イラン戦争が飛び火!! マンデブ海峡が「第3次世界大戦」の火種になる!? フーシ派が要衝を占拠し、欧州軍まで出動!!

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マンデブ海峡の約75㎞北に位置する港湾都市モカ。親イラン武装組織フーシ派が制圧を主張した際の映像の一場面(9月9日公開。撮影日時不明)

イラン戦争が、新たな局面を迎えている。ホルムズ海峡に続き、紅海にあるマンデブ海峡にまで戦火が拡大したのだ。親イラン武装組織フーシ派が要衝を占拠し、サウジへの攻撃を激化させる中、米軍だけでなく欧州諸国まで動き始めた。各国の思惑が交錯するこの戦争は、"第3次世界大戦"の火種となるのか?

【写真】マンデブ海峡の危機に集結する欧州の空母

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【アジアと欧州を結ぶ重要な海峡が危ない!】

今年2月、アメリカとイスラエルの攻撃をきっかけに始まったイラン戦争。イランが対抗措置として世界有数の原油輸送路であるホルムズ海峡を事実上封鎖し、世界の原油輸送は混乱に陥った。

サウジアラビアは、ホルムズ海峡を避け、紅海側から日本などアジアへ原油を輸出してきた。ところが開戦から7ヵ月以上がたった今、その輸送ルートにある別の海峡にまで戦火が飛び火しているという。何が起きているのか?

「イランの支援を受ける武装組織『フーシ派』が、ホルムズ海峡の南西に位置するバブ・エル・マンデブ海峡の要衝であるペリム島を占拠したのです」

そう語るのは、地政学・戦略学が専門の多摩大学大学院客員教授、奥山真司(まさし)氏だ。

紅海に位置するマンデブ海峡。スエズ運河を経由してアジアとヨーロッパを結ぶ重要な航路で、今年4~6月には1日平均約810万バレルの原油や石油製品が通過した。その海峡の要衝に位置するペリム島を巡って攻防が続いている

マンデブ海峡は、イエメンとアフリカ大陸の間にある、紅海とアデン湾を結ぶ海峡だ。サウジは以前から国内を横断するパイプラインで原油を紅海側に運び、マンデブ海峡を経由して日本などアジアへ輸出してきた。ちなみに、日本の原油輸入の約28%がこの海峡を通過している。

ホルムズ海峡封鎖以降、この海峡の重要性はさらに高まっていたが、その安全も脅かされている。奥山氏が続ける。

「フーシ派は9月、ペリム島だけでなく、マンデブ海峡近くの港湾都市モカも占拠しました。その後、サウジ空軍の支援を受けたイエメン政府側が反撃し、モカの奪還を発表。10月9日にはペリム島も奪還したとの報告が出ています。

ただし、フーシ派は紅海沿岸に依然として拠点を持っており、ミサイルや無人機によって船舶を攻撃する能力を残しています。マンデブ海峡の安全が回復したわけではありません」

イエメンでは長年、北西部を拠点とするフーシ派と政府側の間で内戦が続いている。隣国のサウジアラビアは政府側を、イランはフーシ派をそれぞれ支援してきた。

サウジアラビアの支援を受けるイエメン暫定政府軍の兵士たち。同軍は長年内戦が続くイエメンで、親イラン武装組織フーシ派と対立している

2022年の停戦を機に大規模な戦闘は落ち着いていたが、今回のイラン戦争を背景に、サウジとフーシ派の衝突が再び激化しているのだ。

マンデブ海峡は、紅海とスエズ運河を経由してアジアとヨーロッパを結ぶ重要な航路でもある。ここを通れなくなれば、船舶はアフリカ大陸の南端を大きく迂回しなければならず、物流の混乱は世界経済にも影響を及ぼす。

こうした事態を受け、9月にサウジのムハンマド皇太子はトランプ大統領に軍事支援を要請したものの、トランプ氏はこれを拒否。

しかし、その後もフーシ派は、サウジ国内の空軍基地や空港への攻撃を重ねてきた。10月10日には首都リヤドの国際空港を攻撃し、米国人を含む多数の死傷者を出した。さすがのトランプ氏も、軍事攻撃を検討する姿勢を示したが、結局踏み切っていない。

