ハマスとイスラエル、人質遺体返還巡り対立-合意履行で早くも隔たり
- ハマスは「遺体収容に特殊装備」必要と主張-イスラエルは反発
- トランプ大統領ら、遺体返還や武装解除拒否なら戦闘再開と警告
イスラム組織ハマスが、2023年のイスラエル攻撃で拘束した人質の返還について、重機などを使わずに発見可能な遺体を全て返還したと主張する一方、イスラエルは、さらに十数体の返還を求めている。米国主導で発効した和平合意では、死亡した28人の人質全員の遺体返還が条件となっており、両者の亀裂が早くも顕在化しつつある。
匿名を希望するイスラエル高官は、ハマスが協力すればほぼ全ての遺体は比較的容易に返還可能だとしている。別のイスラエル当局者も匿名で、ハマスはほとんどの遺体の所在を把握しており、仲介者は義務履行を強く迫るべきだと語った。
死亡した人質の遺体の引き渡しは、ハマスの政権からの排除やパレスチナ自治区ガザの再建といった、停戦の次の取り組みへの前段階となる。
15日の夜、ハマス軍事部門は、保管していたという28体の遺体のうち9体を返還したと発表し、残りの遺体の発見には「多大な努力と特殊装備」が必要だと述べた。イスラエルの爆撃により、ガザの広範囲が瓦礫と化している。
イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマス側の発言は受け入れられないと述べた。首相官邸は声明で「政府、イスラエルの国家安全保障システムの全部門は、亡くなった人質全員を祖国に連れ帰り、適切な埋葬を行うことを決意し、全力を尽くして取り組んでいる」と述べた。
イスラエルのカッツ国防相と米国のトランプ大統領は、遺体が返還されず、ハマスが合意で規定されている武装解除を拒否した場合、戦争が再開される可能性があると警告している。
ただ、複数のイスラエル高官によると、現時点では戦闘再開の可能性は低いという。サール外相は声明で「ハマスは遺体の返還に関する合意に違反したが、我々はトランプ大統領の計画を放棄するつもりはない」と述べた。
原題:Hamas Says It Can’t Find Dead Hostages as Israel Pushes Back(抜粋)
— 取材協力 Fadwa Hodali, Magdalena Del Valle, Selcan Hacaoglu, Firat Kayakiran, Raeedah Wahid and Tom Fevrier