「持続的幸福度」の最新の調査結果が明らかに、日本は最下位

持続的幸福は、達成する方法がさまざまであるため、人生の充実度の指標として有用だ。人生において測定が可能な要素のすべてが完璧である必要はない。(PHOTOGRAPH BY KENDRICK BRINSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

「グローバル幸福度調査(Global Flourishing Study)」という、22の国と地域の20万人以上が参加する5年間にわたる野心的な研究の最初の成果が2025年4月30日付けで学術誌「ネイチャー・メンタルヘルス」に発表された。国別で幸福度が最も高かったのはインドネシア、最下位は日本だった。また、若い人の幸福度が低い傾向が多くの国で見られた。

 以下では、この結果が意味するものや、幸福度を高めるために何ができるのかをひもといていく。

今回の調査で測った「幸福度」とは?

 米ハーバード大学のタイラー・J・バンダーウィール教授は、「真に充実した人生とは何か?」という問題を何十年も考え続けてきた。

 氏は米シカゴ大学の生物統計学者だった頃に、科学者たちが人間のウェルビーイング(健康で幸福な状態)を定義する方法やその測り方に不満を感じていた。うつ病などの臨床症状や、幸福感や不安感などの感情の状態など、具体的な指標を測る研究はたくさんあった。血圧や睡眠の質など、健康の客観的な指標や経済状況が健康に及ぼす影響も追跡されてきた。

 しかしバンダーウィール氏には、これらの指標は、人生の喜びや問題を具体的に捉えている一方で、人生の意味と目的といった、人間が本当に追い求めているものの全体像を見落としているように感じられたのだ。(参考記事:「「ストレスがない人」は幸せで健康、でも脳の調子は悪化、米調査」

 氏のチームはそれ以来、人々の心と体、スピリチュアリティー(信仰など)の状態を「フラーリッシュ(flourish、持続的幸福)」というより包括的な概念を用いて測定する手法を開発してきた。

 バンダーウィール氏は2017年の論文で、フラーリッシュを「人生のあらゆる側面が良好な状態」として定義したが、その後定義を広げ、人々が生きる状況やコミュニティー、環境も含むものとした。

 持続的幸福を達成する方法はさまざまであるため、人生の充実度の指標として有用だ。人生において測定が可能な要素のすべてが完璧である必要はないのだ。そこにはまた、人々が重視するもの(つまり人生に意味と目的を与えるもの)は、その人の最も深い価値観と共鳴するものでなければならないという視点もある。

 最初の気づきから数年、バンダーウィール氏は持続的幸福についてより深く研究するために、米ベイラー大学のバイロン・R・ジョンソン氏とともに、科学的に調整したフラーリッシュの尺度を作成した。そして、米調査会社ギャラップと米非営利団体センター・フォー・オープンサイエンス(COS)と共同で「グローバル幸福度調査」に着手した。

 今回の結果は、世界の人々の持続的幸福について、刺激的な疑問を投げかけている。

 彼らの研究は、コミュニティーの重要性を明らかにした。人々の持続的幸福度は、お互いに助け合うことで高まるのだ。論文を査読した英オックスフォード大学の開発経済学者のイアン・ゴールディン氏は、「私たちに深い満足感やウェルビーイングの感覚を与えてくれるのは、所有物やバーチャルな関係ではなく、個人やコミュニティーによる選択なのです」と言う。

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