「救助費用を請求しろ」閉山中の富士山で1週間に2度救出された中国人大学生に非難殺到…埼玉ではヘリ費用の一部負担後に事故減少も 問われる“登る側の責任”

静岡・山梨両県と静岡県警の話を総合すると、大学生は4月22日、静岡側から富士山へ入山し、山頂付近から「アイゼンを紛失して下山できない」と静岡県内の消防に通報した。 静岡県の防災ヘリが整備中だったため協力協定を結ぶ山梨県の防災ヘリが出動し、大学生を吊り上げて救出した。  ところがその4日後の26日、富士宮口8合目にいる登山者から「人が倒れている」と通報があり、このときは静岡県の防災ヘリと静岡県警山岳遭難救助隊が現場に向かった。 強風でヘリによる収容ができず、救助隊員が男性を担架で5合目まで下ろし病院へ搬送した。  地元記者は言う。 「この男性が22日に救助された大学生だと分かりました。日本語は少し通じ、吐き気などの高山病の症状を訴えていました。『(22日に)救助された際に携帯電話や荷物を残してきたため回収しようとした』と話しています」(地元記者) 日本気象協会によると4月22日の富士山山頂の最低気温は-4.5度。26日には-13.2度まで下がった。春が訪れたふもととはまるで違う厳しい環境だ。 富士山の山開き期間は7〜9月で、「今は5合目までは車で行けますが、登山道は閉鎖されています」と地元の富士宮市観光協会は説明する。 もっとも、閉山中に登ろうとする人も多い。 これは違法ではないものの、環境省の担当者は「期間外の登山は登山届を提出し、冬山に耐えられる十分な装備を備えることなどが求められます」と話す。 ただ、登山届の提出は義務ではなく閉山中の登山者の数はわからない。この大学生も登山届を出していなかった。 これに国立登山研修所(富山県立山町)は「入山届(登山届)は任意で、装備が不十分な人が遭難して救助されたとしても法的なペナルティはありません」と説明する。 また、静岡県警も「救助された大学生は冬山に対応するある程度の装備は備えていましたが、しっかり準備しても体調不良や落石などで遭難することはあります。遭難者を安全に救助することはわれわれの使命だと思って対応しています」(地域課)と冷静だ。 一方SNSで目立つのは「救助費用を請求するべき」との声だ。レジャーである登山が原因となる人命救助の費用はどう考えればいいのか。 山岳遭難で最初に捜索に動くのは警察や消防で、遭難者側に費用負担を求めることはない。今回も静岡県警は「そもそも救助費用の算定はできません」との立場だ。 ただ警察や消防で対応しきれないケースもある。山岳遭難の捜索・救助を行なう民間組織「山岳遭難捜索ネットワーク」によれば、警察や消防の捜索は基本的には3日から長くても1週間程度しか行なわれない。 その期間に発見できないなどの場合に、遭難者の家族や知人の依頼を受け同ネットワークのような民間組織が捜索を担うことになる。 「捜索費用は一概には言えませんが、捜索人員1人につき1日で5万円の人件費や必要経費がかかってきます。遭難者の登山ルートがわかっていて捜索範囲が絞り込める場合でも50万〜100万円、手掛かりが少ないなど条件が悪くなればより多額になります。 こうした支出に備えるために山岳保険があり、登山をする人は捜索費用をカバーする保険の加入を積極的に考えてほしいですね」(同ネットワーク)

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