【日本市況】円は8カ月ぶり安値、高市氏政策にらみ売り-TOPIX最高値
8日の日本市場では円が対ドルで152円台半ばに下落し、約8カ月ぶりの安値を更新した。自民党の高市早苗新総裁の緩和的な財政・金融政策スタンスをにらんだ円売りが続いた。株式は東証株価指数(TOPIX)が続伸し、3営業日連続で終値ベースの最高値を記録。債券は下落した。
みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、高市新総裁の下で「野党との連携が意識され始めており、国民民主党と組むと財政拡張が連想されやすくなる」と指摘。円安の進行は「止まりどころがない感じになっている」と述べた。
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ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストも円の下落について、「高市トレードがまだ続いている」とし、朝方発表の毎月勤労統計が弱かったことも日本銀行の利上げ期待を低下させる要因になる可能性があると述べた。
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為替・株式・債券相場の動き-午後3時半時点- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.4%安の152円47銭
- TOPIXの終値は前日比0.2%高の3235.66
- 日経平均株価は0.5%安の4万7734円99銭
- 長期国債先物12月物の終値は前日比19銭安の135円68銭
- 新発10年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.695%
為替
円相場は対ドルで前日に1%下落した後、さらに水準を切り下げる展開。みなと銀の苅谷氏は153円、154円、155円の各大台が意識されると指摘。フランスの政治問題により対ユーロでドル高が進んでいることも、一段の円安・ドル高を促す材料になっていると言う。
加藤勝信財務相は7日、急速な円安進行に関し、為替市場における過度な変動や無秩序な動きを「しっかり見極めていく」と発言した。苅谷氏は、当局の口先介入はまだ弱いレベルだったとし、「次期政権のスタンスがまだはっきりしないので、今のタイミングではけん制を出しづらいのかもしれない」と話した。
株式
株式はTOPIXが4営業日続伸。高市氏の経済政策に対する期待が引き続き支えとなった。
りそなアセットマネジメントの下出衛チーフストラテジストは「アベノミクスの3本の矢のうち、構造改革が高市政権で実現するとのシナリオが期待されている」と指摘。「FOMO(乗り遅れることへの恐怖)で海外勢の日本買いが続いている」と話した。
日銀の利上げ観測の後退から軟調だった銀行株に見直し買いが入り、保険や証券も含め金融セクターが上昇した。機械や商社、非鉄金属なども堅調だった。
半面、前日の米国市場でハイテク株を中心に下げたことが重しとなり、半導体関連や人工知能(AI)の一角では売りが膨らんだ。米オラクルのクラウド事業の利益率が市場予想を下回っているとの報道も投資家心理を悪化させた。相場の短期的な過熱感を受けて利益確定売りも出やすく、自動車や不動産も下落に転換。日経平均株価は5営業日ぶりに反落して取引を終えた。
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みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、高市氏勝利後の興奮が落ち着き、投資家は現実を見始めているとの見方を示す。市場の思惑と高市氏が実際に実行できることには隔たりがあると指摘する。
債券
債券相場は下落。高市氏の下での財政拡張懸念に加え、円安がインフレ加速や日銀の利上げにつながるとの見方から売りが優勢だった。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「自民党が積極財政を志向する国民民主党に財務相ポストを用意しているとの観測が出ており、超長期債は買いにくい」と語る。中長期債についても、市場は円安進行によるインフレ加速と日銀の利上げを意識し始めていると指摘。金利全般に上昇圧力がかかっていると言う。
スワップ市場が織り込む年内の利上げ確率は6割台後半と前日の6割から上昇している。稲留氏は「10月は利上げがなくても12月か来年1月の可能性はあり、市場が想定する利上げ到達点も下がっていない」と指摘。あす9日に行われる5年債入札も「不安が出てきた」と述べた。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.925% 1.230% 1.695% 2.695% 3.150% 不成立 前日比 +2.0bp +2.5bp +2.0bp +1.0bp -2.0bp -この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
— 取材協力 Alice French