「9条掲げねば価値ない」「ミサイルよりコメ」社民・大椿裕子氏 企業も減税財源の負担を
参院選(7月3日公示、20日投開票)を前に社民党の大椿裕子副党首は産経新聞のインタビューに応じた。詳細は以下の通り。
食料品の消費税ゼロ
──参院選で訴えること
「急激な物価高に対し、生活を支えることを最優先に考えるべき。食料品の消費税率0%を実現する。『がんこに平和!くらしが一番!』を掲げている。軍拡に使われる税金を暮らしに使うことが最優先だ」
「安定した雇用と正当な賃金を得られる社会を作っていく。格差や貧困の拡大、急激な少子化も、非正規雇用の拡大に(原因が)ある。心に余裕がなくなり、外国人やマイノリティーに批判が向けられている」
──石破茂首相は消費税について「社会保障に充てられる貴重な財源だ」と述べ、減税に慎重だ
「消費税にだけなぜ社会保障の財源がよって立つのか。企業の内部留保が増えている中、法人税引き上げなどで企業に応分の負担を求めてはどうか」
現金給付は「場当たり的」
──自民党は参院選公約に国民1人当たり2万円の現金給付を挙げた
「場当たり的な感じがする。生活苦で給付は助かるとの気持ちもわかるが、根本的に日本の税制をどうしていくのか、再分配が本当に機能しているのか長期的に議論すべきだ」
──米価高騰を受け、政府の備蓄米を随意契約で放出している
「米不足は自民の農政の失敗だ。主食の米が食べられない状況はおかしい。減反政策もだが、農業で食べていけない状況が一番の問題だ。もっと作ることにシフトすべきだ。戸別所得補償制度など農家を直接的に税金で支えていくべきだ」
「『ミサイルよりコメを!』のポスターを作ったが、食べ物がなかったら生きていけない。誰もが安心して食べられる環境を整えるのが政治の責任だ」
社民党副党首の大椿裕子参院議員「お花畑と言われても…」
──憲法9条を掲げて平和は守れるのか
「原爆を投下された国が9条を捨てていいのか。掲げなければ日本の価値はない。理想主義者、お花畑と言われるかもしれないが、戦争をしないと誓ったこの国を誇りに思っている」
──戦争をしないため抑止力の重要性がある
「抑止力になっているのだろうか。中国や韓国が武力を増強すれば、私たちが不安を抱くように、日本が軍備拡大する中、かつて植民地化された韓国や中国の方は『また日本はやるのか』と不安を抱く。不安は雪だるま式に大きくなり、むしろ対立しやすくなる」
──ウクライナは核兵器放棄でロシア侵攻を招いた面がある。国の一番大事な仕事は国民の命を守ることだ
「今の国が本当に国民を守っているのか。防衛費の話をするとき『国民を守る』というが、それ以前の話だ。まともに主食も買えず、貧困だと感じる人が6割もいる。その手前のことができていない」
非戦掲げる国は攻められない
「日本は『戦争しない』という立場を強みにできていない。エッジを利かせて『うちは戦争をしません』といえば、そんな国に攻めてくるのか」
──攻めてくるのでは
「戦争が起こるリアリティーより、明日仕事を失う、食べるものがないというリアリティーの方が切実だ。そこを解決できていない中で『国民を守る』といっても、正直どうか」
「昔の自民党は戦争を知る分、近隣の国々との関係を大切にして、戦争しない国づくりを目指してきた。もっと外交に力をいれるべきではないか」
──憲法改正の必要は。合区解消や緊急事態対応は他党も前向きに考えている
「現状改憲は必要はない」
「やはり9条を変えていくきっかけ作りだ。自衛隊明記を視野に入れた上での合区解消などだと思う。注意深く見ていく必要がある」
結党80年、次代に
──自衛隊について
「私たちも自衛隊を敵視しているようなことは決してない。災害が多い中、自衛隊の方々が担ってくれる役割はとても大きい。むしろそういう存在に位置付けていくべきではないか。誰も戦争に行かせたくない。政治家として絶対にやらなければいけないことだ」
社民党副党首の大椿裕子参院議員──参院選で党勢をどう広げていくのか
「なんとか政党要件を維持できたのは、根強く党を応援してくれる方々がいるから。今年は結党80年。プレッシャーを感じながらも、先輩が築いたものをちゃんとつないでいきたい」
「高齢者に支持されている印象だと思うが、党が掲げる『平和・自由・平等・共生』に共感する若い世代はいる。差別のない社会を作り、外国人やLGBTの人権を守ろうと声を上げてくれる。市民運動とのつながりを持ってきた社民党だからこそ、そういう人たちの活動の場と政治の橋渡しができる政党にしたい」(聞き手・水内茂幸、奥原慎平)