米ADP民間雇用者数、予想を大幅に下回る-2年ぶり低い伸び
5月の米民間雇用者数は2年ぶりの低い伸びにとどまり、労働需要の軟化が示唆された。ビジネスサービスや教育・保健サービスなど一部分野では雇用が減少した。
キーポイント- 米民間雇用者数は3万7000人増
- エコノミスト調査での予想全てを下回った
- 4月は6万人増(速報値6万2000人増)に下方修正
- ADPリサーチ・インスティテュートとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同で算出
ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「年初は力強いスタートだったが、雇用は勢いを失いつつある」と指摘した。
今回の統計は、頻繁に変わるトランプ米大統領の経済政策に対するここ2カ月の強い懸念が、企業の人員配置の判断に影響を与えていることを示唆している。採用ペースは減速し、失業者が新しい仕事を見つけるまでの時間も長引いている。エコノミストらは、今後数カ月で労働市場の冷え込みの兆候がさらに示されると予想している。
5月は貿易・運輸と製造業の分野でも雇用が減少。一方で娯楽・ホスピタリティーや金融業では増加した。地域別では北東部で最も雇用が失われ、企業の規模別では小規模および大規模の企業が人員を削減した。
統計発表後、トランプ大統領はパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長に再び利下げを要求した。
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ADPのデータは、政府が毎月発表する雇用統計に先立って労働市場の状況を補完的に示す指標であり、同統計の予測に役立てることを目的としてはいない。エコノミストらは6日に発表される5月の雇用統計について、非農業部門雇用者数の伸びは堅調だった4月から減速し、失業率は横ばいになると予想している。
パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当シニアエコノミスト、オリバー・アレン氏はリポートで、「いつも通り、ADPの雇用データが発するメッセージは無視するよう勧める。近年の実績が非常に悪いためだ」と指摘。「雇用者数は予想を裏切る可能性が常にある」ものの、パンテオンとしては5月雇用統計での民間部門雇用者数について11万人増との予想を維持しており、これは過去6年間の平均の伸びからのより緩やかな減速を示すものになると記した。
ADPのリチャードソン氏は発表文で、採用が鈍化している一方で賃金の伸びは依然力強いと指摘した。転職した労働者の賃金は7%増加した一方、同じ職にとどまった労働者の賃金は4.5%増だった。ADPの調査は民間部門の従業員2500万人超の給与データを基にしている。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Hiring Cools to Slowest Pace in Two Years, ADP Data Show(抜粋)