飲酒は量に関係なく認知症のリスク高める可能性 新研究

飲酒はどんな量であっても高齢期の認知症のリスクを高める可能性があるとの研究結果が発表された/skynesher/E+/Getty Images

(CNN) 新たな研究によれば、飲酒はどんな量であっても、高齢期の認知症のリスクを高める可能性があることが示された。

一部の研究では、週7杯未満といった軽い飲酒は、全く飲酒しないよりも神経保護の効果が高い可能性が示されている。だが、これらの研究は、高齢者を対象としているほか、かつて飲酒経験のあった人と生涯にわたり飲酒経験のない人を区別していないため、結果がゆがめられている可能性があると研究者らは指摘する。

医学誌「BMJ EBM」に23日に掲載された新たな研究では、アルコールに関連する特定の遺伝子が飲酒が脳に及ぼす影響にどのように関与するかを分析した。

「遺伝子分析の結果、少量のアルコールでも認知症のリスクが高まる可能性があることが示された」と、英オックスフォード大学精神医学部の上級臨床研究員で、今回の研究の筆頭著者であるアーニャ・トピワラ氏は述べた。「これはこのテーマに関する最大規模の研究であり、観察と遺伝子分析の組み合わせが鍵となった」

トピワラ氏によれば、研究で用いられた「メンデルランダム化」と呼ばれる手法は、飲酒と認知症との関連を説明する際に交絡因子や「偽の」変数が入り込む可能性を減らせる。また、認知症の進行が飲酒行動に影響するといった逆の因果関係の可能性を減らすだけでなく、一生を通じたアルコール摂取の累積的な影響を推定できるという。従来の観察研究は中年期から老年期の飲酒習慣を捉える傾向があり、被験者の記憶に頼っているため正確ではない可能性がある。

「この研究は複雑で、アルコールが摂取量にかかわらず脳に害を及ぼす可能性があるというある程度の証拠を示しているものの、決定的な証拠ではない」と米フロリダ州の神経変性疾患研究所で研究を統括する神経医リチャード・アイザクソン氏は指摘した。アイザクソン氏はアルツハイマー病の遺伝的リスクを持つ人々の認知機能改善に関する研究を行っている。今回の研究には関与していない。

アイザクソン氏は「私のクリニックでは、アルツハイマー病の最も一般的な遺伝的リスク因子であるAPOE4遺伝子変異を持つ人には、入手可能な証拠に基づきアルコールを全く飲まないことが最善だと伝えている」と述べた。

アルツハイマー病の遺伝的リスクが比較的低い人の場合は、飲酒は「いつ」そして「どのように」飲むのかに大きく左右されるとアイザクソン氏は付け加えた。例えば、空腹時に就寝前に数日連続で2杯飲むことは、週に数回、早めの夕食時に1杯飲む場合よりも脳の健康に悪影響を与えるという。

今回の研究は、英国のイングランド、スコットランド、ウェールズの参加者を対象とした「UKバイオバンク」と、欧州系とアフリカ系、ラテン系の人々を含む米国の「ミリオン・ベテラン・プログラム(MVP)」のデータ、計約56万人を分析した。

観察研究では、参加者が飲酒量を自己申告し、その後の飲酒量と長期にわたる認知症発症リスクを比較した。

「自己申告による調査では、少量の飲酒(週7杯未満)を報告した人は、大量の飲酒(週40杯超)の人よりもリスクが低かった」と、エディンバラ大学の神経変性疾患学教授のタラ・スパイアーズジョーンズ氏は述べた。

スパイアーズジョーンズ氏によると、「興味深いのは、飲まない人や一度も飲んだことがないと報告した人が、大量飲酒者と同程度の認知症リスクを示したこと」だという。スパイアーズジョーンズ氏は今回の研究には関与していない。

今回の研究では、240万人を対象とした45件の認知症研究から遺伝子データを解析し、生涯にわたる飲酒習慣に関連する遺伝的マーカーを比較した。

解析の結果、遺伝的リスクが高いほど認知症リスクも高くなり、アルコール摂取量が多いほど、認知症のリスクは直線的に増加した。

トピワラ氏は「例えば、一生を通じて週1杯飲む人と比べ、週3杯飲む人は認知症リスクが15%高くなる」と述べた。

また、アルコール依存の遺伝的リスクが2倍になると、認知症リスクが16%上昇することも示された。

「今回の研究のどちらの側面も、アルコール摂取が認知症の直接的な原因であることを決定的に証明するものではない」「しかし、飲酒量と認知症リスクの増加との関連を示す大量の類似データに追加されたものであり、基礎神経科学の研究では、アルコールが脳内のニューロンに直接的な毒性を及ぼすことが示されている」(スパイアーズジョーンズ氏)

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