オランダ総選挙、中道リベラル政党が勝利を宣言 極右与党と接戦

画像提供, Pierre Crom/Getty Images

画像説明, 民主66のロブ・イェッテン党首(38)は、現代オランダ史上最年少の首相となる可能性がある(10月30日、ハーグ)

オランダで10月29日に投票が行われた総選挙で、中道リベラル派「民主66(D66)」のロブ・イェッテン党首(38)が31日、勝利を宣言した。選挙は接戦となったが、投票分析により、反イスラムを掲げるヘルト・ウィルダース氏が率いる極右・自由党が、第1党の座を失う見込みが示された。

ほとんどの開票が終わった31日時点で、D66は1万5000票の僅差で自由党をリードしている。オランダのANP通信によると、開票作業はまだ完了していないものの、自由党が勝利する可能性はすでにないとされる。

イェッテン氏はソーシャルメディアに、「われわれはオランダ最大の政党だ! これからすべてのオランダ国民のために働いていく」と投稿した。一方のウィルダース氏は、選挙結果を決定するのメディアではなく選挙管理委員会だと述べ、「その決定を待たないとは、なんという傲慢(ごうまん)さだ」と述べた。

開票率約99%時点の予測では、定数150のオランダ議会において、両政党がそれぞれ26議席を獲得する見通しとなっている。ただしANP通信は、D66が27議席目を獲得する可能性があると報じている。

イェッテン氏は記者団に対し、「この歴史的な結果を非常に誇りに思っている」と述べ、安定的かつ野心的な政権を構築する責任の重さを感じていると語った。

ウィルダース氏は、選挙前の世論調査で首位を維持していた。しかし、イェッテン氏は「Yes, we can(我々はできる)」というキャッチフレーズを用いた前向きな選挙運動によって、ロッテルダムやハーグ、ユトレヒトといった主要都市で勝利を収めた。

オランダの総選挙で、これほど接戦となった例はない。イェッテン氏が首相に就任した場合、同国史上最年少の首相となる見通しだ。

これまでイェッテン氏は、すべての票が集計されるまで勝利宣言をしない姿勢を見せてきた。そうしたなかANP通信は、海外在住の郵便投票者の集計結果に基づき、イェッテン氏が勝者と宣言できる状況にあると報じた。

ウィルダース氏は、仮にD66が最大政党となったとしても、自身が率いる自由党は「イェッテン氏とその仲間によってオランダが分断されることを許さない」と述べた。

イェッテン氏は記者団に対し、D66が「前向きなメッセージによる選挙運動を行えば、ポピュリズム運動に打ち勝つことが可能であることを、ヨーロッパと世界に示した」と述べた。

オランダの選挙制度は、全国単一選挙区による比例代表制に基づいており、最も多くの票を得た政党が最多議席を獲得する仕組みとなっている。

これまでのところ、イェッテン氏のD66の得票率は16.9%、ウィルダース氏の自由党は16.7%となっている。開票結果が進む間も両党の差は極めて小さく、優勢が何度も入れ替わる展開となった。

ウィルダース氏は、D66の勝利を認める姿勢を見せていない。ANP通信を「ANP66」と呼び、ソーシャルメディアで拡散された根拠のない不正投票の主張を自らのアカウントでも取り上げた。これに対し、アムステルダム郊外のザーンスタット市当局は、この主張は「捏造(ねつぞう)されたもの」だとして否定している。

画像提供, Reuters

画像説明, 自由党のヘルト・ウィルダース党首(30日、ハーグ)

イェッテン氏の連立政権への道のりは容易ではないものの、同氏は迅速に始動したい意向を示している。

イェッテン氏は投票が終了した後、これまで30議席未満でオランダの選挙に勝利した政党は存在しなかったと述べた。

同氏が連立政権を樹立するには、過半数となる76議席を確保するために、少なくとも他の3政党の支持が必要となる。最も有力な候補は、中道右派リベラルの自由民主国民党(VVD)か、左派の労働党(PvdA)と緑の党の連合、そしてキリスト教民主アピール(CDA)とされているが、これが実現するには数カ月を要する可能性がある。

VVDのディラン・イェジルゲス党首は、これまでのところ左派との協力を否定している。一方イェッテン氏は、中道派から幅広い支持を得る政権を望んでいると述べた。

週明けの4日には、当局から「スカウト」が任命され、各政党の意向を探る役割を担うことになる。

イェッテン氏は、住宅不足や亡命申請者・移民問題などの主要課題に取り組むために、他の政党に投票した何百万もの有権者を最もよく代表する連立政権を構築したいと述べている。

イェッテン氏の勝利までの道のりは、関係者をおどろかせている。同市は2年前の前回選挙でもD66を率いていたが、5位に沈み、わずか9議席しか獲得できなかった。

今回も数週間前まで世論調査で低迷していたが、イェッテン氏がテレビ討論で洗練されたパフォーマンスを重ね、投票11日前にはテレビのクイズ番組の決勝にも出場するなどして、徐々に支持を伸ばした。

退任するディック・スホーフ首相は31日、イェッテン氏による連立政権の構築は困難を伴うだろうとの見通しを示し、「クリスマスまでに新政権ができていたらおどろきだ。私はまだ首相でいると思う」と語った。

元情報機関長官のスホーフ氏は昨年、極右の首相を受け入れないとする連立相手の意向を受けて、ウィルダース氏によって首相に指名された。

ウィルダース氏は、2023年11月の前回選挙で勝利を収めたが、政権が発足したのは2024年7月だった。その11カ月後には、難民申請者・移民政策をめぐって連立政党と対立し、自ら政権を崩壊させた。

関連記事: