トランプ氏、マスク氏との政府契約打ち切り示唆-蜜月の終わり鮮明に
トランプ米大統領は5日、イーロン・マスク氏との連邦政府の契約や補助金を打ち切る考えを示唆した。かつて蜜月の関係にあった両氏の決裂が鮮明となった。
両氏の決裂を受け、テスラ株は5日の取引で14%下落。終値ベースで3月10日以来の大幅安となった。これに伴い同社の時価総額は約1500億ドル(約21兆5300億円)消失した。時間外取引でも下落は続き、ニューヨーク時間午後4時39分(日本時間6日午前5時39分)時点でさらに2.2%下げた。
トランプ氏は「われわれの予算から何十億ドルも節約する最も簡単な方法は、イーロンに対する政府補助金と契約を打ち切ることだ。バイデンがこれをやらなかったことは常に驚きだった」と述べた。
実際にトランプ氏がこうした措置に踏み切れば、マスク氏の主な収入源に大きな打撃を与えることになる。マスク氏が率いる電気自動車(EV)メーカーのテスラ、および宇宙開発企業スペースXは、連邦政府からの契約や補助金から大きな恩恵を受けてきた。
両氏はこの日、トランプ氏の看板政策である大型減税法案を巡り、非難の応酬を繰り広げた。
「政府効率化省(DOGE)」から最近退き、大型減税法案への批判を強めるマスク氏について、トランプ氏は法案に盛り込まれた電気自動車(EV)に対する税制優遇削減が不満なのだと記者団に対して発言。その上で「実に失望した」と語った。
これに対しマスク氏は「なんという恩知らずだ」とSNSに投稿。トランプ氏の発言中にリアルタイムで反論するという異例の展開をたどった。
その上で「私がいなければトランプは選挙に敗れていた。下院は民主党が掌握し、共和党は上院で51対49の議席数になっていただろう」とマスク氏は主張した。
トランプ氏はホワイトハウスでドイツのメルツ首相との会談に際し、「イーロンには実に失望した。彼のことはずいぶん助けてやった」と発言した。
マスク氏はトランプ氏の主張を否定。法案から「大量の嫌悪すべき無駄が削除されるなら」、EVの税制優遇が削減されても構わないとX(旧ツイッター)に投稿した。
今回の両氏の応酬は、マスク氏が政権への関与から退いて以降、かつて親密だった2人の関係に距離が広がっていることを物語っている。マスク氏はDOGEから離脱後、トランプ氏が「大きくて美しい法案」と評する法案への批判を繰り返している。
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トランプ減税法案では、最大7500ドル(約110万円)のEV税額控除について、今年末までに大幅な縮小・廃止が盛り込まれている。これは当初の予定より7年早い。テスラの年間利益には約12億ドルの打撃となる見込みだと、JPモルガン・チェースのアナリスト陣は分析している。
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原題:Musk, Trump Feud Explodes Into Threats and Recriminations (1)、Trump Says He’s ‘Disappointed’ by Musk Over Critique of Tax Bill , Tesla Plunges After Conflict Erupts Between Musk and Trump (2)(抜粋)