トランプ氏、「ディエゴ・ガルシアを渡すな」とイギリスに チャゴス諸島の主権移譲を再批判
画像提供, Getty
この記事は約 7 分で読めます
イギリスがインド洋のチャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲する合意について、アメリカのドナルド・トランプ大統領は18日、ソーシャルメディアに、「ディエゴ・ガルシアを渡すな」と書き込み、批判的な姿勢を示した。
イギリスは昨年5月、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲することで合意した。この合意では、チャゴス諸島最大のディエゴ・ガルシア島にある英米共同軍事基地の管理権を、イギリスが維持し、年間1億100万ポンド(約190億円)で99年間、リースバックすることになっている。
アメリカ政府は今月17日、この計画を正式に支持すると表明したばかりだった。
しかしトランプ氏は、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「この土地はイギリスから奪われるべきではない」と述べ、仮にそうなれば「われわれの偉大な同盟国にとって汚点となる」と主張した。
そして、「わたしはイギリスのキア・スターマー首相に対し、国家に関するリース契約は良いものではなく、100年のリースを締結するのは大きな誤りだと伝えてきた」と書いた。
トランプ氏はまた、ディエゴ・ガルシア島が「インド洋に戦略的に位置している」と強調。さらに、次のように主張した。
「スターマー首相は、これまで知られていなかった存在からの主張によって、この重要な島の支配を失いつつある」
「われわれは常に、イギリスのために戦う用意と意思と能力を持っているが、イギリスはウォーク主義やその他の問題に直面しても強くあり続けなければならない」
ウォーク(woke)とは、差別や格差といった社会問題を意識する傾向を指す言葉。
さらに、アメリカとイランの間の協議にも触れ、「イランが合意を結ばないことを選択した場合、アメリカがディエゴ・ガルシアを使う必要が出てくるかもしれない。(中略)とても不安定で危険な政権による潜在的な攻撃を排除するためにだ」とも述べた。
スターマー英首相はこれまで、チャゴス諸島に対するイギリスの主権の合法性をモーリシャスが争おうとしてきた経緯がある中で、この合意が基地の継続的な運用を守るために不可欠だと強調してきた。
今回のトランプ氏の投稿に対し、英外務省は声明で、チャゴス諸島に関する合意は「イギリスと主要な同盟国の安全保障、そしてイギリス国民の安全を守る上で極めて重要だ」と述べた。
また、「われわれが合意した内容は、この重要な軍事基地の長期的な将来を保証する唯一の方法だ」とした。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、BBCに対し、「この投稿はトランプ政権の方針として受け取るべきだ。大統領本人の発言そのものだ」と述べた。
「トゥルース・ソーシャルで見れば、それがトランプ大統領から直接発信されていることが分かる。これは、大統領の透明性と、この政権の方針を伝えるという点で素晴らしいことだ」
一方、米国務省は17日、チャゴス諸島の引き渡し計画への公式な支持を示していた。
同省の声明には、「チャゴス諸島に関するモーリシャスとの合意を進めるというイギリスの決定を支持する」と記されている。
トランプ氏のこの問題に対する立場は、この数カ月で急速に転換している。今年1月にはこの計画を「大いなる愚行」と表現していたが、その後には「首相が成し得る最良の」合意だと述べていた。
アメリカとモーリシャスは来週、この件について協議する予定になっている。
インド洋のチャゴス諸島は、イギリスの南東約9300キロ、モーリシャスの北東約2000キロに位置し、1814年からイギリスの支配下にある。
元々は英領だったモーリシャスの一部だったが、イギリスは1965年にチャゴス諸島をモーリシャスから分離し、イギリス領インド洋地域(BIOT)の一部とした。
この時、イギリスが同諸島を300万ポンド(現在の価値で数十億円相当)で購入したとされているが、モーリシャス政府は、独立を得るために同諸島の譲渡を強制されたと主張してきた。
イギリスは1960年代後半に、アメリカにディエゴ・ガルシア島での軍事基地建設を提案し、数千人の住民を島から強制的に移住させた。以降、住民の帰還は認められていない。
チャゴス諸島の出身者の一部はモーリシャスやセーシェルに移住したが、一部はイギリスに移住し、主にウェストサセックス州クロウリーなどに住んでいる。
今週初めには、引き渡し合意に反対するチャゴス諸島出身者4人が、抗議の一環としてチャゴス諸島の環礁に上陸した。
4人は、イギリスの海上警備隊から立ち退きを警告されたが、これを拒否した。
英野党の反応は
英最大野党・保守党のプリティ・パテル影の外相は、トランプ氏の最新の発言は、スターマー氏にとって「完全な屈辱だ」と述べた。
また、「スターマーがようやく現実を直視し、方針転換して、この忌まわしい合意を全面的に撤回すべき時だ」と指摘した。
野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首は、トランプ氏が立場を変えたことは、イギリスが欧州との関係強化を追求する必要性を示していると述べた。
デイヴィー氏はXに、「チャゴス諸島をめぐるトランプ氏の終わりなき二転三転は、スターマー氏の方針が失敗する運命にある理由を示している」と投稿。
「トランプ氏がホワイトハウスにいる限り、イギリスはアメリカに頼ることはできない。信頼できる同盟国との結びつきを強化すべき時であり、その出発点はヨーロッパの隣国だ」とした。
移譲計画に強く反対してきた野党リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は、スターマー政権の方針を批判したトランプ氏を称賛した。
ファラージ氏はXに、「キア・スターマーはチャゴス諸島を手放すことで、イギリスにとって最も重要な同盟国を遠ざける危険を冒している。これはイギリス史上最悪の合意だ」と記した。
「首相が大きな誤りを犯しているというトランプ大統領の主張は正しい。スターマーはこの合意を撤回しなければならない」