「反財務省」源流はアベノミクス 安倍氏を受け継ぐ保守派が減税論
7月3日公示、20日投開票の参院選は、物価高対策として消費税の減税が大きな争点になる。野党は5%への引き下げや食料品の税率ゼロを競うように訴え、与党内でも減税を求める声が消えない。減税論はどこから生まれ、日本の政治に何をもたらすのか。「減税の潮流」を読み解く。
主な内容・財政法改正に前のめりだった安倍氏・「戦後レジーム」平和主義への懐疑・積極財政派VS財政規律派・「ギリシャ」発言にかみついた高市氏
・街頭やSNSでも広がる減税論
財政法改正に前のめりだった安倍氏
2022年夏に実施された前回参院選の公示前。安倍晋三元首相は衆院第1議員会館の事務所で、自民党の西田昌司参院議員と話し込んでいた。
話題は財政規律について定めた財政法4条。西田氏は「これは米軍の占領中に作られた戦後レジーム(体制)そのものなんですよ。これを潰さない限り、財務省だって総理の言うことを聞こうと思っても、聞けないんですよ」と力説した。連合国軍総司令部(GHQ)が日本の財政自主権を取り上げるためだったというのが西田氏の持論だ。
安倍氏は「そうか、分かったよ西田さん」と賛同し、こう続けた。「参院選が終わったら財政法の改正をやろう」
しかし、公示後の7月8日、安倍氏は奈良市で応援演説中に銃撃されて死亡し、その目標は幻となった。
「今、安倍さんがおられたら間違いなく、財政法改正の話は政治課題としてやっておられたはずだ」と西田氏は悔しがる。
「戦後レジーム」平和主義への懐疑
戦後間もない1947年に施行された財政法は、4条で「国の歳出は、公債または借入金以外の歳入をもって、その財源としなければならない」と定める。国の「借金」である赤字国債発行を原則禁じる条項だ。
その目的は健全な財政運営だけでなく、憲法が掲げる平和主義とも関係する。
法制定に関わった大蔵省(現財務省)の平井平治氏は、解説書で「公債のないところに戦争はないと断言し得る。本条(4条)は憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証する」と記している。
戦前・戦中に軍事費が膨張し、国債が乱発されたことへの戒めだ。
これに対し、平和憲法を中心とする「戦後レジーム」からの脱却を持論とする安倍氏はかねて疑問を抱いていた。
首相在任中の1…