「同じ道を歩んだ男」ガスリーが角田裕毅に送った助言―経験者が語るレッドブル”生き残りの鍵”

直近10戦でわずか1度しか入賞できず、厳しい状況に立たされている角田裕毅。来季のシートを巡って様々な憶測が広がる中、かつて同じ境遇に置かれたピエール・ガスリーは、パドックの“親友”にアドバイスを送り続けてきたことを明かした。

2025年シーズン、レッドブル・レーシングのシートを手に入れた角田にとって、夢の実現は悪夢へと変わりつつある。RB21の特性に苦戦する日々が続き、チーム内での立場は日に日に不安定さを増している。週末ごとにシート喪失の可能性が囁かれる状況は、F1ファンなら誰もが知る「レッドブル・セカンドシートの呪い」だ。

「12戦降格」を経験した男の見方

そんな角田に手を差し伸べるのは、アルピーヌのガスリーだ。2019年、ガスリーはわずか12戦でレッドブルから系列チームのトロロッソ(現レーシング・ブルズ)へ降格された苦い経験を持つ。マックス・フェルスタッペンというF1界最強のベンチマークと同じクルマで戦う重圧を、身をもって知る男だ。

2025年F1第17戦アゼルバイジャンGPの開幕を前に、角田へのアドバイスを求められたガスリーはこう語った。

「状況はそれぞれ異なるし、対処法も人それぞれだと思う。各々、そしてアスリートとして性格や、何が自分に合って、何が合わないのか、どんなサポートや環境が必要なのかによると思う」

ガスリーと角田の関係は、アルファタウリ(現レーシング・ブルズ)時代の元チームメイトという枠を超えた固い絆で結ばれている。その絆が、今まさに角田を支える力となっている。

「当然、この手のことは、ユーキとかなり率直に話し合ってるよ。僕らの関係は良好だしね。ただ、最終的には、彼自身がパフォーマンスに集中するための最良の方法を見つけなければならないと思う」

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ドライバーズパレードで談笑するマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年5月25日(日) F1モナコGP(モンテカルロ市街地コース)

ガスリーのアドバイスの核心は、極めて実践的だ。感情論ではなく、冷徹なパフォーマンス重視の姿勢を貫くことの重要性を説く。

「結局のところ、競技スポーツで重要なのはパフォーマンスだけなんだ。今抱えている制約の中で、自分のスキルを最高の形で発揮する最良の可能性を見つけ出さなきゃならない」

F1パドックは噂と憶測が渦巻く場所だ。特にレッドブルのようなトップチームでは、メディアやファンからの大きな注目が、ドライバーの精神状態に深刻な影響を与える可能性がある。ガスリーは自身の経験を通して、周囲の雑音に惑わされず、ひたすらラップタイムとリザルトで証明することの重要性を痛感している。

「常にいろんな噂や雑音が飛び交うけど、それを遮断する方法を見つける必要がある。それが何より重要だと思う」

「毎朝『自分のやっていることをどうすればもっと良くできるか』と考えて起きるべきであって、状況が良い時であれ悪い時であれ、それが前に進むための唯一の問いなんだ」

Courtesy Of Red Bull Content Pool

グリッド上でヘルムート・マルコと話をするレッドブル・ホンダのピエール・ガスリー、2019年F1ドイツGPにて

角田にとって、これからの数戦はまさにキャリアの岐路となる。レッドブルでシートを維持するには、言葉ではなく結果で証明するしかない。

「彼がシーズン末までなんとか乗り切ってくれることを願ってるよ」というガスリーのエールには、かつて“12戦降格”を経験した自らの姿を重ね合わせる共感と、厳しい現実を直視する冷静な視点が入り交じる。

角田はこの正念場をどう乗り越えるのか──親友であり先達のガスリーもまた、固唾を飲んで見守っている。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

並んで歩くアルファタウリのピエール・ガスリーと角田裕毅、2021年12月12日F1アブダビGPにて

F1アゼルバイジャンGP特集

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