ホワイトハウス、疾病対策トップを解任 直後には「職務続けられない」と保健幹部ら辞任
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アメリカのホワイトハウスは27日、疾病対策センター(CDC)のスーザン・モナレズ所長を解任したと発表した。モナレズ氏は辞任を拒んでいた。
ホワイトハウスは声明で、モナレズ氏は「大統領のアジェンダ(政策課題)に沿わない」ため、CDC所長の職を解かれたと説明した。
保健福祉省は先に、モナレズ氏が退任すると発表した。これを受け、モナレズ氏の弁護団は、同氏は解任通告は受けておらず、辞任するつもりもないとの声明を出していた。
弁護団は、モナレズ氏が「非科学的で無謀な指示を形式的に承認したり、献身的な保健の専門家たちを解雇したりすること」を拒否したために標的にされたと主張。ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官が「公衆衛生を武器として利用している」と非難した。
ホワイトハウスはその後、モナレズ氏の解任に関する声明の中で、「(モナレズ氏の)弁護団の声明が示す通り、スーザン・モナレズは大統領のアジェンダに沿わないことは明らかだ」と主張した。
モナレズ氏は科学者として、連邦政府で長年勤務してきた。ドナルド・トランプ大統領からCDC所長に指名され、7月に上院が所長就任を承認したばかりだった。
トランプ氏は当初、デビッド・ウェルドン元下院議員をCDC所長に指名していた。しかし、ワクチンと自閉症に関連があるとするウェルドン氏の主張に批判の声が上がり、指名は撤回され、代わりにモナレズ氏が選ばれた。
モナレズ氏がCDC所長の職を離れると保健福祉省が発表してから間もなく、少なくとも3人のCDC上級幹部が辞任した。
その中には、最高医療責任者のデブラ・ハウリー氏も含まれる。BBCがアメリカで提携するCBSニュースが入手した書簡の中で、ハウリー氏は、ワクチンに関する「誤情報の増加」を警告したほか、CDC予算の削減計画に反対する立場を表明していた。
CDCの国立新興感染症・人獣共通感染症センターを率いるダニエル・ジャーニガン氏も、「CDC内の現状」を理由に辞任した。
CDCの国立予防接種・呼吸器疾患センターの責任者デメトレ・ダスカラキス氏も、「公衆衛生の武器化が進行中であるため」職務を継続できないとして辞任した。
また、公衆衛生データ・監視・技術局の責任者ジェニファー・レイデン氏も辞任したと、米NBCニュースなどが報じている。
今回の人材流出は、ワクチンに懐疑的なケネディ氏の指揮下にあるCDCの予防接種をめぐる方針に、複数の保健専門家が懸念を表明する中で起きた。
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27日には、食品医薬品局(FDA)が、新型コロナウイルスの新たなワクチンを承認したが、接種対象者を限定する方針も示された。
新たなワクチンはすべての高齢者に提供されるが、基礎疾患のない若年層や子どもは対象外となる。
「バイデン前政権下で一般市民を対象とした広範な義務化の根拠とされた、新型コロナワクチンの緊急使用許可は、今や廃止された」と、ケネディ氏はソーシャルメディアに投稿した。
モナレズ氏は、過去50年間で初めて、医学博士を持たないCDC所長となった。同氏は感染症研究を専門としている。
モナレズ氏がCDC所長を務めたこの1カ月の間には、南部ジョージア州アトランタのCDC施設が銃撃される事件が起き、モナレズ氏は職員を励ます役割を担った。銃撃犯は、新型コロナワクチンが自らの健康を害したと考えていた。
この事件では数百発の銃弾が施設に命中し、警官1人が死亡した。
今月初めには、CDCの現職員と元職員が公開書簡で、ケネディ氏の反ワクチン的な言動が医療従事者への暴力行為を助長していると非難した。
1週間前には、CDCの労働組合が、職員約600人が解雇されたと発表した。
この大規模な人員削減には、鳥インフルエンザなどの感染症対策に従事していた職員や、環境リスクの研究や公的記録の管理に携わっていた職員も含まれる。