習近平に憧れるトランプ、強権者の覇権争いでリードする習近平、3人の指導者に共通していること(Wedge(ウェッジ))

 2025年12月1日付フィナンシャル・タイムズで、ギデオン・ラックマンが、トランプと習近平、プーチンの覇権争いにつき、習近平がトランプやプーチンに比し優位な立場を維持して本年が終わろうとしていると述べている。  先般の米中首脳会談で習近平が側近に与える威圧的な影響を目の当たりにしたトランプは、「私の閣僚にもああいう態度をとらせたいものだ」と冗談を言った。トランプの政権復帰は、世界政治における強権的指導者の復活を象徴した。大国の指導者同士の二国間会談が、国際議題を左右する傾向が強まり、国連総会、20か国・地域(G20)、気候サミットなど多国間会議の重要性は低下しつつある。  プーチンは今年幾つかの首脳会談で、自らを大国の尊敬される指導者として演出した。訪印しモディ首相と会談した。9月は北京で、習近平や金正恩と共に歩いた。アラスカでトランプとも会談した。  しかし、彼は最早大国の指導者としての地位を主張できないことは明白だ。ウクライナ戦争開始から約4年、ロシア軍は依然ウクライナ東部で苦戦し、その経済は中国に依存している。  これに対し、トランプと習近平は、強権的な振る舞いを支える経済力でリードしている。執拗にノーベル平和賞を狙い続けるトランプは、軍事力の行使も辞さない。6月にはイランを空爆し、今はベネズエラを威嚇している。  しかし、「最強の強権者」の立場を維持して今年を終わりたいとの努力は、国内支持の低下の兆しにより妨げられている。共和党は最近、ニューヨーク、ニュージャージー、バージニアの選挙で敗北した。経済は順調でインフレは抑制されているとのトランプの主張は、有権者が信じていない。

 エプスタイン事件の書類公開は、トランプの弱さを示す兆候となった。書類の内容次第で、エプスタイン事件がトランプを悩ませ続けるかもしれない。  習近平はここ数年で最も強力な状況で今年を終わろうとしている。彼は危険な5年間を乗り切った。中国から発生したウィルスのパンデミックは世界的惨事を引き起こしたが、習近平は中国に責任追及が向かうのをどうにか阻止した。米国の関税措置は、中国の国際市場へのアクセスを脅かした。それでも中国は、トランプの貿易戦争に対して強硬姿勢をとり、レアアースや重要鉱物の支配力を使って米国に関税引下げを迫った。  レアアースの「武器」化は、台湾有事を巡る米国の計算をも変え得る。中国の新たな自信は、高市首相の台湾発言を機にした対日攻撃にも表れている。  強権者同士の覇権争いでは、習近平が優位に立っている。立法、司法、メディアをほぼ完全に掌握し、トランプが羨望するのも無理からぬ。中国では政府批判や混乱の兆しは稀だが、探せばそうした兆候は存在する。  権力掌握から10年、習近平は政治・軍事の指導者を異常な速度で粛清している。これは、習近平自身の猜疑心の表れか、腐敗の根強さを示している。10月の韓国でのトランプとの会談で、習近平の側近達が恐怖に満ちた表情をしていたのも無理はない。彼らの前任者の多くが最近粛清されたからだ。外相、国防相2人、将軍9人、共産党国際部幹部等だ。  一方、トランプは政敵の一人、元連邦捜査局(FBI)長官ジェームズ・コミーを投獄しようと試みたが、最近裁判所によって退けられた。これはトランプにとっては苛立たしいことだったろうが、政治制度が依然として強靭なことを示しており、良いことだ。トランプがどう考えようと、怯えた側近に囲まれる指導者は、どの国にとっても健全なことではない。 * * *

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