米国がEUに新たな貿易上の提案、重大な譲歩要求する内容-関係者

米国は欧州連合(EU)に対し、貿易上の新たな譲歩やその他の措置を要求している。貿易戦争の瀬戸際にあった米欧関係は最近結んだ合意で修復に向かっていたが、米国の要求はこの合意を骨抜きにしかねない内容だと、EU当局者が明らかにした。

  非公表の協議内容だとして匿名を要請した当局者によると、トランプ政権は今月初め、EUに「相互的で公平、バランスの取れた」貿易の実現に向けた新たな提案を送付してきた。

  EU当局は、米国の提案を最大限かつ重大な譲歩を求める内容だと見なしていると、当局者の一部は指摘。加盟国に対する説明は8日行われる予定であるとして、当局者は詳細を明らかにすることは控えた。

  米国とEUは、米国が輸入するEU製品の大半に15%の関税を課す合意を今夏に結び、次の段階の交渉を準備しているさなかにある。

  当局者によると、米国はEUのデジタル・テクノロジー規制や、企業のコンプライアンス、気候変動関連規則に関する協議を開始したい考え。EUはこれまで、規制の自主性の維持は譲れない一線であると繰り返し主張しているが、分野ごとに米国との協議に応じる姿勢は示している。

  米国の要求に関するコメントを求められた欧州委員会のギル報道官は、「われわれは現在、米EU共同声明の忠実な履行に注力している。この共同声明の内容は、比類なき米欧の貿易関係を維持するとともに、企業と雇用を保護する上で欠かせない」と述べ、「この声明こそが米欧の戦略的協力の基盤だ」と説明した。

  通常の勤務時間外ながらホワイトハウスにもコメントを求めたが、応答はなかった。

  双方はここ数カ月、貿易合意の履行に向け、幾つかの措置をとっていた。

  トランプ政権は欧州製の自動車に対する関税が15%で、他国・地域に課す25%ではないと確認。欧州製の医薬品も同様の扱いを受ける見込みとなっている。

  一方、EUも米国製の工業製品や特別な輸入管理を必要としない一部の農産物について、関税を引き下げる法案を提出。全体の貿易合意とともに、欧州議会の承認を待っている状況だ。

  ただ、鉄鋼・アルミニウムに米国が課している50%の関税を引き下げる交渉は、ほとんど進展していない。EUは7日、一定量を超える域外製の鉄鋼製品に対して米国と同じく50%の関税を賦課する計画を明らかにした。

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  欧州の当局者によると、米国はEU製のワインや蒸留酒などの品目を15%関税の免除対象リストに加えることに難色を示している。

  さらに、トランプ政権が50%の関税を課す鉄鋼・アルミニウムの派生製品の対象を拡大するとともに、医療機器やテクノロジーなど他の分野に対して新たな関税を用意する恐れもあると、欧州当局者は懸念。こうした動きが重なり、EUが確保したはずの15%の関税上限が事実上骨抜きにされかねないと、当局者は警戒する。

  欧州委員会のセジュルネ上級副委員長(産業戦略担当)は、今週初めのブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「米国との合意を民間セクターや世論に売り込む最大のセールスポイントは、安定だ」と述べ、「向こう4年間の安定が保証されないのであれば、この合意を『良い取引』だと主張するのは難しくなる」と説明していた。

  EUは今後、米国側の提案にどう対応し、今後の交渉をどう進めるかについて、加盟国の政治的な指針を求める予定だと当局者は説明した。

原題:EU Sees New US Trade Demands Hollowing Out Trump Deal (1)(抜粋)

— 取材協力 Suzanne Lynch and Jenny Leonard

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