11個の超巨大ブラックホール集団を発見、存在確率はほぼゼロのはずだが、その特異な領域とは?(スペースチャンネル)

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出典:国立天文台/SDSS; Liang et al.

宇宙にこれほどの密集は見たことがありません――。国立天文台や東京大学などの国際研究チームが、くじら座の方向、約108億年前の宇宙で11個もの超巨大ブラックホールが密集する領域を発見しました。これまでに確認された中で最も密集した超巨大ブラックホールの集団であり、宇宙の構造形成やブラックホール成長の理解に新たな謎を投げかけています。

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まるで「宇宙のヒマラヤ」

超巨大ブラックホールは、周囲のガスや物質を猛烈な勢いで飲み込み、莫大なエネルギーを放つため「クエーサー」と呼ばれています。クエーサー同士の間隔は通常、最盛期でも数億光年と離れているもの。しかし今回見つかった構造は、直径約4000万光年という狭い範囲に11個のクエーサーが集まっていました。

偶然にこの密集が起こる確率は、10の64乗分の1未満(ほぼゼロ)とされています。研究チームを率いた国立天文台ハワイ観測所のリャン・ヨンミン特任研究員は、「これは単なる偶然ではなく、ブラックホールが宇宙の巨大構造の境界に沿って成長している証拠です。私たちはこの構造を“宇宙のヒマラヤ”と呼んでいます」と語っています。

宇宙の常識が覆る?

「宇宙のヒマラヤ」。黄色の×印はクエーサーの位置 出典:国立天文台 / SDSS, Liang et al.

驚くべきことに、このクエーサー集団は銀河が最も密集する場所ではなく、2つの銀河集団のちょうど中間に位置していたのです。さらに、周囲のガス分布を解析した結果、中性ガスと電離ガスの境界という特異な領域にあることも判明しました。クエーサーが放つ強い光が周囲のガスの状態を変えていると同時に、形成中の巨大構造――たとえば銀河団の“種”を示している可能性があるとのことです。

従来、ブラックホールは銀河が密集している領域で成長が活発になると考えられてきました。銀河同士の衝突や合体がガスを中心へ送り込み、それがブラックホールの成長を促すからです。

しかし今回の発見は、その考え方に一石を投じるものです。これほど活発なブラックホールの大集団が銀河の外れにあり、さらにガスの境界領域に存在しているとは予想外の発見です。宇宙でも特別な場所か、あるいは特別な瞬間を捉えているのかもしれないとのことです。

次なる観測へ

すばる望遠鏡を納める円筒形ドーム 出典:Denys (fr)

研究チームは今後、すばる望遠鏡に新たに導入された超広視野多天体分光器(PFS)などを使い、さらに詳細な観測を進めていく予定です。今回の発見が、初期宇宙における銀河団やブラックホール形成のシナリオに新たな視点をもたらすことは間違いありません。

「宇宙のヒマラヤ」の謎は、これからどんな物語を語ってくれると思いますか?ぜひ皆さんからのコメントお待ちしています。

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