2026年は時代の転換点に…バランスを崩した米国と世界、三権分立でトランプの暴走を止められるか?(Wedge(ウェッジ))
リチャード・ハースが2025年を振り返り、2025年12月29日付 Project Syndicate に「バランスを崩した米国と世界」との論説を書いている。 2025年、米国内では、長期の政府閉鎖、38兆ドルを超える国家債務、AIが生み出す経済成長での失業と格差とインフレ、政治暴力、不法移民の強制送還と南部国境閉鎖、ロサンゼルス等への州兵派遣、大学や多様性への攻撃、大規模輸入関税、国際開発庁(USAID)を含む公的雇用の削減、科学研究への予算削減等が行われた。 外交政策上は、米国はイランの核施設をイスラエルと共に攻撃し、ガザでは不安定な停戦、ウクライナ戦争の和平提案は失敗、米ロの接近と欧州を遠ざけることをもたらした。米国の軍事力はベネズエラ近くに展開され、麻薬を運んでいるとされた20隻以上の船舶が攻撃された。カナダ、グリーンランド、パナマ、コロンビアの主権はトランプに脅かされた。 米国は世界保健機関(WHO)と気候変動と戦う世界的努力から脱退した。民主主義と人権を推進する努力はほぼ消滅した。 結果、2025年、国内でも外国でも大きな力の不均衡が現れた。国内では第2期トランプ政権は行政権の優越で際立った。トランプは、独立した判断をすべき公務員を解雇したり、その意思を曲げさせたり、政治的な敵と考えた人に法的報復を加えた。大きな舞踏場のためにホワイトハウスの東翼を突然ブルドーザーで壊したこと、ケネディ・センターの突然の名称変更は正当な手続と礼儀を拒否した象徴である。
同様に目立つのは大統領を抑える議会共和党の意思の欠如と最高裁が彼に示した敬意である。 フランクリン・D・ルーズベルト(FDR)以来、いかなる大統領もこのような支配力を振るった大統領はいない。FDRは大恐慌と第2次世界大戦のせいにできたが、トランプは何の緊急事態も引き継いでいない。彼は単に物事をなし、他の人が黙認したのである。 トランプの制約のない大統領制は米国の政治的伝統にそわない。米国の政府と民主主義にとり中心的なのはチェックとバランスの考えであり、連邦政府の三分野が共同で統治し、一分野が支配しないことを確保する。しかしそうはならなかった。 対外的にはトランプは西半球に先例のない焦点を当てた。この戦略は米国を欧州とアジアの同盟国から遠ざけ、ロシアと中国に近づくことを意味する。結果として力のバランスは最近まで現実または潜在的対立者とみられていた国に有利なように変わった。 将来を見ると、最高裁がトランプ関税にどういう判断を下すか、議会の共和党員がトランプ離れを起こすかが重要である。もっと重要なのは26年11月の中間選挙である。 トランプの支持率が低いと、民主党が議席を増やし少なくとも下院の多数を得る可能性がある。そうなれば議会は大統領府が求める法案を否決する能力を獲得し、政権を調査する権限も得られる。トランプはそれを避けたいだろう。問題は選挙が自由で公正に行われるかである。 アジア太平洋では、米国の友人と同盟国、特に台湾の側に立つためのトランプの意思についての疑念がある。26年春、トランプの中国訪問が予定されているが、米国の貿易赤字を減らしたいとの願望が、世界の未来にとり重要な地域での力の均衡を維持することより重視されることになりかねない。 バランスを崩したシステムは、よりバランスを崩すか、新しいバランスに至るかである。トランプが何を望むか、なしうるかはこの進化を決定する上で重要で、それでこの時代の歴史も決定される。そういうことなので、26年は米国と世界にとり転換の年になることが約束されている。 * * *