国の審議会に一石を投じた「あの出来事」から半年 「電気代を8割削減できる賃貸住宅」を開発した20代経営者が今思うこと

「実質自然エネルギー100%」の電力を提供するハチドリ電力は昨年12月、新たなプロジェクト「1% for Local」をスタートさせました。消費者から集めた月々の電気代の1%を地域共同基金としてプールし、地域のインフラ整備や地域活動の財源として活用しようという全国初の試みです。 その第1号の舞台が、兵庫県豊岡市日高町に位置する神鍋高原。スキーリゾートや農業が盛んな地域でしたが、近年は気候変動による雪不足や異常気象による農作物の被害に悩まされており、住民たちの間で持続可能な自然観光地域を目指す活動が始まっていました。 池田氏はこう語ります。 「講演で神鍋高原を訪れた際、『100年後も雪を残す』という思いで活動をしている地域の方々の熱意に心打たれました。色々な人と話をする中で、住民や地域の出身者などが電気代の1%を持ち寄ることで、『塵(ちり)も積もれば』で大きな財源をつくれるのではないかとこのプロジェクトを思いつき、地域の方々と一緒に立ち上げることになりました」 ハチドリ電力では元々、電気代の1%をさまざまな社会貢献活動に対して寄付できる「ひとしずくアクション」という仕組みを提供していました。「1% for Local」はこの対象を地域に応用したもの。生まれ故郷や、旅行先として思い入れのある地域への『推し活』も進めながら、電気を購入することができるわけです。 神鍋高原の場合、集められた基金は一般社団法人日高神鍋観光協会に渡され、地域の人々が主体となって使い道を決めていきます。現在のところ、子どもたちのためにサステナブルツーリズムを提供したり、電気自動車(EV)の観光バスを購入して地域で走らせたりといった構想が持ち上がっているそうです。 「地域共同基金の立ち上げの段階で、地元のスーパーマーケットなど地域の30拠点ほどが加入してくれました。豊岡市の世帯数が約3万世帯。そのうち5000拠点がハチドリ電力に切り替えていただけたら、年間1000万円を超える基金が集まる。そこを一つの目標にしています。 今のところ普及は簡単ではないと感じていますが、試行錯誤しながらロールモデルをつくって、他の地域にも広げていきたいです」 ところでこのサービス、一部を寄付に回す分、消費者が支払う月々の電気代が高くなりそうな気もします。この点について池田氏は、「ハチドリ電力のスタッフは10数人ほど。少人数で運営しているのでコストがそれほどかからない。個人のお客様ならひと月あたり500円という最低限の利益しか乗せておらず、電気代はむしろ安い」と強調します。 「1% for Local」のような発想からも分かるように、池田氏はビジネスを通じて社会問題の解決を目指す「社会起業家」的な側面が非常に強い人物。これまでにない新しいサービスの提供に力を入れる背景にも、現在の電力市場のあり方そのものを変えていこうという思いがあるそうです。 「どんな電力会社を選ぶのかというのは、消費者による『投票』の側面があると思っています。価格だけではなくて、それがどういう電気で、払った電気代が何に使われるかも重要です。電気という皆が使う当たり前のものの選択を変えるだけで、社会を動かしていける。そういうモメンタムを作っていける電力事業になれたらいいなと思っています」

朝日新聞 SDGs ACTION!
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