英仏独ウクライナの4首脳、ロンドンで会談 ゼレンスキー氏は領土問題に懸念

画像提供, ウクライナ大統領府

画像説明, (左から右へ)ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、イギリスのキア・スターマー首相、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、ロシアのウクライナ戦争終結を目指す和平交渉について協議するために集まった(8日、英首相官邸)

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日、ロンドンの英首相官邸を訪れ、英仏独の首脳たちと会談した。4カ国の首脳は、ウクライナとアメリカの当局者が共同で作成した最新のロシアとの和平案について協議した。欧州の指導者たちは「今こそ」、ロシアに戦争を終えるよう経済的な圧力をかけ、ウクライナ支援を強化する必要があると強調した。ゼレンスキー氏は修正和平案について、最もウクライナに不利な項目は削除されたが、領土問題についての妥協点は見つかっていないと記者団に話した。

アメリカがウクライナに対し、ロシアと速やかに合意するよう迫る中、キア・スターマー英首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、フリードリヒ・メルツ独首相が英首相官邸に集まり、ゼレンスキー氏と会談した。

欧州の首脳たちは、ウクライナに対する安全保障の保証を得るため、いっそうの取り組みが必要だと述べた。ゼレンスキー氏はその後、ブリュッセルに移動し北大西洋条約機構(NATO)の当局者と会談。9日にも、修正和平案をアメリカと共有すると話した。

ロンドンでの会談後、記者団の質問に答えたゼレンスキー氏は、「最もきわめて反ウクライナ的だったポイントは確実に削除された」と述べた。しかし、領土割譲に関する懸念が残っており、「そこではまだ妥協点が見つかっていない」と認めた。

「アメリカは原則論として、なんとか妥協点を見つけようとしている」のだと、ゼレンスキー氏は述べた。

ゼレンスキー大統領はさらに、和平合意が成立した場合、ロシアによる将来の攻撃を抑止するため、ウクライナが求める安全の保証問題はまだ解決されていないとも話した。

4首脳の会談後に英首相官邸の報道官は、「首脳たちは、欧州の安全保障にとってアメリカ主導の和平交渉の重要性を議論し、進展を支持した」、「今こそきわめて大事な時期で、この野蛮な戦争を終わらせるため、ウクライナへの支援とプーチンへの経済的圧力を強化し続けなくてはならないと、首脳たちは一致した」と声明で述べた

官邸はさらに、「(首脳たちは)ウクライナにおける公正で持続的な平和の必要性を強調した。それには、安全保障の強固な保証が含まれる」と付け加えた。

ウクライナの交渉団は先週、米フロリダ州でアメリカの交渉団と3日間にわたり協議を重ねた。アメリカが提示し、ロシア寄りと広く見なされている和平案の修正を、ウクライナ側は求め続けた。

アメリカは、ロシアが武力で奪おうとしている東部地域からウクライナ軍が完全撤退するよう提案している。ただし、ロシアはその地域を完全には占領できていない。アメリカの案では交換条件として、ロシアが他の地域から撤退し、戦闘を停止するよう求めている。

しかし、ゼレンスキー氏にとってこの条件は受け入れがたいものとなっている。ゼレンスキー氏はロシアの侵略行為に報奨を与えるようなことはしないという立場を堅持し、ロシアがウクライナ東部に足がかりを手に入れれば、将来の攻撃に利用するはずだと繰り返し警告してきた。

首相官邸での会談前にスターマー首相は、和平合意には「安全保障の厳格な保証」が必要だと述べた。

メルツ首相は、アメリカ側から出ている和平案について、一部の詳細を「懐疑的」に受け止めていると述べた。「しかし、(和平案について)話し合う必要がある。私たちはそのために、ここにいる」とも付け加えた。

会談後にフランス政府は、安全の保証をウクライナへ提供するための作業を「強化する」と述べた。

他方、交渉の進展の遅さにアメリカが不満を抱き、ウクライナへの支援を打ち切る可能性があるとの懸念が、ウクライナと欧州全体に広がっている。

「私たちはアメリカなしではやっていけない。欧州なしでもやっていけない。だからこそ重要な決定を下す必要がある」と、ゼレンスキー氏はロンドンで述べた。

ホワイトハウスはウクライナとロシアの両政府に対し、多項目にわたる戦争終結のための計画に迅速に合意するよう圧力をかけ続けているものの、突破の兆しはほとんどない。

その後にルステム・ウメロフ氏率いるウクライナ交渉団が、フロリダ州マイアミで3日間にわたってアメリカ側と協議を続けた末、「進展」という、あいまいながらも前向きな声明を双方が出した。

しかし、トランプ氏は7日、ゼレンスキー氏が修正和平案の草案を読んでいないと非難。「ゼレンスキー大統領がまだ提案を読んでいないことに、少しがっかりしている」とトランプ氏は述べたうえで、プーチン氏は「(修正案で)問題ないそうだ」と主張した。

この発言とほぼ同時に、ゼレンスキー氏は、ロンドンまたはブリュッセルで8日にウメロフ氏から交渉について報告を受ける予定だと説明。「直接会って話すしかできないこともある」と、ゼレンスキー氏は述べていた。

戦争終結に向けたアメリカ主導の取り組みに対して、欧州諸国は一定の役割を果たそうとしており、8日のロンドンでの首脳会談もそのあらわれだった。英仏独をはじめとする欧州諸国には、アメリカの仲介が素早い解決を優先し、欧州の長期的な利益を損なうかもしれないと懸念する声がある。

ロシアはウクライナ全面侵攻を通じて、大きな経済的圧力を受け、戦場でも多大な損害を出し続けている。それでもクレムリン(ロシア大統領府)は、ウクライナのNATO加盟を完全に阻止することを含め、主要な要求について妥協する意思をほとんど示していない。

プーチン氏は4日に改めて、ウクライナ東部のドネツクとルハンスク両州を完全に掌握するまで戦闘を続ける意向を表明した。ロシア軍は現在、その85%を占領している。

7日から8日にかけては、ロシア軍がドローン、滑空爆弾、ミサイルを使用してウクライナの9地域を攻撃。10人が殺害され、47人が負傷した。

ロシアによるウクライナへの全面侵攻は2022年2月に始まった。それ以来、甚大な数の民間人と兵士が死亡または負傷し、ウクライナの都市はほぼ毎晩、砲撃を受け続けている。

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