驚異の支持率82%「高市ブーム」に石破前首相が本音 「国民にウケることだけが、必ずしも国のためになるとは限らないのでね…」
高市首相の外交ウィークは就任からわずか5日後、マレーシアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に始まった。以降、トランプ米大統領(79)を日本に迎え、韓国で日韓、日中首脳会談に臨み、さらにはアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議まで怒濤の日程をこなした。 明海大学教授の小谷哲男氏はこう評価する。 「10月28日の日米首脳会談で高市首相はトランプ大統領に防衛費増額の方針を伝えながら、親密な雰囲気を醸し出すことに成功しました。米原子力空母にも大統領と共に乗艦し、日米同盟の結束を示しています。外交デビューとしては、上々の滑り出しといえるでしょう」 もっとも、首相が空母上で米兵の歓声に応えて拳を突き上げながら飛び跳ねた上、トランプ氏に抱き寄せられる場面まであったことには異論も出た。日中首脳会談においても、目立った成果があったとは言い難い。
しかし、そうした指摘はあまり聞こえてこない。そこが現下の高市政権の際立ったところだというのだ。 「各社の世論調査で政権支持率が軒並み高い。首相は“ご祝儀相場や”と平静を装うものの、もはや『高市ブーム』というべき様相で、正直、外交成果を冷静に検証する空気ではないことに助けられています」(政府関係者) 支持率は、TBSの調査で驚異の82%を記録。2001年以降の歴代政権発足直後の数字としては、小泉内閣の88%に次いで2番目に高く、石破内閣の52%を大きく引き離している。 政治部記者の話。 「SNSでは高市首相を応援する活動について、いわゆる『推し活』をもじって『サナ活』と呼ぶ動きも出ています。首相が愛用するボールペンやカバンの銘柄が割り出されて注文が殺到し、その現象がまたニュースで話題になるという異例の情況なのです」
Page 2
ノンフィクション作家の石戸諭氏はこうした「高市現象」について、次のように見ている。 「岸田文雄元首相(68)と石破茂前首相(68)の2代にわたり、政府の物価高対策は十分な成果を上げられませんでした。30〜40代の現役世代や子育て世代には不満が蓄積し、自民党離れが進みました。その結果、国民民主党や参政党が支持を伸ばしたのです。こうした状況下で、積極財政路線を掲げる高市首相に期待が集まり、事実上の政権交代が起きたと見ることもできるでしょう」 選挙コンサルタントの大濱崎卓真氏もこう分析する。 「高市首相の支持率が石破首相時代よりも格段に上昇した理由の一つに、保守層が参政党や日本保守党支持から自民党支持に回帰した可能性が挙げられます」 大濱崎氏の調査によると、石破内閣発足直後の支持率は自民党支持層で58%、参政党支持層で16%、日本保守党支持層になると4%にとどまっていた。 しかし、高市内閣発足後は自民党支持層が82%まで回復。参政党支持層は77%、日本保守党支持層も86%といずれも大幅な上昇を記録した。無党派層でも石破内閣では25%にとどまった支持率が、高市内閣では60%まで急上昇している。
ここまで期待値が高まると、結果が出ない場合の反動が心配、といったぜいたくな悩みも聞こえてくる。何せ物価高は簡単にどうにかできるものではないし、減税をすればどこかで賄う必要が生じる。自然な増収でカバーできない場合、結局「痛み」は国民に回されるのだ……。 石破前首相はどう言うか。本人に聞くと、淡々とこう答える。 「どの政権でもそうでさ、期待値と実績は違う。国民にウケることだけが、必ずしも国のためになるとは限らないのでね……」 実際、政権の先行きは不安視されてもいる。いくら人気が高くても、高市政権が少数与党であることには変わりなく、政策実現には野党の協力が不可欠で、難しい国会運営が待ち構えている。しかも、高市首相は、安倍政権で首相秘書官を務めた今井尚哉(たかや)内閣官房参与(67)を指南役と頼っており、そのアドバイスの下、現状、外交面では中国、韓国とうまくやっていく現実路線を取ろうとしている。すなわちそれは、高市ブームの屋台骨となっている岩盤保守層からいつ何時、反発を招くやもしれぬ危険性もはらんでいるのだ。11月6日発売の「週刊新潮」では、異常ともいえる「高市現象」の背景に迫る。
新潮社