

昭和のサラリーマン経営

もう一つ言えば、経営者。日本では球団の親会社になれるのは資本金1億円以上の日本法に基づく株式会社で、外国人の持株比率が49 %を超えていないことになっている。MLBでは投資家集団が資金を出し合って球団を買収し、短期間に観客動員を上げ、球団の収益も上げて転売するビジネスが存在する。「阿漕だ」ともいえるが、全球団の経営者が「今よりも儲けること」「ビッグチャンスをつかむこと」を常に考えている。そうしないと脱落するからだ。要するに競争社会だ。しかしNPBは「上流階級クラブ」みたいなもので、他社の参入を許さず、同じ顔触れで、過度な競争をせずやってきた。みんな横並び、そして「昨対(昨年対比)」ばかり気にする。「昭和のサラリーマン」みたいな企業なのだ。この体質を変えないと、NPBはますますしぼんでいく。すでにNPBは、MLBのマイナーになっているとは思うが、それが進めば、日本の高校生、大学生が直接MLBに挑戦するだろう。度重なる賭博、八百長事件で信用を失った台湾プロ野球(CPBL)は、10年程前まで、有望選手は台湾のドラフトを拒否してNPBやMLBに進んだ。陽岱鋼や呉念庭などがそうだが、日本もそうなるだろう。

エクスパンションをするとともに、外国資本も含めた複数の資本家による球団保有を認めて、業界に革命を起こすべきだろう。

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