立民と共産の「候補者1本化」で全勝を譲れない公明に危機感 都議選・北多摩3選挙区
東京都議選は投開票の22日が近づくにつれ、候補者間の論戦が一層熱を帯びてきた。北多摩3選挙区(調布市、狛江市)は、4年前の前回選と立候補者の党派構成が変わった上、世代交代も相まって混戦模様で、応援合戦も激しくなっている。
改選前は「与党」独占
北多摩3は現在、定数3の議席をいずれも都議会「知事与党」の地域政党「都民ファーストの会」、自民党、公明党がそれぞれ1ずつ分け合う。都民ファの尾崎大介、自民の林あきひろは今回も出馬しているが、公明党の現職、中嶋義雄は7期を最後に勇退を決め、新人のいいだ健一に後を託した。
前回の都議選で3位の中嶋にわずか354票及ばず涙をのんだ共産党の元職、田中とも子は雪辱を期す。
前回選で新人が2万票余を獲得した立憲民主党は今回、定数3以下の選挙区で共産と候補者の住み分けを行い、この地での独自候補擁立を見送った。
4年前に立民候補が獲得した票の何割かを引き寄せることができれば、田中の勝機は高まる。反対に危機感を強めているのが、公明のいいだ陣営だ。
機関紙1面に
「保守層や無党派層への浸透が弱く、依然圏外の危機的状況。勝利には、人脈総当たりの大攻勢しかない」
公明の機関紙、公明新聞は17日付1面に、険しい表情で演説するいいだの大きな写真を掲載し、情勢を伝えた。
北多摩3には公明の斉藤鉄夫代表が13日の都議選告示後、真っ先に応援に入った。これらは公明が今回擁立した22人の候補者の中で、いいだが最も厳しい一人だと認識していることを意味する。
「皆さんの希望ある未来をつくる」と訴えるいいだの元には14日、知事の小池百合子も応援に駆け付けた。
京王線調布駅前でいいだの演説を見守った公明関係者は、新人ゆえのハードルについて語った。「選挙で林や田中の名前を書いた人は確実にいるが、いいだと書いた人はいない。まだまだ『いいだ?誰?』という感じで浸透が難しい」
前々回、前回と連続トップ当選し、6期目を目指す尾崎は今回も盤石な戦いを進めている。それだけに陣営関係者は「判官びいき」で、不利な立場の候補者を応援する有権者が出かねないと警戒している。
尾崎は15日夕、調布駅前で、都民ファの特別顧問である小池の応援を受けて街頭演説。「都民生活向上のためにしっかりと仕事をしていきたい」と述べた尾崎について、小池は「ぶっちぎりで勝たせてください」と聴衆に呼びかけた。
「大物」が続々と
3期目を目指す自民の林が17日、調布市内で支持者を集めて開いた会合には、自民の前経済安全保障担当相、高市早苗が来援した。
パーティー収入の不記載はなかった林だが、党の問題として「反省する材料はたくさんある」と述べ、「信頼に値する政党として生まれ変わって前に進んでまいりたい」と集まった支持者に訴えた。
共産の田中は15日午後、調布市の京王線仙川駅前で参院議員、吉良佳子の応援を受けて活動した。
田中は街頭演説で都議会に関し「共産党は立憲民主党などと一緒になって提案を実現してきた」と述べ、立民支持者を念頭に「どうぞ安心して党派を超えて私に野党の一議席を確保させてください」と訴えた。
北多摩3では、前広島県安芸高田市長の石丸伸二が立ち上げた地域政党「再生の道」の新人、こうぐち信明も立候補している。こうぐちは15日、調布駅前で石丸と並んで演説し「政策を吟味し、必要性の低い予算はカットして真に社会の成長に必要な予算を実現していく」と主張した。=敬称略(原川貴郎、長谷川あかり)
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【北多摩3】(3-5)
尾崎 大介 51 都現
林あきひろ 64 自現
こうぐち信明 55 再新
いいだ健一 41 公新
田中とも子 67 共元
(選管届け出に基づく)