安定捨て挑戦も…2軍首位打者でまさかの屈辱 指名漏れから1年、“手応えなし”から巨人入り

 プロ野球選手になりたい……大多数の少年が必ず抱く夢を、25歳にしてかなえた。巨人から育成ドラフト5位で指名されたオイシックスの知念大成(ちねん・たいせい)外野手は10月31日、新潟市のHARD OFF ECOスタジアム新潟で巨人の榑松伸介スカウトディレクター、担当の斉藤宜之スカウトから指名あいさつを受けた。 【写真】日本に訪れた美女チア 黒髪ボブで腰フリフリ「超かわいい」 「どうしてもプロ野球に入って来たいという思いが、プレーにも現れていました。そのハングリーさを高く評価させていただきました」。榑松スカウトディレクターは、沖縄出身で“ハッスルシーサー”のニックネームを持つ熱血漢の知念をそう評した。  今夏の甲子園で全国制覇を果たした沖縄尚学高の出身で、在学当時は最速150キロを誇る左腕投手だったが、甲子園出場は果たせず。来年から巨人でチームメートとなるリチャード内野手が1年先輩だった。  高校卒業後、沖縄電力で5年間野球を続けたが、投手としては伸び悩み、途中から50メートル5秒8の俊足を生かして外野手に転向。昨年、オイシックスのイースタン・リーグ新規参入が決まると、プロへの近道と見て、安定した一流企業である沖縄電力を周囲の反対を押し切って退社し、入団に踏み切った。  オイシックス1年目の昨年は、イースタン・リーグで2軍とはいえNPB球団と戦いを重ねながら、打率.323で首位打者のタイトルを獲得。リーグ唯一の3割打者となった。安打数「129」もリーグトップ。ソフトバンク、DeNAなど数球団から調査書も届き、本人はドラフト指名に期待を寄せていた。ところが……知念にもたらされたのは、まさかの指名漏れという現実だった。  NPB球団の2軍を相手に、これだけの成績を残しながら指名漏れとなれば、心が折れそうになっても無理はないだろう。それでも知念は「すぐに気持ちを今年向けて、自分に何が足りないのかを考えました」と振り返る。

 シーズンオフに長打力アップに取り組んだ結果、今季9本塁打を放ち、昨年の4本から倍増。打点も「39」から「59」に増やし、リーグ打点王に輝いた。126安打も2年連続リーグトップ。しかし、本人は「打率が落ちてしまい(リーグ2位の.286)、調査書が届いたのも巨人だけだったので、ドラフト会議前は去年よりも手応えがありませんでした」というのが本音だった。  しかし、オイシックスの武田勝監督は、数字には表れない知念の成長を感じ取っていた。「去年は確かに首位打者を獲ったけれど、もともとピッチャーをやっていこともあって、『走塁や守備の面で緻密さが欠けていたよ』という話を本人にしました」と明かす。「具体的には、中堅守備で打球が飛んだ時に、1歩下がってしまう癖があって、前の打球が弱かった。それに、自分の肩の強さを見せたくて、カットマンに投げず、無理に本塁へ投げて、アウトを取れるところで取れないこともありました。今年はその辺りを真剣に取り組み、だいぶ向上しました」とうなずく。  ちなみに、武田監督自身も現役時代に日本ハムで通算82勝を挙げた左腕投手。東京・関東第一高、立正大、社会人野球のシダックスを経て、2005年大学生・社会人ドラフト4位で指名された時には、知念より遅い27歳になっていた。「来年2月の新人合同自主トレの段階からアピールできるように、早めに準備してほしいです」と知念の背中を押した。  前出の榑松スカウトディレクターは「イースタン・リーグを経験しているので、下地はできている。他の新人選手よりスタートラインが高い位置にあると思います。育成契約ではありますが、われわれは1年目から1軍でというイメージを描いています。今年のチームがなかなか点数を取れなかった中で、彼のバッティングに期待しています」と語る。  苦労を重ね、人一倍時間をかけてプロ野球に足を踏み入れる知念だが、結果が出なければ、1~2年にあっさりクビになることもある厳しい世界である。「なるべく早く、支配下登録を勝ち取りたいです」と、はやる気持ちを抑えるように力を込めた。

宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki

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