”eSIM専用”のiPhone 17シリーズ、大手4キャリアのeSIMにまつわるコストを徹底比較
iPhone 17シリーズおよびiPhone Airが「eSIM専用」仕様になったことで、eSIMへの注目がにわかに高まっています。eSIMは、時間や場所を問わず、簡単に利用を開始でき、抜き取られてしまうおそれがないぶん、セキュリティも高まる一方で、物理的なSIMカードとは違い、入れ替えにはひと手間かかるのも事実です。
iPhone同士、Android同士では端末上の簡単な操作でできる転送の仕組みが整いつつありますが、プラットフォームをまたがった場合にはプロファイルの再発行も必要になります。注意したいのは、この際に手数料が発生してしまうケースがあること。そこで今回は、大手キャリアのeSIMにまつわるコストをまとめていきます。
今使っている端末から新しく購入した端末にeSIMを移し替える場合、いくつかのパターンが存在します。1つ目は、端末をキャリアで購入する場合。このケースは、「機種変更」として扱われて、購入した端末がユーザーの情報とも紐づくため、物理SIMと同様に機種変更手数料が発生します。
手数料はキャリアごとに異なりますが、キャリアショップや家電量販店など、リアルな店舗を利用した場合は次のとおり。ドコモは4950円、auは3850円、ソフトバンクは4950円になります。
なお、ソフトバンクの場合は、PayPayカード割が適用されていると、1100円分のPayPayポイントが付与される特典があり、これを加味すると実質的な手数料は3850円まで下がります。
各社とも店頭では一律に手数料が発生しますが、オンラインショップだと、同じ機種変更でも対応にはばらつきがあります。まず、ドコモはオンラインショップの手数料を無料にしているため、元々は無料だったソフトバンクは、8月の改定で料金がかかるようになり、機種変更は3850円。特典を加味すると実質2750円になります。
ドコモ、ソフトバンクともにオンラインショップは無料にしたり、店頭よりも安めにしている一方で、auは店頭と同じ3850円の手数料がかかります。値上げした2社に比べて手数料の水準は安いものの、オンラインショップという点ではもっともコストがかかる点には注意が必要になります。
これらのケースは、機種変更として扱われるため、eSIM専用機種であろうが、そうでなかろうが、料金は変わりません。ドコモのオンラインショップを除けば、数千円の手数料がかかることは念頭に置いておいた方がよさそうです。
なお、楽天モバイルはそもそも機種変更手数料を取っていないため、いずれのケースでも料金はかかりません。
次のケースが、iPhone 17シリーズやiPhone Airなどの端末を単体で購入して、自らeSIMのプロファイルを移す場合。従来だと、SIMカードを移すだけだったので、上記のような機種変更の手数料はかかりませんでした(SIMカードの変更や契約種別の変更がなければ)。
一方で、eSIMの場合、プロファイルの発行をキャリアに依頼する必要があるため、完全にセルフで機種変更することができません。
オンラインで手続きする想定の場合、次のような手数料がかかります。まず、ドコモはオンラインショップと同じ扱いで手数料は無料。auも、SIMカードからeSIMへの移行はeSIM再発行と同じになり、料金はかかりません。
2社とも、SIMカードと同様、無料でeSIM専用端末にプロファイルを移行することができます。楽天モバイルも、eSIMの再発行は無料です。
これに対し、ソフトバンクの場合には少々扱いが異なります。ソフトバンクもeSIM再発行の手数料は無料にしていますが、これは、同じ端末に再度eSIMを発行する場合の手続きを意味しています。eSIMのプロファイルを誤って削除してしまった場合などを指しており、機種変更には適用されません。
現在利用中の端末とは別の端末にeSIMを移行する場合には、持ち込み端末の機種変更という扱いになります。その際にかかるのは、機種変更の手数料。先に挙げたように、オンラインショップの場合、その金額は3850円になります。PayPayカード割の特典を加味しても、2750円かかる点は、他社との大きな違いと言っていいでしょう。
端末を自ら買ってプロファイルを移すだけにも関わらず、手数料がかかってしまうのです。eSIMのプロファイル発行にも一定のコストがかかっているとはいえ、通常の機種変更に比べればソフトバンク側の手間は少ないはず。金額を安くするなどの配慮はしてほしいものです。
衝撃的なのが、複数の端末でeSIMのプロファイルを移し替えながら使う場合。例えば、機種変更前に使っていた端末に、少しの間だけ回線を戻して使いたいといったケースです。機種変更したものの、データ移行が間に合わず、とりあえずセットアップをやめて、その日だけは前の機種を使うといった経験をしたことがある人はいるでしょう。
この場合、いったん旧機種にeSIMプロファイルを戻すと、そこで手数料が発生。さらに新モデルにeSIMを移し替えると、ここでも手数料がかかります。往復で手数料がかかってしまうというわけです。これだと、気軽に機種を入れ替えて使うことができません。ただし、例外もあります。それが、「eSIMクイック転送」です。
eSIMクイック転送とは、端末上でeSIMのプロファイルの再発行を依頼し、新しい端末でそれをダウンロードする仕組みのこと。あたかも写真や動画などのデータを転送しているかのように見えるため、こうした名前がつけられています。
実際にはキャリアのシステム側でeSIMのプロファイルを発行している仕組み上、現状だとこれを利用できるのは、大手キャリアとごく一部のMVNOに限定されています。
eSIMクイック転送はiOSの名称ですが、Androidにも近い仕組みはあり、「Android eSIM転送」などと呼ばれています。これを使ってeSIMを新しい端末に移した場合、4キャリアとも料金は無料になります。
ドコモ、au、楽天モバイルはもともと、単体で購入した端末へのeSIM再発行は無料でしたが、ソフトバンクもこの仕組みを使う限り、料金はかからないというわけです。
ただ、オンラインで手続きすると料金がかかる一方で、eSIMクイック転送を使えば無料というのは、やや分かりづらい印象もあります。同じeSIMの移行でも、手続きする場所によって価格が変わってしまうからです。二重価格になっている点は、率直に言って分かりづらいと感じています。
また、現状だとeSIMクイック転送はiOS同士、Android eSIM転送はAndroidの一部機種同士でしか、eSIMのプロファイルを移行できません。簡単に言えば、ソフトバンクで無料になるのは、iPhoneからiPhone、AndroidからAndroidに移ったときだけ。AndroidからiPhoneにしたり、iPhoneからAndroidにした場合には転送ができず、手数料が発生してしまいます。
特定のプラットフォームにユーザーをロックインする効果が出てしまうと言えるでしょう。機種変更時にかかる一時的な手数料はまだしも、端末を移し替えるだけで料金がかかってしまうとなると、eSIMのデメリットが際立ちます。物理SIMのように気軽に入れ替えられるよう、改善が必要と言わざるをえません。
iOS 26やAndroid 16のPixelの一部には、プラットフォームをまたがってeSIMを転送できる機能が用意されています。おそらく、これを無料で利用できるようになれば、プラットフォームへのロックイン効果は弱まります。よりSIMカードのように、簡単に入れ替えができるようになるのはユーザーとしても歓迎できる話。
現状、Androidの対応機種が一部しかないという課題はあるものの、キャリア側の早期対応に期待したいところです。