NY市場サマリー(14日)米国株まちまち、ドル下落・利回り低下 米中貿易摩擦懸念
<為替> ニューヨーク外為市場では、米中貿易摩擦の再燃を巡る懸念を背景に、ドルがスイスフランや円などに対して下落した。ユ-ロはフランス政府が年金制度改革の一時停止を発表したことを受け底堅く推移した。
バノックバーン・キャピタル・マーケッツのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「米中の貿易摩擦が緩和に向かっていると信じた人は多かったが、実際には明らかに緩和に向かっていない」と指摘。FXストリートのシニアアナリスト、ジョセフ・トレビサーニ氏は「今回のラウンドは中国が始めたものだが、応酬が続けば長期的には米中いずれの国益にもかなわない」と述べた。
終盤の取引でドル/円は0.37%安の151.71円。ドルはスイスフランに対しても下落し 、0.37%安の0.801スイスフラン。前日の取引ではドルは双方に対し上昇していた。
ユーロ/ドルは0.33%高の1.1606ドル。フランスのルコルニュ首相は、マクロン大統領が進めてきた年金制度改革を2027年に予定される大統領選後まで停止すると発表。28年1月まで退職年齢の引き上げを行わない方針も示した。バノックバーンのチャンドラー氏はフランスの財政政策について「前政権ほどの財政緊縮にはならない」との見方を示している。
NY外為市場:
<債券> 米金融・債券市場では、国債利回りが低下した。米中貿易摩擦を巡る懸念でリスク選好度が下がったほか、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長がこの日の講演で引き続き利下げの方針を示唆したことを受けた。
米国と中国は14日、相互の船舶に対し、港湾使用料の追加徴収を開始することを明らかにした。
これを受け、30年米国債利回りは取引時間中に4.59%まで低下し、市場がトランプ大統領の一連の追加関税発表への対応に追われていた4月8日以来の最低水準となった。
国際通貨基金(IMF)は14日、最新の世界経済見通しを公表した。関税の影響や金融環境が当初の想定より穏やかだったとして、2025年の世界のGDP(国内総生産)成長率予想を上方修正した。
その後、利回りは一時的に低下を反転させた。ペンシルベニア州バーウィンのブリン・マー・トラストの債券部門ディレクター、ジム・バーンズ氏は「米中貿易を巡る現時点での悲観論の一部は、IMFによる米国経済の見通し改善によっていくらか相殺される可能性があると市場は判断した」と述べた。
米金融・債券市場:
<株式> 米国株式市場は、銀行決算や米連邦準備理事会(FRB)議長講演、米中貿易摩擦などを消化する中、強弱まちまちで取引を終えた。
S&P総合500種は、トランプ米大統領が食用油などについて中国との取引打ち切りを検討していると述べたことを受けて下げに転じた。
トランプ氏は10日、中国からの輸入品に100%の追加関税を課すと警告したが、週末には強硬姿勢を和らげていた。
ベアード・プライベート・ウェルス・マネジメントの投資ストラテジスト、ロス・メイフィールド氏は「市場はこの状況がどうなるのか見極めに苦戦している」とし、「(トランプ)政権が再び緊張を高めようとしているなら、特に100%の関税やその他の措置が再び検討されている場合、足元の相場はそうした対立にはかなり割高に見える」と述べた。
一方、米銀の堅調な決算を受けてS&P500銀行指数<.SPXBKは上昇した。
米国株式市場:
<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、米中貿易摩擦激化を巡る懸念を背景に安全資産としての金が買われ、3営業日続伸し た。
中国商務省は14日、韓国造船大手ハンファオーシャンの米国子会社5社に対し、中国との取引を禁じる制裁を科すと発表した。中国への制裁につながる米政府の対中調査に協力したためとしている。米政府は14日、調査結果を受け、米国に入港する中国船の運航事業者から巨額の手数料の徴収を始めた。中国交通運輸省は報復措置として米国船を対象 に「特別港務料金」を課すと表明した。これを受けて、米中貿易摩擦激化を巡る懸念が強まり、安全資産としての金が買われた。
また、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ方針が維持されるとの根強い期待 も金相場を支えた。パウエルFRB議長は14日、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで講演し、政府機関の一部閉鎖が続くが、幅広い指標や情報は依然入手できており、そ れらを踏まえれば「雇用とインフレの見通しは9月の前回会合時点とさほど変わっていないようだ」との見方を示した。
NY貴金属:
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米中対立激化への懸念がくすぶる中、需給の緩みへの警戒感を背景に、反落した。
中国商務省は14日、韓国造船大手ハンファオーシャンの米国子会社5社に対し、中国との取引を禁じる制裁を科すと発表した。中国への制裁につながる米政府の対中調査に協力したためとしている。一方、米政府は14日、米国に入港する中国船の運航事業者から巨額の手数料の徴収を始めた。これに対し、中国交通運輸省は報復措置として、米国船を対象に「特別港務料金」を課すと表明した。これらを背景に、米中対立激化への警戒感が再燃し、原油は売られた。
世界的な供給過剰懸念も相場を下押した。国際エネルギー機関(IEA)は14日公表の月報で、今年の世界の石油供給量は日量300万バレル増と、前回予想から引き上げた。来年に関しては、供給量の伸びはさらに拡大すると見通した。石油輸出国機構(OPEC) 加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」やその他産油国の増産などが背景という。一方、今年の世界需要の伸びを前回予想から下方修正した。
NYMEXエネルギー:
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