自然界の掃除屋、大型の腐肉食動物が絶滅の危機に直面、人間にも影響が及ぶ

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 腐肉食動物(スカベンジャー)の中でも、大型種であるハイエナやハゲタカは、自然界の掃除屋とも呼ばれ、死骸を処理することで病気や水質汚染を防ぐ重要な役割を果たしている。

 だが今回、スタンフォード大学の研究チームは、世界中の腐肉食動物の約3分の1が絶滅の危機や個体数減少に直面しており、特に大型種が顕著であることを明らかにした。

 一方、腐肉食動物でもネズミなどの小型種については増加傾向にあり、この変化は自然界の生態系のみならず、人間の公衆衛生面においても、新たなリスクをもたらす恐れがあるという。 

 この研究は『PNAS』(2025年6月16日付)に掲載された。

 「腐肉食動物(スカベンジャー)」とは、動物の死体を食べて生きる動物のことだ。

 特にハイエナやハゲワシなどの大型種は死肉を食べて死骸を片付け、自然界の中で病気の広まりや水の汚染を防ぐとても大切な役割を果たしている。

 たとえば北米・南米・ヨーロッパなどでは、腐肉食動物が約75%の死骸を処理しており、アフリカではハイエナが毎年200トン以上の死骸を片付けているという。

 こうした役割を果たす動物が減少すれば、死骸が放置されることで病気のリスクが高まり、生態系全体のバランスが崩れる恐れがある。

この画像を大きなサイズで見るヒメコンドルは16km先の死体のニオイまで嗅げるという/Credit: Maya Xu

 今回の研究で、スタンフォード大学の生物学者チームは、海洋・淡水・陸上に生息する脊椎動物の腐肉食動物1,376種をリストアップ。その保全状況を国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストをもとに分析した。

 その結果、世界の腐肉食動物の約3分の1が絶滅の危機や個体数の減少に直面していることがわかった。

 対象となった腐肉食動物は200を超える分類群にまたがっており、特にメジロザメ属のサメ、ホワイトチップシャーク(ヨゴレ)、ハイエナ、ハゲワシといった大型の腐肉食動物では個体数の減少が顕著だった。

この画像を大きなサイズで見る頭足類や甲殻類、海鳥、ウミガメ、エイ、クジラなどの死骸を食べるサメ、ヨゴレ Photo by:iStock

 一方で、ネズミのような小型の腐肉食動物は、個体数が増加していることも確認された。

 研究チームはその背景として、大型腐肉食動物の減少により餌をめぐる競争が減ったことや、小型動物が都市部など人間の生活圏に柔軟に適応できることを挙げている。

 こうした小型腐肉食動物は、人間の周辺でも繁殖が進んでおり、生態系への影響に加えて人間社会への影響も無視できない。

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 小型腐肉食動物は、大型種に比べてより多くの病原体を媒介する可能性が高く、さらに人間の生活圏に近い場所に生息している。

 そのため、こうした動物の増加は今後、公衆衛生面で新たなリスクをもたらす恐れがある。

 スタンフォード大学の研究チームは、腐肉食動物の減少や分布の変化がもたらす影響について、今後もさらに注意を払う必要があると呼びかけている。

References: Pnas.org / Approximately one-third of vertebrate scavenger species may be facing population decline

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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