そもそも今回のイラン戦争を始めたのは、トランプ氏率いるアメリカとイスラエルだ。なぜ米軍はフーシ派の攻勢を食い止めようとしないのか。

10月4日、サウジの首都リヤドにある石油施設から立ち上る黒煙。同日、フーシ派は石油施設を攻撃したと発表した

米海軍系シンクタンクで戦略アドバイザーを務め、米海兵隊に詳しい北村淳氏は、そもそも米軍にはその余力がないと指摘する。

「フーシ派がスエズ運河への航行を左右しかねない戦略拠点を占拠したわけですから、本来、アメリカは直ちにフーシ派を排除しなければなりませんでした。しかし、米軍はイラン戦争によってミサイルも軍艦も枯渇しており、軍事作戦が実施できなかった。

イランと対峙(たいじ)している現状では、米海兵隊がペリム島に接近するための強襲揚陸艦や輸送揚陸艦を展開させる余裕がないのが実情なのです」

一方、サウジの支援を受けるイエメン政府軍も、フーシ派との戦闘に苦戦してきた。

ペリム島を奪還したという報告も、事実なのかははっきりしていない。なぜ、この小さな島を巡る戦いがこれほど難しいのか。

元米陸軍情報将校の飯柴智亮(ともあき)氏は、イエメン政府軍の海上作戦能力の弱さを指摘する。

「イエメン軍は陸軍にはある程度の兵力がありますが、海軍は小規模な沿岸警備程度の戦力しかありません。また、空軍も60年以上前に実用化されたミグ21などがいまだに現役の、いわば"空軍博物館"です。

そもそもイエメン内戦はずっと陸戦でしたから、海戦の経験が浅いのだと思います」

【ヨーロッパ諸国が軍を派遣!】

ペリム島は一進一退の状況が続いている。イエメン政府軍は決定打を欠き、米軍も新たな軍事介入に踏み切らない。決着の見えない戦いが続く中、軍事的な関与を強めているのがヨーロッパ諸国だ。

フランスはサウジ西部のヤンブー港にある石油ターミナルを守るため、兵士の派遣やレーダー、防空システムの配備を表明。イギリスもサウジの防空作戦を支援するため、空中給油機の派遣を決めた。

さらにイタリア海軍もマンデブ海峡で商船の護衛に当たっている。9月18日には、サウジの空軍基地に駐機していたイタリア軍の戦闘機が、フーシ派によるとみられる攻撃で損傷する事態も起きた。

紅海を航行する仏軍フリゲート艦・フォルバン、伊軍空母・カヴール、米軍空母など。マンデブ海峡の危機を受け、欧州も軍事的な関与を強めている

前出の北村氏は危機感を強める欧州諸国のこうした動きについて、アメリカ側にも思惑があるとみる。

「アメリカのもくろみは、ヨーロッパをこの中東の戦争に引きずり出すことでしょう。すでにイラン戦争に大量の艦艇や兵員を投入している米軍には、マンデブ海峡の安全確保まで単独で担う余裕がありません。

一方、ヨーロッパにとってマンデブ海峡はアジアとつながる重要な航路です。ここが使えなくなれば、欧州経済にも大きな影響が出ます。

アメリカとしては、ヨーロッパもこの危機を放置できないことを利用して、欧州諸国に軍事的な役割を担わせ、米軍の負担を減らしたいという狙いがあるのでしょう」

このまま各国が実際の戦闘に加われば、"第3次世界大戦"に発展する恐れもあるのだろうか?

国際政治アナリストの菅原出(いずる)氏は、欧州諸国が本格参戦する可能性は低いとみる。

「ヨーロッパ諸国にはイランともフーシ派とも本格的に戦う気はないと思います。マンデブ海峡では、欧州の海軍が商船の船団を護衛しながら通過させることは考えられますが、フーシ派との戦闘に本格的に加われば、今度は欧州諸国自身がフーシ派の攻撃対象になってしまう。

そうなれば、商船を守るどころか、船団護衛はかえって難しくなります。だからヨーロッパは直接戦闘に加わるのではなく、あくまでも一歩引いた立場でサウジを支援するというスタンスなのです」

実際、フランスも今回の軍事支援は防衛目的に限ると説明している。また、イタリア政府とフーシ派側も、それぞれ「戦争状態にない」と表明している。

一方、フーシ派の攻撃を受けるサウジアラビアも軍事的な対応をどこまで強めるか、難しい判断を迫られている。

サウジは石油への依存を減らすため、外国企業の投資や観光客の誘致に力を入れてきた。フーシ派からの攻撃が続けば、経済にも大きな打撃となる。かといって、フーシ派への軍事攻撃を強めれば、さらなる報復を招く恐れもある。

