FRB7月利下げ遠のく、予想外に強い雇用統計-脆弱さも見え隠れ
6月の米雇用統計はヘッドラインの数字で見ると、連邦準備制度理事会(FRB)にかかっていた7月利下げ検討を求める圧力を軽減した。FRBは少なくとも秋まで政策金利を据え置く公算が大きい。
非農業部門雇用者数は前月比14万7000人増。市場では10万6000人増への伸び鈍化が見込まれていた。失業率は予想に反して4.1%に低下した。
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しかし、こうした堅調な数字は、民間部門雇用者数の伸びの弱さや、労働市場の悪化を示唆する他の兆候を覆い隠している。
税務コンサルティング会社RSM・USのチーフエコノミスト、ジョセフ・ブルスエラス氏は「見た目の数字は、データの細部よりずっと良いようだ」と指摘した。
同氏はその上で、「経済は減速しているが依然堅調で、現時点で金融緩和を正当化する状況にはないとFRBは分析しており、今回の統計はそれを裏付ける内容であろう」と述べた。
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は、今回の統計は金融緩和に関してパウエルFRB議長に様子見姿勢を取る余地を与える内容だとし、「FRB当局者は夏の間、動かないだろう」と述べた。
アトランタ連銀のボスティック総裁は3日、雇用統計の発表後にドイツのフランクフルトで講演。「これほど不確実性が広がっている現在は、金融政策に大きな変更を加える時期ではない」と指摘。「マクロ経済が依然として底堅く、辛抱強く待てる余地がある状況においてはなおさらだ」と述べた。
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しかし、市場関係者の間からは、今回の雇用統計に基調的な弱さの兆候があるとの声が聞かれる。
ネーションワイド・ミューチュアル・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は、連邦公開市場委員会(FOMC)は9月まで動かないと予想した上で、同月の会合では0.5ポイントの引き下げを検討しなければいけないかもしれないと指摘。
「今回の弱い雇用統計は、減速する景気を押し上げるためFOMCが年末までに75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを行うという当社の見方を裏付ける。これは、関税に伴う一時的な物価上昇が見込まれる中にあっても変わらない」とリポートに記した。
6月雇用統計で、民間部門雇用者数は少なくとも昨年10月以来の低い伸びにとどまった。労働参加率も低下した。
これにはトランプ政権が強硬な移民政策を進めている影響が反映されている可能性がある。外国生まれの労働者の数は3カ月ベースで見ると、コロナ禍初期を除けば、2007年のデータ集計開始後で最大の減少となった。
6月は州・地方政府での雇用増加が全体の伸びをけん引する格好だった。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米国担当エコノミスト、スティーブン・ジュノー氏は、労働市場は1年前と比べると勢いを欠くが、安定していると指摘。その上で、「結局のところ鍵を握るのはインフレ動向だ」と指摘した。
今月15日以降には6月分の物価指標が発表される。
ウィズダムツリーの債券戦略責任者ケビン・フラナガン氏は「関税に起因するインフレが生じるとすれば、9月のFOMC前に表れるだろう。その時点で労働市場が持ちこたえていれば、FRBは利下げに関して困難な状況に直面する可能性がある」と述べた。
原題:Jobs Report Takes Pressure Off Fed Despite Signs of Weakness(抜粋)