日銀は4月利上げを見送る公算~原油相場上昇時の金融政策~(愛宕伸康)
4月27、28日の金融政策決定会合(MPM)が近づいてきました。筆者は一貫して「中東情勢の緊迫化により、サプライチェーンに及ぼす影響が懸念されるため、利上げは待つべきだ」と主張してきましたが、実際、日本銀行は4月利上げを見送る公算です。
なぜ、そう見ることができるのか。改めて、金融政策運営を巡る環境と考え方を整理します。
円建て原油相場は最高値圏で推移
2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃し、3月2日にイラン革命防衛隊がホルムズ海峡封鎖を宣言して以降、原油相場が高い水準で推移しています。
円建ての原油相場を見ると(図表1)、4月20日現在、アラビアン・ライトと北海ブレントは、ロシアのウクライナ侵攻で既往ピークを付けた2022年5月よりやや低いものの、新興国ブームの2008年6月より高い水準を維持しています。
<図表1 円建ての原油相場>
(注)各指標をドル円相場で円換算。直近は2026年4月20日の値。 (出所)Bloomberg、楽天証券経済研究所作成
4月17日には、レバノンでの停戦合意を受けて、イランのアラグチ外相がホルムズ海峡の開放を宣言しましたが、翌18日には「逆封鎖」を続ける米国に反発してイラン革命防衛隊が再封鎖を宣言するなど、依然、事態解消に向けた見通しが立たない状況が続いています。
果たして日本銀行は、高まるインフレリスクに対応するため、4月に利上げを行うべきなのでしょうか。中東情勢緊迫化による原油相場高騰が日本経済・物価に与える影響を改めて整理します。
原油相場高騰によるインフレか、交易条件悪化による景気下振れか
まず、原油相場の上昇は輸入コストを押し上げ、国内のインフレ率を高めます。それが人々の「もっとインフレが高まるかもしれない」という予想につながれば、ますますインフレに拍車がかかることになります。
こうした物価への2次的波及を防止するには利上げが有効です。今は実質金利の低さや円安もあります。ビハインドザカーブ(利上げが後手に回ること)に陥らないためにも日銀は早めに利上げを行うべきだ、という考えには一理あります。
一方、原油調達を輸入に頼るわが国では、原油相場が上昇すると交易条件が悪化します(図表2)。交易条件とは輸出物価を輸入物価で割って算出しますが、その悪化は所得が海外に移転することを意味し、実質購買力の低下を招いて景気に下押し圧力となります。
<図表2 原油相場と交易条件>
(注)シャドーは景気後退期。交易条件は輸出物価(円ベース)を輸入物価(同)で割って算出。 (出所)日本銀行、Bloomberg、内閣府、セントルイス連銀、楽天証券経済研究所作成
1970年代の2度にわたるオイルショック時や、リーマンショック前の2008年前半の日本経済は、交易条件が大幅に悪化して景気後退に陥りました(図表2の(1)(2)(3))。念のため補足すると、2008年にリーマン・ブラザーズが破綻したのは9月15日、日本は半年前の2月から景気後退入りしています。
当時の指標を振り返ると、2008年4-6月期は、実質国内総生産(GDP)が前期比年率マイナス1.9%で消費者物価指数(CPI)(生鮮食品除く)が前年比1.4%。7-9月期は、実質GDPが前期比年率マイナス4.4%でCPI(生鮮食品除く)が前年比2.4%と、マイナス成長と物価高が同時発生するスタグフレーションの様相を呈していました。
この間、原油相場の高騰から交易条件が大幅悪化となったため、GDPデフレーターは下落しています(4-6月期:前年比マイナス1.3%、7-9月期:同マイナス1.5%)。このように、CPIが上昇しているにもかかわらずGDPデフレーターが下落するという歪な姿が、当時の交易条件悪化の深刻度を示しています。
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