フーシ派を武力で押さえ込むのか、それとも交渉によって衝突を収めるのか。サウジもまた、簡単には答えを出せない状況にあるのだ。

【不安定なまま続いていく戦争】

紅海側では各国が戦争の拡大を避けようとする一方、イラン戦争には終わりが見えない。開戦から7ヵ月以上。アメリカもイランも消耗しているという。

アメリカは海上封鎖や経済制裁によって、イランの原油輸出を抑え込もうとしてきた。その圧力を受け、イラン国内の状況は厳しさを増している。10月初旬には通貨リヤルが過去最安値を更新した。

菅原氏によれば、国民生活が圧迫される中、イラン政権内部でも戦争の継続を巡って意見が割れているという。

「イラン国内では通貨リヤルが急落し、教師や看護師が給料だけでは生活できないとして退職を表明しています。退職した公務員による年金の不払いへの抗議も起きています。

こうした状況で、大統領や国会議長は早くアメリカと交渉して制裁解除や海上封鎖の解除を実現したいと考えています。しかし、革命防衛隊は強硬姿勢を崩していません」

また、軍事的に優勢なアメリカも、簡単には戦争を終わらせられない。

米軍はイランへの海上封鎖や軍事的圧力を維持するため、大量の艦艇や兵員を中東に投入してきた。しかし、現在の軍事的な優位を維持し続けることも容易ではないという。

「アメリカは空母2隻、駆逐艦13隻、約5万人の兵力を中東に張りつけ、アジアでの軍事的な展開を犠牲にして、ようやくイランへの海上封鎖を機能させています。

米軍は今年の夏頃、イラン沿岸部のレーダーを破壊しました。しかし、イラン側は数ヵ月もすればレーダーを修復してきます。そうなれば、アメリカは再び破壊する作戦を実施しなければなりません。

それを延々と続けない限り、今の優位を維持できません。イランが経済的に耐えられるのか、このコストのかかる作戦をいつまでアメリカが続けられるのか。我慢比べです」

昨年11月、ホワイトハウスで会談したトランプ大統領とサウジのムハンマド皇太子。今回、サウジ側は米軍に軍事攻撃を要請したが、本格的な介入に踏み切っていない

しかも、イランには軍事力以外にもアメリカを揺さぶる手段がある。原油価格だ。

ホルムズ海峡を通る原油の輸送量は回復しているものの、原油価格は1バレル100ドルを超えている。戦争が長引き、原油輸送への不安が続く限り、世界のエネルギー価格は再び上昇しかねない。

菅原氏は、原油価格こそトランプ大統領の弱点だと指摘する。

「トランプはアメリカ国内の燃料価格を下げるため、ロシアへの制裁を一時的に緩めてまで、軽油の供給を増やそうとしています。それほど燃料価格を気にしているのです。

イラン側はその弱点を突こうとしています。ホルムズ海峡でタンカーへの攻撃を続ければ、原油輸送への不安が高まり、原油価格を押し上げることができますから。

さらに、11月3日にはアメリカの中間選挙がある。イランは、トランプが選挙前に軍事攻撃へ踏み切りにくいことを見越して、原油価格を上げるために攻撃を仕掛けてくる可能性があります」

イラン側は原油価格の上昇によってトランプ政権を揺さぶり、有利な条件で交渉に持ち込もうとしているという。

では、戦争を終わらせる道はないのか。菅原氏は、イランの核開発問題が鍵を握ると指摘する。

「この戦争が終わるには、トランプが戦争の継続を諦めるか、イラン革命防衛隊が核問題で譲歩するか。そのどちらかだと思います。

アメリカが問題視しているのは、イランの濃縮度60%のウランです。イランが高濃縮ウランの扱いで譲歩し、経済制裁の解除などで折り合いがつけば、終戦につながる可能性があります。ただ、イラン側の明確な回答はまだありません」

しかも、アメリカとイランが交渉を続ける一方で、イスラエルが再び軍事行動に踏み切る可能性もある。菅原氏が続ける。

「忘れてはならないのはイスラエルの動きです。イランの核開発が重大な脅威になると判断すれば、アメリカが参加するかどうかにかかわらず、イスラエルが再び核施設を攻撃する可能性があります」

こうして戦争が長引けば、周辺国が新たな衝突に巻き込まれる危険も続く。

今は本格参戦を避けようとしている欧州諸国も、自国の部隊が攻撃を受けたとき、どこまで反撃を控えられるのか。

ホルムズ海峡からマンデブ海峡へと広がった戦火。終戦への道筋が見えない中、さらに多くの国を巻き込む火種は、いまだ消えていない。

取材・文/小峯隆生 写真/共同通信社 時事通信社

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