「熊が山にいるのは当り前、いちいち通報するな」の声←獣害のプロの見解は?「通報が無益な殺生を避ける」|まいどなニュース

「熊が山にいるのは当り前。通報するくらいなら入山するな」というネット民の声が話題に

今年もすでに秋田県や福島県を中心に各地で「クマ」の目撃情報が寄せられている。

そんな中、「山に熊がいるのは当たり前。いちいち自治体や警察に連絡しないで!通報するなら山に入るな」という投稿がX(旧Twitter)で話題になった。

多くの反響の中には、「実際どのレベルから連絡すべきなんだ?秋田県の山奥や集落なら、そりゃ秋田だしな…で終わるよなあ」といった声も見受けられた。

果たして、「熊がいて当たり前」の山の中であっても、自治体や警察に「目撃情報」を通報するべきなのだろうか?

迷惑じゃないです!

「通報を受けて対応する仕事をしている立場からお答えしますと、『町中でも山中でもクマを見たら通報してほしい』です。

そのクマ出没がどれだけ危険 or 安全かは他の情報や状況と照らし合わせて判断しますので、情報は多ければ多いほど、正確かつ迅速に判断できます。逆に情報がなければ、実際は危険な出没を偶発的なものと判断せざるを得なかったり、その後の行動の推察が難しく、対応に時間がかかることがあります。

危険と思わしき出没でも、複数の情報が集まらなければなかなか行動には移せませんので、次の出没情報が出るまで様子見をする必要があったりしますので、迷惑と考えず、とりあえず見たら警察や役場に連絡してほしいのが現場の感覚です」

そう投稿したのは、鳥獣害の対策や研究を行っている、しまきう(@SHIMAQ404)さん。さらに続けて、「通報」の重要性を投稿。

多くの目撃情報で「無益な殺生」の回避も

「情報を集めたり、次の出没情報を待っていると、クマは目ぼしいものを食べ尽くして次の集落に移り、許可が出た頃にはもういない。『意味がないかも』『迷惑かも』と思うような情報の集積が、捕獲の判断の貴重なソースになりますので、ぜひ目撃したり痕跡を発見した際には警察や市町に連絡を!」

「もちろん捕獲だけでなく、適切な防除にもつなげることができますので、無益な殺生を避けることにもなります」

<しまきうさんのX(旧Twitter)の投稿より>

「どんな情報でも欲しい」が現場の本音

今回の投稿についてしまきうさんに詳しく聞いたところ、「対応の優先度や緊急度」を推し量るためにも、「複数の情報が必要不可欠」なのだという。

「複数の情報があれば、クマが同じ地域を継続的にうろうろしているのか? それとも、たまたま通りがかっただけなのか?の判断が可能になります。

それ以外にも、柿の木に残された爪痕などの痕跡と照らし合わせて、毎年出没しているのか?季節的なものなのか?などを推察することができます。

いずれにせよ、その前段階となる地域からの出没情報がなければ危険があることすら認知できませんので、どんな情報でも欲しいのが現場としての意見です」(しまきうさん)

「大したことないかも」→実は危険に直結する目撃情報だったことも

ただ、目撃したタイミングが休日や夜間の場合、通報をためらう人も多い。しかし、目撃情報の通報は可能な限り早い方が望ましいそうだ。

「やはり目撃情報は早さが命ですので、もし夜間だとしても、情報はできるだけ早くいただきたいです。また、大した情報ではないと感じても、実は危険に直結するような出没であった経験は枚挙にいとまがありません。

例えば、夜間に交通事故に遭ったクマが集落内に逃げ込み翌朝事件となったのですが、後日、事故に遭ったクマを目撃していた人がいたという情報が入り、脱力しました…。また、通学中の小学生の列と数分の差で熊がニアミスしていたことが翌日の通報でわかった、などのケースがありました」(しまきうさん)

遭遇しないためにも「目撃情報」は必要不可欠


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ニュース番組などで見るセンセーショナルな印象のせいか、「通報すると熊が駆除されてしまう」と考える人も少なくない。

実際は、目撃情報が多いほど「無益な殺生を避けることにもなる」と、しまきうさん。

「目撃されたクマがその場にとどまっていることは稀です。これは基本的に<通りすがりのクマ>が目撃されやすいためで、単発の目撃情報で緊急的な対応が必要になることは滅多にありません。

目撃情報が迅速に多く集まることで、クマが集落に依存する前に防除(出没の原因となっているものを除去したり、電気柵でクマの侵入を防御するなど)ができたり、人身事故が起きる前に『クマの出没』の周知を行うことができます。

そして、すでに集落に依存してしまったり、人を怖がらない危険な性質を持った個体を排除することもできます」(しまきうさん)

「町中でも山の中でもクマを見たら通報してほしい」と、鳥獣害の専門家

捕獲は「罠」が主流

また、「捕獲」=「銃を持って山狩りをする」といったイメージも強いが、猟師でもあるしまきうさんによると、「実際の有害鳥獣捕獲は『罠』によるものが9割以上」なのだという。

「情報が少なければそもそも罠の設置許可が出ません。罠の設置場所もクマの行動が読めなければ適切な場所を選ぶことは困難です。もちろん時間が経っていれば捕獲することはできません。

年間数百件の目撃情報がある地域に住んでいますが、通報された内容や過去の情報から勘案して対応の優先度を決め、必要があれば都道府県・市町村と情報共有をしながら捕獲や防除対策に繫げています」(しまきうさん)

熊との「共生」にも目撃情報は必要不可欠

熊と人間が「共生」するためには、互いの生活圏を明確に切り分けるための「迅速な対策が必要不可欠」と、しまきうさんは言う。

「ここで言う共生とは、クマが生態系の一員として必要かつ重要な存在であるため、個体群として健全に維持していくと共に、危険な動物でもあるので、社会的に許容される性質・個体群密度に管理していくという意味です。

こういった対策の基本には、住民の方々の協力や理解、そして日頃からの情報が必須なのです。休日や夜間の通報をためらわれるお気持ちはとてもよくわかります。今回の投稿を通して、通報への心理的なハードルが下がればありがたいです」(しまきうさん)

<しまきうさんのX(旧Twitter)の投稿より>

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